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第11話 全ては自分のために

「早く人数を集めるんだ! 敵襲だ!」


 門番の一人が叫ぶともう一人は他の人たちを呼びに行ったのだろう。

 だが、助けを呼びに行っていると、その間にこいつがやられてしまう可能性があるというのに、それを考えないのだろうか。

 もしかして、この世界には口頭以外での連絡手段は無いのか?


「サツラさん!」

「あぁ、こいつら死ぬな」

「って、見ているだけですか!?」

「だって俺は依頼を受けていないからな」


 俺はこの状況だと言うのに危機感がないため、欠伸をして地面に寝転がった。

 そして空を見上げながら敵の数が少ないななどと考えていると、俺の目の前に頬をふくらませたハルロートの顔が出てきた。どうやら俺の態度に怒っているらしい。


「じゃ、じゃあ、依頼すればいいんですね」

「まぁ、そういう事だ」

「じゃあ、あの魔物たちを倒してください!」


 そう来たか。確かに、仲間の頼みといえども、これは立派な依頼と言えるだろう。

 だけど――


「ダメだ」

「どうしてですか!」

「第一、お前は対価を払うことが出来るのか?」

「ぎくっ」

「それに、お前のその頼みは誰のためだ。偽善はいいが、自分のために動いた方がためになるぞ」


 まぁ、どうしてここまでして頑なに俺が戦いに出ないのかと言われたら、単純に面倒だからなんだが、それ意外にももっと重要なことがある。

 それは人の気持ちだ。

 人はみんな自己満足で動いていると言っても過言ではない。その自己満足を完全に満たすことの出来る選択肢。それが例えどんな結末になろうとも、その選択肢こそが最良の選択肢だと俺は思っている。

 俺は選択して殺し屋になった。それによって、全世界から命を狙われる身となってしまったものの、これは俺にとって最良の選択肢だったと信じている。

 だから俺は依頼を受ける時は依頼主の気持ちを最優先している。


 人のため? そんなものはクソ喰らえだ。

 いつも最良の選択肢は自分のためにある。


「で、どうなんだ?」

「…………」

「人のためと言うならば、それはやめろ。まぁ、どうしてもと言うならば、その依頼は受けてやらないこともないけど、それは本当にお前の頼みなのか?」


 ハルロートは俺の言葉を聞いて俯いてしまった。

 どうやら俺の言葉を聞いて悲しそうな表情をしている。

 まぁ、俺の言葉に幻滅したならそれでいい。人の善なんて所詮はその程度でしかないんだから。


「……私は」

「お前は人族に酷いことをされたんだろ。こいつらには何もされていないとはいえ、人族のしたことは人族の責任だ。助ける意味は無い」

「それは違う!」


 すると、さっきまで俯いてしまっていたハルロートは声をはりあげて俺の言葉を否定した。

 その勢いに驚いて俺は身体を震わせる。


「違います。それじゃただの復讐じゃないですか……私は人間と仲良くしたいんです。人と、一緒に冒険がしたいんです!」

「……そうか」

「だから、私は人を助けたいです。貴方が例えそれを偽善と呼ぶならば、それでいいです! 私は私のために、人を助けます! 貴方が動かないなら、私一人でやって見せます」


 ハルロートは魔物の大群に向き直って、門のすぐ側においてあった槍を手にした。

 それを見た門番の男性は驚いたような表情をしてハルロートの腕を掴んだ。


「お、おい君」

「私も戦います。お願いします!」

「……仕方がない。よろしく頼む」

「はい!」


 ハルロートも一緒に戦うことになったらしい。

 昨日見た感じではそんなに戦闘経験があるように思えない。

 ギルドの依頼に換算したら、恐らくはCランク相当の難易度となっているだろう。それをいきなり、戦闘初心者が戦ったらどうなるかは目に見えている。


 ……時々、善人とは何かと考える。

 無償で誰か役に立つことをする人か? 頼まれていないのに、自己満足で人のことを助ける人か? それとも、対価は求めるけど人のことを助けることのできる人か?

 俺にとっては一番最後の人が一番の善だと思う。なにせ、対価で繋がった関係こそ、一番裏切りようの無い信頼となるからだ。


 だけど、あいつは違う。あいつは、本当に善意で魔物の前に立っている。

 怖くて仕方がなく、足が震えているというのに、それでも立っている。


「ふっ、馬鹿者が……」


 いつもの俺だったらそう言って笑って終わっていたことだろう。

 だけど、あいつの姿を見ていると、俺の気持ちも何だかフワフワしてくる。


「はぁ……」


 思わずため息を漏らしてしまう。


「さぁ、やるぞ!」

「はい!」


 ついに魔物たちがこっちに攻撃するために走ってきた。

 未だに増援は来ておらず。このままではこの二人のみで戦うことになってしまう。

 だが、そんなのは許さない。二人じゃなくて、一人だ。


「まぁ、まて」

「え、サツラさん?」

「お前の依頼、出世払いな」


 ハルロートは俺の言葉の意味が理解出来ていないのか、ぽかんとした表情で肩に手を置いた俺の事を見てきている。

 そんなハルロートを放置して俺は前に出る。


「お、おい君待て!」

「……俺、依頼を受けたらターゲットを殺すために戦うんですよ。どうしますか?」

「……君の実力は?」

「分かりません。基準が分かりませんから。ですが、悪いようにはしませんよ」

「……」


 俺の言葉に考え込んでいる様子の門番。

 確かに俺の言葉はふわっとしていて、その俺に依頼をしてもいいのか、それは俺にとってもグレーゾーンだと言うのは分かる。

 だから、これはこの門番次第だということだ。


「俺はカイ・ハルフ。頼む、俺と共に戦ってくれないか?」

「それはあの敵を討伐してくれということか?」

「そうだ!」

「そうか、依頼は一回百レンだ」

「あぁ、勝利の暁には絶対に払わせてもらう」

「……そうか、俺はニノマエ・サツラ。契約成立だな。依頼、承った」


 ただ、一つ違うところがある。こいつは俺たちと一緒に戦ってくれと言ったが、その依頼を受けたつもりは無い。

 あくまでも俺はその後の、魔物を討伐してくれという依頼しか受けた覚えはない。

 俺は今まで一人で戦ってきた。だからチームワークなんてそんなものは知らない。俺は俺で好きにやらせてもらうだけだ。


「さーて、あの王へのイライラ、お前らで晴らさせてもらうぞ」

 最初は渋っていた殺羅ですが、ルーシーの行動に心を動かされたようです。

 次回、殺羅無双開始?

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