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「マルが、何者かに連れ去られました……!」


 夜中にライリーの部屋を訪れたエイデンは、開口一番にそう叫んだ。


「落ち着け、エイデン」

「事前に、マル自身に魔法をかけておいたのです……もし、彼女に何かあれば、僕に知らせが来るようにと」

「おそらく、この城の連中だろうな」

「そう思います。僕とライリーの部屋は隣同士ですが、マルの部屋はここから少し距離がある」


 城の者たちは、何があってもマルを取り戻したいようだ。

 手段が、なりふり構わなくなってきている。


「とにかく、彼女を追います。魔法で、マルの居場所はわかりますから」

「ああ、急ごう」


 エイデンとライリーは部屋を抜け出し、真夜中の城の中を駆け出した。



 その頃、マルは地下牢に閉じ込められていた。

 一応、王族や貴族が入れられる牢屋を用意されている。


 季節は初夏だが、真っ暗な地下牢の中は寒く、寝間着のまま放り込まれるのはキツかった。

 地下牢の格子は頑丈で網目状になっており、壊すことは難しいだろう。

 だが、この牢屋は王族や貴族……つまり体が大きくて強い獣人を対象にしたものだ。

 小さく弱いハムスターは、もちろん対象ではない。


(ずさんだな。上部に隙間が空いているよ……)


 早速ハムスター姿になったマルは、網の目状の格子を登り始めた。

 隙間は高い場所にあり、落ちればハムスター姿のマルの命はない。

 けれど、マルは、なんとしても脱走したかった。エイデンに会いたかった。


 彼は、マルのことを本当に大切にしてくれる。

 獣人国からの使者にマルを返却するように言われても、頑なに拒否してくれた。

 複雑な生い立ちが判明しても自分を見捨てず、厄介ごとまで引き受けてくれる。


(私、エイデンが好き。彼と一緒に、エルフの国で生きていきたい)


 心はもう決まっていた。

 まだ、彼に自分の気持ちを告げていないけれど、きちんと伝えたい。


(そのためには、こんな場所で捕まるわけにはいかない)


 格子の最上部まで登りきり、ゆっくりと方向転換して反対側に降りる。

 時間をかけて、なんとか地面に降り立つことができたマルは、床の上を一直線に駆け出した。

 小さなハムスター姿のまま、ひたすら地上を目指す。

 しかし、しばらく進むと大きな鉄の扉が立ちはだかった。

 ここを抜けると地上へ続く階段に出られるのだが、扉に隙間はなく鍵もかかっているようだ。


(他に抜け出せる場所はないし、なんとかして扉を突破しなきゃ……)


 右往左往していると、不意に鍵が開く音がした。慌てて隅っこに避難する。

 地下牢に入ってきたのは、狼の獣人たちだった。

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