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41話 年甲斐もなく年相応

 村人達が落ち着いた後で、シナは村長含めた村人達の"願い"として村を覆う結界を張っていた。一応、レンにも確認したのだが「自由にして良いです」と言う事だった。


 どうやら、途中でレンはシナがどういう存在か気が付いたらしく、まるで元から家族だったかのように信頼を向けてくれていた。


「シナは、本当に女王様(マザー)から加護を貰っていたんですね……こんな結界、魔王が必死になっても壊せるか分からないですよ?」


 レンが評価するが――


「何を今更言ってるの?」

「……テラ?」


 ――若干、呆れたとでも言うかのようにテラが出て来た。


「シナがおかしいのは、貴方だってよく分かってるでしょ?」


 そう言った後で「体験したんだから」と付け加えたテラだったが、何を思い出したのかレンは身震いしていた。


「あんな経験もうしたくない……」


 精霊から変人扱いされるシナと、それを好奇の目で見ていた村人達だったが、そんな合間にも構成途中だった結界がようやく組み合わさって来ていた。


「まったくもう……私はそんなに怖い事してないのに!」


 まるで、子供を苛めた大人と言うかのような構図に声を上げたシナだったが、それと同じタイミングで結界が組み上がった。


 結界自体は、世界樹の根元に作った庭園に掛けたのと同じ"女神結界"だったが、違うのは、属性をレンの"水属性"にした事だった。


 これで、万が一結界が壊れてもシナが喰らったのと同じ――いや、その十倍以上の威力を持つ魔法が発動され、相手を殲滅する事になるだろう。


 そもそも、今回は庭園の結界とは違い土台に必要な基礎を作っていない。今回創ったのは"簡易的"な結界の為、強度自体は庭園のモノと比べると遥かに劣ると思う。



 結界が組み上がるとその瞬間、村全体がすっぽりと薄い膜のようなモノに包まれた。


「おぉ、これは正にあの時と同じ!」

「それじゃあ、これで?」

「ああ、村が安全になったぞ!」

「ありがとうな、嬢ちゃん!」


 彼方此方で上がる喜びの声と感謝の声を聞きながら、(壊したの私だから……)と若干苦笑しながらも礼の言葉を受け取っていた。


 しかし、途中から村長の奥さんであるサリーを始めとした面々が「お礼をする!」と言い始めたので、慌てて言った。


「いやいや、そもそも私が結界を壊したんだから、直すのは当然よ」


 しかし――


「何言ってるの! そもそも元の結界は、従魔であるトゥフーも入れないようになってたんでしょう? そうだとしたら、私達の方の失態じゃない! だから受け取るべきなのよ」


 確かにそうだが……


「でも――」


 頷くも訂正しようとシナだったが、サリーは止まらなかった。


「それに、今回の結界はそういった(・・・・・)判別が出来るんでしょう?」


 キラキラした目のサリーに頷く。


「ええ、そうでないとトゥフーが困るから……」

「だとしたら、それはもう"改善"じゃない。それに、強度も上がってより安全になったのよ?」


 結界を直したはずのシナが、何故か追い詰められる形となっていた。しかし、それでも何か貰う訳には行かないと思ったのだが……断ろうとしたシナに、今度はロードが言って来た。


「嬢ちゃん、これは村にとって大きい事なんだよ」


 どういう事かと思ったシナだったが、どうやら意図せずして生じていた、新たな"メリット"についての話だったらしい。


「皆が気付いているかは分からないが、"危険が無い魔物が入れるようになった"と言う事は、海で獲って来た魚も更に新鮮な状態で持ち込めるという事なんだ。これ迄は、村の外で完全に絞めてからでないと持ち込めなかったんだが、これは大きい事だぞ?」


 ロードの言葉に、周囲の村人達が「おお、それはデカいな!」と反応している。しかし、そういう事ならシナにだって言い分がある。


「それは大した事じゃないと思うわ!」


 そこで言葉を区切ると、村人達の視線が集まるのを感じて言った。


「……だって、そもそも美味しかったじゃない」


 最後の方は小さくなってしまったが、しっかりと聞こえていたみたいで、シナの言葉の直後にサリーが抱き着いて来た。


「シナちゃ~ん! もう、カワイィ~! ほら、貴方もそう思うでしょ?」

「ああ、そうだな……。鮮度が落ちているのにそこまで言って貰えるとはな。喰われた(奴ら)も感無量だろうな」


 笑いながら言うロードと頷くサリー、そして村人達の様子を見て、年甲斐もなく恥ずかしくなって来たシナだったが、それを見ていたマナが何を思ったのか抱き着いて来た。


「……マナ?」

「あのね、」


 ニコニコとしたマナに、真っ赤になった顔を気にしながら聞く。


「どうしたのよぅ……」


 すると、これまたニコニコして言った。


「あのね、おかあさんかわいいなの!」

「ちょっ――」


 遅かった。


 マナの声が大きかったのもあって、止めようとしたシナに生暖かい視線が集まる。


「っつ――……そう、それじゃあ証明して下さい!」

「うん?」


 疑問符を浮かべるロードに言った。


「だから、新鮮な魚の方が美味しいって証明して下さい~~!」


 シナの年相応(・・・)に見える叫びを聞いていた村人は、緩んでいた顔を更に緩ませ、目の前の恐るべき力を持った少女が村を守ってくれただけでなく、とても(・・・)良い子だと知ったのだった。


 こうして、一同は海に漁に出る事となった。


 ◆


 "加護持ち"はその加護の力により、食べ物自体が通常よりも美味しく食べられるのだが……そんな事をシナが知る筈もなく(調べる筈もなく)、更に加えて女王の加護であれば、大抵のモノ(常人では口に出来ない様な物も)を美味しく食べられるなどとは、知る筈も無かった。

いつも読んで頂き有難うございます。

賞味期限が切れても美味しく食べられる力があれば、色々と都合が宜しいのにと思うここ最近です。皆さん、賞味期限は兎も角、消費期限の切れた食べ物は躊躇せず処分しましょうね。誰かさんみたいに、少しだけならとか、混ぜご飯にしてしまえばとか、そんなチャレンジをしてはいけませんよ?

え……?そんな馬鹿な事する奴いるのかだって?それは……うん、まあイケると思ったよね。

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