6話 新世界での散歩
駆け足で書き上げた為、誤字脱字や矛盾などが有ったらすみません。
順次修正しますので、ご容赦くださいm(_ _)m
柔らかい光を感じる。
「綺麗ね……」
薄っすらと目を開くと、巨木の葉の間から漏れた光が、柔らかい光となって降り注いでいるのが見える。
巨木。
巨木としか表現できない。
視界に入るのは一面が樹の幹で、左右を見渡してもその全体を把握できない大きさだ。
「こんな樹があるなんて……」
咄嗟に立ち上がってしまったが、さっきまで寝ていた場所も巨木の根っ子だ。それに、巨木を取り囲む周囲の森も背の高い木が多く、森の中がどうなっているのか伺う事も難しい。
「あら?」
足元に咲いている、小さな花に目を向ける。
「白いつぼみに、楕円形をした葉……」
始めて見る植物だ。
「こっちは黒いつぼみに、細長で先が尖った葉?」
これも初めて見る。
その隣には、葉が人の手のように別れ、葉の先からさらに芽が出ている植物もある。
そしてその隣には、これまた初めて見る植物で……
…………
…………
…………
視界に入ってくる植物の一つ一つが初めて見る植物―つまり、新種の植物だ。
「こんな場所があるなんて……」
勿論、確認した全ての植物が丸っきり初めて見る植物というわけでは無い。しかし、詳しく確認すると、知っている植物の特徴と異なる部分があり、新種だと確認できた。
「……神様がご褒美に連れて来てくれたのかな!」
年甲斐もなくワクワクしてくる。
……ワクワク?
……何か忘れているような……?
白い……?
「あ、白い葉をした植物……どうなってるのかしらこれ!」
何か重要な事を思い出しそうになった気がするが、今は新たに視界に入って来た植物が気になってそれどころでは無い。
――
「最高! もう、最高! ……こっちにはどんな植物が居るかしら~」
一通り周囲の植物を確認したので、森の中に気が向く。
「さて、向こうに行こうかしらっツ……!」
暫く歩き回っていたせいか、足腰にきたようだ。
「……動かせるかしら」
足をほぐしながら、ゆっくりと動かす。
「無理しなきゃ大丈夫そうね」
早い動きで無ければ大丈夫そうなのを確認して、ゆっくりと立ち上がり、森の中へと歩き始める。当然、途中で見つけた植物達も丁寧に観察しながら。
…………
「わぁ!」
…………
「まぁ!」
…………
…………
「これは、こうすれば・・やっぱり何かしらの医薬的効能がありそうね……」
…………
……
既に、日は高く上がり、日が沈み始めてもその歩みは止まらない。
……
「この木は、針葉樹林?でも、ある程度の高さから性質が変わっているわね……という事は……」
始めの内確認していたのは、草やコケ等であったが、次第に木やその他、知識にある中の分類に当てはまらない植物まで手を広げていく。
「この木は中が空洞になっていて、幹自体が岩のように固い性質をしているのね・・こっちに倒れているのはこの木が死んで朽ちたモノね。朽ちても、しっかりと幹の形を保ってる・・思た通り中は空洞ね」
倒れている木は、一見コンクリートで作った水道管のようだ。元々生きている間は水か何かをためておく機能をしていたのだろう。死んで朽ちてからも、これだけ頑丈であればそのまま水道管として使える気がする。
「全て自然素材で作る家とか出来そうね……」
少し確認しただけでも、あらゆる事に使えそうな植物が数多く見つけられた。
「後は……」
最初に目が覚めた場所に歩いて戻る。
「この樹ね……」
最初に目が覚めた場所の巨木だ。
一見、枝が茂り元気に見えるが、森の中を移動していて気が付いた。
「どうやったらこんな……」
巨木の幹に沿って少し歩くと、次第にそのさまが見え始める。
巨木が縦半分に割れている。
「ここから登れるわね……」
