野球が大好き
はじまりはじまり~
あるところに野球が大好きな2人の少年がいました。
2人は小学生の頃、同じ少年野球のチームに入り、一緒に野球をしていました。
中学生になると2人は同じ学校に入学し、野球部に入りました。
2人は高校も同じ学校に行きました。
しかし、1人は野球部に入らず帰宅部になりました。
ある日、野球部に入った方が、帰宅部になった方に尋ねました。
「君は野球が嫌いになったのかい?」
「いいや、今でも野球は僕が一番好きなスポーツだよ」
「それじゃあ、どうして野球部に入らなかったんだい?」
「野球を嫌いになりたくないからさ」
「?」
「小学校の頃は野球をするのがとても楽しかったよ。
家に帰った後、テレビで野球を見たり、休みの日は球場で野球観戦したり、とても幸せだったさ。
けど中学校で野球部に入ると、毎日朝早くから日が暮れるまで練習しなきゃいけないから、テレビで野球を見れなくなったんだ。休みの日も練習があるから、野球観戦もできない。
たまに見ることができても、練習の一環として、フォームやプレーの観察に集中しなくちゃいけないから、全然楽しくなかったんだ。
中学生でこうだったんだから、高校の部活はますます練習ばかりになって、もっと楽しくなくなっちゃう。
そしたら僕は野球が嫌いになっちゃうよ。
けど帰宅部なら、すぐに家に帰れるからテレビで野球を見れるし、野球観戦にも行ける。
それなら好きなだけ野球を楽しむことができるし、ずっと野球が好きなままでいられる。
僕は確かに野球は好きだよ。
ただ、野球をするよりも、見て楽しむ方が好きだったのさ。だから、野球選手には向いてないよ。
毎日仕事として、練習しながら生活するよりも、趣味や遊びとしてやりたい時にやりたいだけやる方が性に合ってる。その方が好きなんだ。
ごめんね」
「謝ることないよ。
何を好きになるかは個人の自由だし、どれくらい夢中になるかも、どう好きになるかも自由だ。
自分の意志でどうこう出来るわけないよ。
一緒に野球をできないのは残念だけど、僕の野球を観て楽しんでくれよ」
それからも2人はずっと友達でした。
やがて2人は大人になり、1人はプロ野球選手になりました。
もう1人は公務員になり、よく休暇をとっては野球観戦に行きました。
その友達が出る試合は、必ず観に行きました