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 夜になり、マルは用意された部屋で休んでいた。

 エイデンとは別々の部屋なので、なんとなく心細い。


(いつの間にか、エイデンがいることが当たり前になってしまった。彼がいないと寂しいと感じてしまうなんて……)


 そんなことを思いながら、ベッドに腰掛けて寝る準備をする。

 すると、コンコンと部屋の扉をノックをする音がした。

 突然の訪問に警戒したマルだが、外から聞こえてきたのは白鳥獣人のメイドの声だ。


「姫さま、寝る前に飲み物などはいかがですか?」


 しかし、メイドといえども警戒するのがハムスターの悲しい性だった。

 特に、この城の中は怖い思い出が多すぎる。


「ごめん、もう眠るから大丈夫」


 扉を開けないまま声だけで返事をするマルに、メイドは戸惑いつつも諦めたようだった。

 しかし、マルの漠然とした不安は見事に的中してしまう。


「キャアーッ!」


 突然、扉の外からメイドの叫び声が聞こえたのだ。


「痛い、やめて! ああっ!」


 声の合間にドサリと彼女が倒れる音や、何かを殴っているような音も聞こえてくる。


「だ、大丈夫!?」


 思わずマルは扉に駆け寄った。


「ひ、姫さま、た、助けて……」


 白鳥のメイドが殴られているのは、自分のせいだ。

 マルをおびき出すために、何者かがメイドを利用している。

 この国は地位の低い獣人に容赦がなく、格下には何をしても良いという風潮がまかり通っているのだ。


「痛い、痛い、嫌ぁっ!」


 メイドの叫び声に耐えられなくなったマルは、思わず扉を開けてしまった。


「やめて! 彼女に暴力を振るわないで!」


 扉の外には、ボロボロに傷ついた白鳥のメイドと、またがるようにして彼女を殴っていた二人の熊の獣人がいた。熊の獣人の背後には、数人の狼の獣人も控えている。


「やっと出てきたか、手間をかけさせやがって」


 もはや姫に対する言葉ではない。

 だが、王が黙認しているので、この城の獣人達はマルにきつく当たる。

 白鳥の獣人が、恐怖からすがるようにマルにしがみついてきた。


「ごめんね、痛かったね」


 謝るマルの腕を、熊の獣人達が無理やり掴む。


「こいつを連れて行け」


 熊獣人に命じられた狼獣人の兵士たちに罪人のように引っ立てられながら、マルは用意された部屋を後にした。


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