巨木の割れた部分を上手く登りながら、巨木の年輪の上を歩く……
強引な割れ方をしたのか、割れた面がけば立っていて中々まともに歩けない。
「こっちから、こう行って……」
試行錯誤しながら巨木を登りつつ、その状態を確認していく。
確認の際、巨木の幹に何度か触れるが、その度に不思議とポカポカとするのを感じる。
「もう少しあっちも確認しましょう」
ひたすら気になる事を追いかける。
――
気付いたら、周囲が真っ暗になっている。
巨木の一部から、他の種類の木の芽が発芽し始めており、巨木の割れた面だけで一つの森になる雰囲気を感じた。
「ふう、少し歩きすぎたわね……」
今は巨木の幹が割れた面の上に居るが、ちょうど真ん中あたりでは無いだろうか。
下まで降りる気力が無いので、そのまま座り込む。
「楽しかった~もう一歩も歩けないけど!」
興味を惹かれるままに歩き回ったので、どれだけ歩いたのかもわからない。
座っているのも辛いので、そのまま仰向けに倒れこむ。
そうして、ふと周囲を見回すと、森の方がぼうっと青白く光っているのが見える。恐らく、夜発行するような植物が居るのだろう。本当だったらすぐさまその様子を観察したいところだが。
「……流石に動かないわね」
100歳の身体だ、酷使し過ぎたのだろう。ピクリとも動きそうにない。
「新種と言えば……マナ?!」
新種の植物として拾った植物の事、そしてその植物が精霊だった事を思い出す。
「マナ……?」
微かに、何かが聞こえた様な気がする。
「マナ、どこにいるの?」
『……あさん』
聞こえた。
確かに、声が聞こえた。
「マナ?」
聞こえた方に意識を向けると、次第に周囲の景色が遠のき、反対に声がハッキリとしてくる。
『あさん……お母さん!』
あぁ、愛しい我が子の声……
声がハッキリと聞こえたところで、閉じていた目を開く。
気付くと、白い空間にいる。
そこには満面の笑みを浮かべ、妖精と形容するとしっくりくる我が子マナがいた。
『お母さん! 私の世界はどうだったの? 新しい身体の準備期間にちょうどいいと思ったの! 身体はお母さんの前の身体をトレースして素体にしたから違和感はなかったと思うのよ?』
『マナ!』
がばっと、抱き着く。
頬をすりすりする。
『おかあしゃん~』
マナを見るとぽ~っとしている。
『マナ? あの世界は何? それに植物は? 新しい身体って? 準備期間? マナは今までどこに居たの? ……あと、』
次々と疑問が口をついて出てくる。
『あのね、あそこは私たちの世界で、お母さんがこれから生活する世界なの。お母さんが前にいた世界とは違う世界だから、植物も違うの。お母さんは、これからマナと一緒なの!』
なるほど……異世界に転生するって事ね?
普通なら驚く事かも知れないけれど、精霊だ異世界だと経験した後だと、そうなのかな?とすんなりと受け入れられる。
どうやらマナは、この世界について知って居そうなので、聞いてみる事にした。
『あのね、マナ?』
マナが『なあに、おかあさん?』と言ってくるので、頭を撫でながら聞いた。
『私がこの世界で生活するのは良いんだけどね?』
……マナがふんふん、と頷く。
『わたし、これ以上動けそうにないのよ』
そう言って、『どうしたら良いのかしら?』と聞いた。すると、少し困った様子のマナが首を傾げながら『うんとね、』と呟いて、考え込んでしまった。
そんな様子を見て、『無理に答えなくても良いわ』と言ったのだが、その直後、神々しい存在を放つ存在 ――正に女神の様な―― が現れた。
『こんにちは、六樹姿さん。その問いに関しては私が答えます。それより!あなたに助けて頂きたいのです!』
その存在――世界を司る存在の一柱、全ての精霊を司る聖霊女王との初めての邂逅は、唐突に成ったのだった。