表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/20

12

 マルは、エイデンと初めてのキスをした。

 しかし、それから数日経過したが、特に関係は進展していない。


 エイデンが自分のことを「花嫁」や「ハムスター」としてではなく、「マル」として好いてくれているというのは伝わってくる。マル自身もエイデンが好きだ。

 思いを伝えられていないだけで……


 以前彼に話した「嫌いじゃない」では、告白にならない。

 そんな言葉では、敵意を抱いていないという証明にしかならないからだ。

 けれど、タイミングを逃してしまったため、改めて彼に異性として好きだと告げにくい。

 結局、その状態のままで、エイデンとマルは平和な日々を送っていた。

 時折、マルはハムスターに変身し、エイデンに触らせてやっている。



 ある日、強張った表情のライリーが病院へやって来た。


「エイデン、話がある」

「……なんでしょう?」

「今朝、獣人の国から使者が来た。その内容が、どうにも腹立たしいものなのだ……姫を、マルを返却してほしいと言ってきている」

「はあ? そんなもん、却下に決まっているでしょう」

「それが、どうにも難しい。向こうは、マルを魔族の大陸に嫁がせたいと……」

「自分たちで彼女を放り出しておいて、今更政略に使いたいって? ずいぶん都合のいい話ですね」

「ああ。俺もそう思う。だが、相手は獣人の国の王だ。簡単に断ることができない……だから、直接話をしに行こうと思う」

「獣人の国へ行くのですか?」

「ああ、そうだ。お前も来て欲しい」


 黙って二人の話を聞いているマルだが、内心は不安で仕方がなかった。

 おそらく、獣人の国と魔族の国とで何らかの取引をしたのだろう。そして、獣人の国の姫を一人送ることになった。

 けれど、姫たちは皆、泣いて嫌がったに違いない。見知らぬ異国へ嫁ぐ度胸のある者は、あの城にはいなかった。そこで、マルにお鉢が回ってきたのだろう。

 エルフへの花嫁なら、いくらでも替えが効く。けれど、獣人の国の姫は限られている。

 魔族の国へ送っても、痛くも痒くもない姫はマルだけだ。


(私のような半端な姫を送りつけても、国が恥をかくだけだと思うんだけど……)


 そういった理屈は、弱肉強食の獣人の国で通用しない。

 そして、弱いハムスター獣人であるマルの反論も一切通用しない。


「マルと離れる気はありません。僕の花嫁は一人だけです」


 エイデンは、不機嫌な声音でそう言い切った。


「わかっている。返却するのがサラミだったら、俺も同じことを考えるだろう……使者は「代わりの獣人をよこすから良いだろう?」などと、ふざけたことをぬかしていた」

「許し難い愚行ですね」

「おい、抑えろよ。お前がキレるとロクなことにならなさそうだからな」

「抑えますよ。僕は沸点が高いんです」

「……そういうことにしておこうか。とにかく、獣人の国との交渉が必要だ。俺とお前で獣人の国に向かうぞ」


 ライリーの言葉に、エイデンは黙って頷いた。部屋の中の空気が重い。


「待って、私も行く!」


 大人しく話を聞いていたマルが声をあげた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