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7話 聖霊女王《エレメンタルクイーン》

『あなたに助けて頂きたいのです!』


 女神の様に美しい人が語りかけてくる。


 間違いなく人では無い。


 人にしては存在感が異質すぎる。


 何と言うか、そう、神々しすぎるというか……


『えっと、助けるって?あと、あなたはいったい……?』


 恐らく、マナが言っていたクイーンに間違いないとは思うが、何にしても思い込みというものがある。思い込みで失敗すると後々悲惨な事になるのを知っているので、きちんと確認する事が大切だ。


『私は、精霊の母であり、この世界では聖霊女王(エレメンタルクイーン)もしくは創世の三柱と呼ばれていますが、気軽にママって呼んでくださいね?』


 ……ママと呼ぶのはハードルが高いので、女王と呼ばせて貰おう。


『あの、女王様と呼んでも良いですか?その、ママは流石に……』


『そんな~なんで皆ママって呼んでくれないのかしら~』


 ママと言うにはハードルが高すぎる……こんな神々しい存在に面と向かってママって呼べる存在がいたら、会ってみたい。きっと只者じゃない。


『そんなに気安く呼べないと思いますよ……普通は』


『え~そんな、気安いとか、気安くないとかどうだって良いじゃない!シナさんだって、今は性別が有って無い様なものだし!ママは無理でも、お母さんって呼ばれたい~!』


 女神様……いや、精霊の女王様はこんなキャラなのか……性別が有って無い様なもの?まだ赤ちゃんとして生を受けてない事を言ってるのかな?


『そ、それじゃあ、お母さん……』


 駄々を捏ねる様な女王を何だか可哀そうに思って、そう呼んでしまう。


『ふふっ、シナさん優しいんですね。あなたの事を女王の名の元に我が子として祝福します』


 ……?


 口調がクルっと変わった。


『えっと、女王様?』


『すみませんね、我が子にしか加護を与えられないと云うのが掟なので、この様な形を取らせて頂きました』


 我が子に、加護?


『そうなると、精霊はみな女王様の加護を?』


『ええ、そうなります。個々の分に応じて、多少加護の強い弱いはありますが。他にも、それぞれの神の子供達はそれぞれの神の加護を受けています。因みに、マナミナス ―今はマナでしたか― には、生命の加護を付与していました。その為、生命力が強く、多重存在化を起こしていました。それも、今は安定しているようですが……安定した弊害か、説明すべき事も忘れてしまったのかも知れませんねぇ』


 言いながら、女王がマナをチラッと見る。


『違うの、別にお母さんと話せるようになったのが嬉しくて、役割を忘れてたとかじゃないの……マナはお母さんにちゃんとギフトをあげたの!』


 胸を張って言うマナに、女王は答える。


『確かにギフトを贈ったようですね。でも、そもそもギフトは加護と一緒に私が与えるはずでしたのに……それにあなたにはサポートをしなさいと言ったはずですが』


 マナがしゅんとするのを見て、女王が続ける。


『マナ、あなた自分の生命の力を全てを使いそうになったんじゃないかしら?』


 女王の言葉に、マナがギクッ!?とばかりにしどろもどろになっている。


『そ、それは……確かに、生命の加護で魂の状態のお母さんの願いを叶えよう(ギフトを与えよう)とは……しましたの』


 加護の力を使い切りそうになったって……


『それって、危ない事なんじゃ?』


 女王が頷く。


『ええ、もし全ての命の力を行使してしまえば、存在する事が出来なくなっていたでしょう』


 つまり、マナが消滅しそうだったと。


『マナ、どういう事?』


 口調が強くなってしまうが、マナを問いただすのが優先だ。


『それは、お母さんが好きだから……お母さんの為なら何でもしたいって思ったから……』


 もし、お願いでマナと一緒に居たいと願わなければ、今頃マナがいなかったかもしれない。


『まあ、確かにそれも仕方ないかも知れないわねぇ……これだけ強く惹き付ける力があれば、普通の精霊なんかは簡単に言いなりになってしまうでしょうし。私でさえ、一瞬衝動が抑えられなくなりそうでしたもの……』


 惹き付ける?


『どういうことですか?』


『そうですね、言うなれば固有能力とでも言いましょうか』


 固有能力?


『固有能力ですか?』


『固有能力、魂が持つ性質が変化したものでシナさんの場合、精霊に愛される性質が強いようですね。それも、とびきりに』


 精霊に愛される性質?


『でも、何故そんな力が……』


『固有能力自体は魂に由来するものなので、あなたの心がそれだけ精霊を引き付ける魅力に溢れていたのでしょう』


 褒められているようで、嬉しい気分になる。


『お母さん!マナ幸せなの!』


 急にニマニマと顔を崩すマナ。


『どうしたの?何か嬉しい事でもあったかしら?』


『マナは、お母さんが嬉しいと嬉しいの!』


 なんていい子なんだろう。抱き着いてぎゅっとしたくなる。


『シナさん、精霊はその契約主と繋がっている為、主人の心の状態にとても影響されやすいのです。マナは、恐らくシナさんの心の変化を感じて気持ちが高ぶったのでしょう』


 精霊は契約主の心の状態に影響される、か。私が悲しい気分になったら、マナも悲しくなる……注意しないといけない。


『ところで女王様、主人や契約主と言うのは何のことですか?』


 疑問に思って聞くと、女王ははぁ~とため息をついて、マナの方を向く。


『マナ?あなたは何処まで説明をしたのかしら?』


 マナが手をもじもじと動かしながら慌てて、答える。


『えっと、マナが精霊な事と、お願いを叶えられる事……?』


 今思えば、マナとの初対面では疑問が沢山生まれるものだった。


 そもそも、願いを死んだ後で叶えてもらって、力を得ても意味が無いと思っていたが、転生すると云う事で納得した。まあ、転生する事もさっき知ったし、加えて言えば、転生先が異世界だと云う事もさっき知ったのだが……


