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第9話 似たもの同士

 閉じ込められてから数時間が経っただろう。流石に暇になってきた。

 日本にいた頃は毎日、暇じゃない刺激的な日々だったため、今の俺は刺激に飢えているのだろう。

 こんな所に閉じ込められていても退屈だ。どうにかして抜け出すことが出来ないか……。


「おい、元気してるか?」

「あ?」


 俯いていた顔を上げる。

 するとそこには牢の外からこちらを覗いてきている大輝が居た。その事に頭の中が混乱してくる。

 どうしてこんな所に大輝がいるんだ? 普通はこういう所って部外者立ち入り禁止だろう。


「驚いているな。まあ、簡単な事だ。そこら辺を歩いているメイドたちとちょっとお話をしたらこの場所を教えてくれたんだ」

「……ナンパか」

「違うよ。お話だ」


 こいつは生粋のオタクである。オタク話を始めたら数時間は余裕で話し続けることが出来るやつだ。

 それと同時に、外面がいいので、女子に結構もてていたりもする。それを活かしてナンパ紛いのことをよくやっているのだ。

 まぁ、今回はそのおかげで俺の居場所を聞き出せたようだが。


「で、何の用だ?」

「これ、なーんだ」

「はぁ?」


 そう言って大輝が制服らしき服の内ポケットから取り出したのは鍵らしきもの。

 それを見て思わず俺は顔を顰めてしまった。どうしてこいつがそんな重要なものを手にしているのかと。


「実はメイドさんとお話に夢中になっている間にこっそりとね」

「お前、ホント手癖悪いよな」

「それは俺にとっては褒め言葉でーす」


 言いながら俺の閉じ込められている牢の鍵を開ける大輝。そんなこいつの行動に俺は疑問しか無かった。

 昔からこいつは俺でも理解できない行動をするのだ。そのせいで、今も尚、こいつのことを知り尽くしているとは言えないだろう。


「そして、これをこの中に置いておけばいい。自立式AIサツ人形!」

「おい、その物はなんだ」

「これか? これは春北(はるきた)さんに頼んで作ってもらったんだ。彼女の特典は機械作成だからね、作ってもらった。ダミーに使えるかなって」

「それ、どんな口実で作ってもらったんだよ」

「サツが居ないと島川さんが寂しがるからって言ったら苦笑いしながら作ってくれたんだ」


 あー、その理由だったら悲しいことに誰も疑う人はいないだろう。なにせ、柚子が俺にベッタリなのは周知の事実だからな。

 こいつ、口実を作ったり、色々と策略をねったりするのが上手いんだよな。

 元々上手かったんだけど、今は特典で思考速度が上がっているから更に上手くなっているのか。

 本当にこいつの頭の中の構造を知りたいものだ。


「さて、これで全て準備が整った。だけど、サツどうする? 多分だけど、もう俺たちと行動することは出来ない」

「あぁ、それは大丈夫だ。ここまでやってもらったんだし、ここからは俺が自分でなんとかするさ。それに、一つだけ気になることがあるんだ」

「ふーん、そっか。だけど、大丈夫か? この世界は魔物が沢山いるけど」


 俺は考える。こいつは恐らく本当に俺の身を案じてくれているのだろう。

 そりゃそうだ。こいつは俺が戦えるなんてこと知らないんだから。なら、こいつを安心させてやりたい。

 この世界では殺し屋をやっていた経歴など関係ないんだから。


 そう考えて俺は背中から拳銃を取り出した。

 それを見た大輝は一瞬、目を見開いて驚いたけど、直ぐに元に戻って「そっか」と一言。

 こういう時、こいつは人の事情にはあまり鑑賞してこないから有難いというものだ。


「他の人には内緒で頼む」

「当たり前だ。……頑張れよ。何かあれば俺と多分柚子も手助けしてやるからよ」

「そうなったら頼むわ」

「あぁ……健闘を祈る」


 俺たちは拳を合わせる。

 次会えるのは何時になるのか、それは全く分からないけど、俺たちは次また会える日を願って互いの健闘を祈りあう。

 それから俺はこの城を出るために走り始めた。


 俺は元の世界で人に見つからないようにして行動するのは何度もやってきた。そのため、慣れていると言っても過言ではない。

 だから誰一人にも見つからずに俺は城を抜け出すことに成功した。

 大層な城なのに警備はザルだったようだ。


 それよりも、早くあいつの居所を見つけないといけない。あいつはあいつで肩身の狭い思いをしているに違いない。

 もう夜も更けている。

 俺と同じ境遇なのだとしたらこの街の援助を受けられない。それはサービスも何もかもということだろう。

 だとしたら宿なんて取れるわけが無い。


 俺は必死に夜の街を走る。

 元の世界とは違って夜になると物凄く暗いため、人探しには向いていない。俺だから人を探せるのだ。

 俺は夜目が利く。


