第10話 スラ子のお泊まり3/3
商店街をめぐる一人とビンの中に入ったスライム一匹は、道中立ち寄った精肉店でほかほかのコロッケを買い前にあったベンチで一休みをしていた。
「はい。スラ子ちゃんどうぞ」
奏は、ビンからスラ子を出した後、スラ子が食べやすいようにコロッケを半分に割いてスラ子の前に置いた。
「奏さん。ありがとうです〜! いただきまス!」
目の前に置かれたコロッケに喜びの表情はを見せるスラ子は、奏にお礼を言ってパクパクと食べ始める。
「おいし〜」
「でス〜」
美味しさのあまり黙々と食べていると遠くの方から声が聞こえてくる。
「奏さーん!」
と奏を呼ぶその声の正体は、奏達のクラスの委員長。花房 桜花だ。
「あ! 委員長! こんな所で会うなんて珍しいね〜」
「桜花さん! こんにちはでス!」
「こんにちは! スラ子ちゃん」
元気に挨拶を交わした二人と一匹。
「あれ? 委員長。制服だね」
「えぇ。ちょっと学校に用があってね。今は、その帰りなの」
「さすが委員長だね〜。休みの日も学校に行くなんて偉いね〜」
「そんなことないわよ。それより、春一くんはいないのかしら?」
桜花は、いつもスラ子と一緒にいる春一がいない事に気付く。
「春一さんは、家にいるのでス〜。今、私は、奏さんの家にお泊まり中なのでス〜」
「あら。そうなの。それは楽しそうね!」
「はいでス! お泊まりは、楽しいのでス〜!」
「私も楽しいよ! スラ子ちゃん!」
「それは良かったわね」
楽しそうにしている奏とスラ子の姿をみた桜花は、微笑みながら言った。
「委員長。今から、スラ子ちゃんに似合うアクセサリーを探そうと思うんだけど一緒にどう?」
「ごめんなさい。今日は、この後、用事があるの」
「あらー。それは残念。委員長は、忙しい人だね〜。じゃあまた今度遊ぼうね〜」
「本当にごめんなさいね。じゃあまた、学校で会いましょう」
「うん。またねー」
桜花を見送った奏達は、スラ子に似合うアクセサリーを探して商店街中を歩き回り、一つの赤い生地に白いまだら模様がついたリボンを買って家に帰ることにした。
「今日は、楽しかったでス〜」
「本当に? 私も楽しかったよスラ子ちゃん!」
大満足の様子で語り合う奏達。
こうしてスラ子のお泊まり会は、あっと言う間に終わりを告げたのだった。
一方、一人になっていた春一は、枕を涙で濡らしていたのだった。
◆◆◆
ある朝のコンクリートの上
紫色のこの世ではありえない物体が蠢いている。
それを見つめる紫がかった髪の毛を黒と白のフリルのカチューシャでまとめ。それと合わせて全身ゴスロリ姿の少女が蠢くそれを見つめ呟いた。
「何かしらこれ……」
と…………。