 そんな事を考えていると、キリッっとした表情で女王が言う。


『全く説明が無かったようですね……シナさん、やり直しをさせてもらえますか?』


『構いませんよ』


 今更何を頼まれても断るつもりなどない。それは、既に決めていた。ただ、何のためにどんな理由で転生するかは知っておきたい。


『私は聖霊女王(エレメンタルクイーン)であり、この世界の神の一柱です。シナさんには、転生して頂き、世界樹を復活させて頂きたいのです。その為に必要なサポートとして、精霊の中でも大きな力を持つ我が子生命の幼子(マナミナス)を付けます。加えて、私からは加護とギフトを与えましょう!』


 ……そこからやり直すのね~


 何となく、女王がかわいらしく見えてしまう。


『ふふっ、はい。お受けします……ただ、マナから既にギフトは貰っていますが、女王様からももらえるのですか?』


『ええ、元々マナには、あなたの全てを持ってサポートしなさい。と言ったのですが、どうやら勘違いして、マナはその全てを与えようとしたみたいなのです。つまり、私はまだあなたに約束したギフトを与えていません。何をギフトとして欲しいですか?』


 ギフトか……そう言えば、女王の願いは世界樹の復活と言っていた。


『女王様、世界樹の復活をして欲しいとの事ですが、女王様の力でどうにかすれば良いのではないでしょうか?』


 そう、そもそも回りくどい事などせずに、直接力を振るってしまえば良い。


『いえ、神である私が直接力を振るうのは、余りにも影響が大きすぎる為世界のバランスが崩れてしまいかねない為、出来ないのです……それこそ、下手をすれば世界が崩壊してしまいます』


 ……怒らせないようにしておこう。


『分かりました。でも、何故私を転生させてまで世界樹の復活が必要なのですか?』


『ええ、この世界樹とは正に精霊の依り代であり、私の象徴のような存在なのです。しかし、現在は人の手によって壊され、奪われてしまいました』


 女王が悲しそうな顔をする。


『なぜ、人がそのような事を?』


『世界樹は、その存在自体が霊力を持ちます。故に素材としての価値が計り知れないほど高価なものなのです』


 要は、金に目がくらんだ人間が世界樹を切り倒したと……


『私がさっきいた場所に大きな樹が有ったようですが……』


 さっき眠りに着いた時に私が居たのは、途方もない大きさの切り株……いや、縦に割れた巨木だった。あれが世界樹だったとしたら、何者かがあの巨木を縦に切り裂いたと云う事になる。


 それだけの力を持つ存在がいると云う事にも驚きだが、その力を行使するのが人だと云う事につくづく、人の欲望には限りが無いんだなと思う。


『そうです。シナさんに見て頂いたのが、世界樹の現在の姿です。今はその力が奪われ、世界樹として死んでしまった状態です』


 ……やはり、あれが世界樹だったのか。


『分かりました。しかし、復活と言っても、どうすれば良いのですか?』


『マナは、生命のギフトを持っています。それに、シナさんは類まれなる植物の知識と探求心を持っています。そこで、その力を使って世界樹を復活させてください!私からの贈り物(ギフト)も与えます!』


 マナの力と、私の知識、聖霊女王(神様)のギフトで世界樹を復活……植物を弄り放題、世界樹と言う前世では想像もできないような超常植物の研究が出来る……


『ヒャッハーー!』


 心の声が溢れる。


『ひゃっは~?……ともかく、ギフトは何を希望しますか?』


 女王の言葉で少しだけ冷静になりつつ、考える。


 ギフト――特殊な能力、難しい事が可能になる力……そう言えば、前世では品種改良の時には散々挫折した。それに、品種改良をする切っ掛けも、世界中の植物で自分が知らない植物が居なくなったから、仕方なく生み出す事にしたんだった。


『決めました、何でも合成する能力を下さい!』


 上手く使えば、世界樹の復活に大いに役立つだろうし……前世で挫折した、話が出来る植物も作れるかもしれない。


『分かりました、私からギフトと加護を与えましょう』


 ……前世で挫折していた時、励ましてくれた仲間に、”話をする植物を創りたい!”って相談したら何とも言えない表情であきれられたけど……このギフトなら可能なはずだ。


 創造を膨らませていると、違和感があり、今まで出来なかった事が出来るようになった実感と、温かい感覚がある。


『何やら面白い想像をしているようですが、創造する植物(モノ)は程々にして下さいね。……それこそ、想像したモノが原因で世界が滅んではシャレになりませんので……』


 女王が顔を引きつらせているが、そんなに心配するようなモノは創り出すつもりは無い。精々、話が出来て、足が速くて、空を飛べて……っと、そう言えばまだ聞いておかなきゃいけない事が有った。


『あの、女王様。加護にはどの様な力があるのですか?ぽかぽかと暖かくて気持ちは良いのですが……あと、普通に加護を貰う人は多いのですか?』


 女王がほほ笑んだのを見て、どことなく不安を覚えた。


次回で白い部屋から転生されます。

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