「見つけ出す。絶対に俺だったらできるはずだ!」


 人目も気にせず、走って至る所を探し回る。


 そして遂に見つけた。

 青髪で粗末な服を着ている少女は街の外れにある丘の上で体育座りをして空を眺めていた。

 その姿は大変綺麗なものだが、それを見ている暇は俺にはない。


「ハルロート!」

「っ!?」


 俺の叫び声にビックリしたのか、一瞬肩を震わせると恐る恐るこっちへと顔を向けた。

 美しくて綺麗な青い瞳が俺を捕える。その瞳は涙でぐしょぐしょになっていた。


「こんな所にいたのか。心配したぞ」

「……さっきの態度を見る限り、貴方が人を心配するように見えないのだけど」


 図星を突かれて俺は固まってしまう。確かに俺は人を心配する質ではない。

 自分自身でも似合わないと思うが、心配しているのは嘘ではない。もし勇者が嘘なんだとしても、このことに関しては嘘偽りない真実だと断言出来る。


「お前、追放されたのか?」

「どうしてそれを!?」

「俺も同じだからだよ」

「サツラさんも?」

「あぁ、どうやら俺は勇者としてこの世界に召喚されたのだけど、特典を貰い忘れたようでな、嘘つき呼ばわりで同じく追放されたんだよ」

「そう……だったんですか」


 俺を見る青く大きい瞳は心配の色へと変化する。こいつは自分が大変なくせに、人のことを心配する聖人のようだ。

 俺だったら絶対できないことだ。

 こんな奴が追放されるなんて間違っている。


「なぁ、勇者はチームを組んで魔物たちと戦わなくてはならないらしいんだ」

「そう……なんですか」

「お前がなってくれよ」

「……へ?」

「俺の仲間にお前がなってくれ」

「ちょ、ちょっと待ってください。頭が追いつかないです」


 俺は追放されそうになった時からもう決めていた。

 少ししか話していなかったが、職業柄、相手の性格や癖は少し話しただけでもある程度把握することが出来る。

 こいつはものすごく優しい。人のことを慮れる。俺に欠如したものをこいつは持っている。


「でも、私は追放された身でして……」

「それは俺も同じことだ」

「あ、そうでしたね」


 うん、天然も入っているようだな。だが、その方が面白いというものだ。

 こいつが何を言おうとも、俺の意思が覆ることは絶対にない。その事をハルロートは把握したようで、おもむろに立ち上がると走って逃げ始めた。

 逃げているが、その表情を見てみる限り、嫌がっている様子はない。むしろ、自分でいいのかと遠慮しているような気がする。

 なら、俺のやることは一つだ。


 俺も後を追って走ると、すぐに追いついてハルロートの腕をガシッと掴んだ。


「は、離してください!」

「嫌だね。俺の仲間になってくれるまで離さない」

「子供ですか!」

「年齢的にはまだ学生だし、子供の範疇なんじゃないか?」

「そういう意味じゃないです! どうして私なんですか!」


 こういう時、なんて答えるのが正解なんだろうか。今まで全然他の人と関わってこなかったせいで正しい答えが何かわからない。

 そうだ、トレースだ。こういう時、誰が一番正しい答えを導き出せそうだ?

 ……今一瞬、黒髪好青年の腐れ縁の顔が思い浮かんでしまった。あいつ基準に考えるとナンパになりそうなんだよな……。

 でも、他に最善手が思い浮かばない。

 俺は深呼吸をすると、頭の中に思い浮かんだ言葉を言い放った。


「お前の心が綺麗だったから」

「へっ!?」

「ちょ、まて、俺は今一体何を言った!」

「私の心が綺麗だったからって」

「うがぁぁぁぁぁっ!」


 思わず奇声を発して地面をころがってしまう。

 俺は何恥ずかしいセリフを口走っているんだ! 大輝をトレースしたからって限度ってもんがあるだろうが!


「ふふふ」

「え?」


 すると突然、ハルロートは笑い始めた。

 初めて会ってから今の今まで一度もこんなに笑っているハルロートの姿を見たことがない。

 今までは悲しそうな表情をしていたのに、なんだか楽しげに笑っている。どうやら俺の羞恥心を犠牲に元気づけることが出来たようだ。


「それが貴方の本音でいいんですね?」

「いや、ちょっと待て! 確かに嘘じゃないんだが、本音は自分でも分からないんだ」

「おかしい人ですね」

「悪いか?」

「いいえ、悪くないです」


 すると、寝転がっている俺の右隣に同じように寝転がってきて、俺の方を向いて俺の右手を両手で優しく包み込み、微笑みながらハルロートは言った。


「これからよろしくお願いしますね。責任とってくださいね」

「お、おう」


 その時のハルロートの笑顔は薔薇のように美しい笑顔で、俺はそう返事することしか出来なくなってしまった。

 これで第一章終了です。

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