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 エイデンが、突然口を挟んだマルの方を見た。


「自分の問題なのに、他人事みたいにライリーやエイデン任せにしておけないよ」

「大丈夫ですよ、マル。あなたを獣人の国へ渡したりしませんから」

「そうじゃない。二人だけで獣人の国へ行くあなたたちが心配なんだ。あそこの獣人達は喧嘩っ早いからね」


 獣人の国の者は上層部ほど気性が荒い。王族や貴族の跋扈する城の中なんて、特に最悪だ。

 いくら二人が魔法が使えて強かったとしても、数で攻められると厳しいだろう。


「心配要りませんよ、マル。エルフの代表者である僕たちもある程度強いですし、危ないことにはなりません……しかし、あなたを一人でこの場所に残しておくのも心配ですね」

「望み通り、連れて行けばいいんじゃないか? 交渉はなんとしても成功させる……目処は立っているからな」

「……まあ、僕らエルフは、魔族の国との繋がりも深いですからね」

「他の種族には広く知られていないが、元々は同じ種族だったらしいからな。基本、魔族は閉鎖的だ……今回の件も、どうせ獣人側のゴリ推しを魔族側が面倒臭くなって受け入れたのだろう」


 魔族というのは、面倒臭がりの種族らしい……


「今回の件、おそらく獣人の側に悪意はないのでしょうけれどね……人間や獣人は、エルフにとっての花嫁というものを軽く見過ぎている。喧嘩を売っていることに気がつかないなんて、愚かです」


 結局、ライリーとエイデンは代表として獣人の国に赴くことになり、マルもついて行くことになった。もちろん、たった三人だけということはなく、他のエルフも護衛や諸々の業務で同行している。



 獣人の国は、以前と変わらない。

 切り立った崖の上に、へばりつくように並ぶ建物。

 強い獣人の店主が、格下の下働きを怒鳴りつける声。街角に浮浪者よろしく座り込んでいる弱い獣人たち。

 そんな光景の中を、マルたちは馬獣人の人力車で進んで行く。


 獣人の国の城へ行く話は、ライリーがあらかじめ通していた。

 城へ到着し、ライリーは王へ面会しに行き、マルとエイデンは案内された部屋に向かう。二人の部屋は、別々に用意されている。

 獣人の国は、今後マルを魔族の権力者に嫁がせたいと考えているらしいので、妥当な措置だろう。


 仕方がないので、共用できる客間で話をしながらライリーを待つ。

 ハムスターの姫の帰還に、城の使用人達の目は冷たかった。いつものことなので、マルは特に気にしていない。

 そんな中で何かと世話を焼いてくれたのは、白鳥の獣人メイドだった。

 白鳥も、弱い生き物なので獣人国内での地位は低い。だが、白鳥の一族は容姿が優れている者が多く、こうして城で働くことも可能なのだ。

 下級の白鳥の獣人を世話係に当てられている点で、マルの城での扱いがわかるというものである。

 そんな内情を知っているだろうに、メイドは真面目に仕事をこなしてくれていた。


 しばらくすると、ライリーが戻ってきた。

 こころなしか、不機嫌そうだ。交渉がうまくいかなかったのかもしれない。


「エイデン、信じられない! 獣人国側が、何を用意していたと思う!?」

「……何かされたのですか!?」

「俺が被害に遭ったわけじゃないが、不愉快な思いをした。玉座の手前に十人の女獣人が並んでいて、マルと彼女達を交換するようにと言われたんだ。ハムスターよりも格上の、肉食獣人だと……当然、断ったがな」

「……エルフは、獣人と違って強い獣人に重きを置きませんからね。僕は小さくて可愛らしいマルが好きですし、ライリーは色白美人が好みですし。そんなものを用意されても、余計なお世話というやつですよ」


 エイデンは、顔色を悪くしたマルを宥めるように抱きしめて言った。

 マルは、すがるように彼の手を握る。


「大丈夫ですよ、マル。ライリーが、きちんと断ってくれましたからね。明日にはエルフの国へ出発しましょう」

「うん、ありがとう」


 こんなに簡単に事が運ぶだろうかと、マルは不安な気持ちを抱えつつも頷いた。

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