表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

第8話 体質

「強力な自然治癒力?」

 俺の言葉に、茜は眉を顰めてこちらを見てくる。

 その表情を歪めているにもかかわらず、綺麗な茜の顔だとやはり映える。不思議なものだ。


「そういうこと」

「そういうことってどういうことなの? 全然説明になってないんだけど」

「説明って言ってもね……俺自身も全然わかってないんだけど、俺にはそういう能力? や、体質みたいなものがあるんだ。

 かすり傷程度なら1時間で直るし、骨が折れても一晩寝れば元に戻ってる。実際に、さっきの火傷ももう治ってるよ」

 まあ、痛いから怪我するのは勘弁して欲しいけど。俺はそう付け足した。


 自然と目の前の焚き火を眺める目も鋭くなってしまう。

 もう時間は夜になっていた。

 辺り一面は闇に包まれている。それとは対照的に、焚き火は眩しかった。


 草原を東北に歩いて、山のほうへと辿り着くのは大変だった。

 燃やせる木を探すのだって、一苦労だ。もう野宿は勘弁して欲しい。


 おかげで霊山へと近づくのも遅れてしまった。今日中に辿り着けるだろうと思っていたのに、とんだ誤算である。

 まあ、別にラーニャを恨んだりはしていない。あそこで彼女が火を噴いてくれなければ、俺達が勝っていたかどうかも怪しいのだ。それに彼女なりに、俺達の役に立ちたかったのだろう。

 茜は未だに根に持っているだろうけど、俺がなだめてなんとか怒りは収めた。

 本気で心配してくれたのだろうけど、茜が怒る姿を見ていると、嬉しかったような、怖かったような。

 とりあえず、怒らせることは絶対にないようにしたい、と心に誓った。


 怒らせた張本人のラーニャは、背中に俺が持っていた青いシートを引いて寝ていた。

 さっきまで「ごめんなさい」としか言葉を発しなかった彼女。 恐らく、強い良心の呵責にさいなまれたのだろう。

 明日には元の彼女に戻っているといいなと、切に思う。

 寝ているラーニャを見ていると、やはりそのあどけない寝顔は子供にしか見えない。つい、頬が緩む。

 ……なんかロリコンっぽいな。笑っている自分の頬を指でほぐした。


「体質」

 茜が呟く。

「そう、体質。茜にもあったりするの?」

 この世界に転生してきた者には、みんなそういうのが備わっているのかもしれないという仮説が、思いついたことが昔あった。

「ある……かな。……うん、ある」

「そうなんだ」

 無理に聞くつもりはなかったが、茜は話の流れからか語り始める。


「わたしは、簡単に言えば夜目かな。よく猫とかカラスとかが持ってる奴。あの洞窟でも、中にある鉱石の光だけで辺りを見渡せたりした」

 夜目か。蛇に夜目はあったかな。いや、なかったような気がする。

 

「……あれ、じゃあ、どうして俺は襲われたの?」

 俺の顔も、茜と同じく前世から変わっていない。茜は一目俺を見たら、誰かわかっただろう。

「それは単純に、ランプの光がまぶしくて、逆に見えなかっただけ。声を聞いた瞬間に気付いたけど。

 というか、常葉くんこそ酷くないかな。気付いてなかったとはいえ、いきなりわたしから逃げた上、斬りかかるなんて。斬るのなんて、わたしより酷いよ」

「ははは……ごめん」

「……この罪は一生かけて、罰として償ってもらうから」

 いきなりマジトーンになるの怖いからやめて。

 お兄さん逃げ出したくなるから。兄でも年上でもないけど。



 俺と、茜はそんな話をしつつ、寝た。問題は朝だった。



「――」

 俺は唇になにやら変な違和感を感じて目を覚ました。

 ……目の前には、茜の目があった。彼女の目は開いている。つまり彼女は起きている。

 

 頭が一瞬真っ白になった。


 え、何。お、おう。

 少し茜の顔が離れる。俺は唇の違和感から解き放たれる。と、思ったのだが。


 ざらりとした何かが俺の唇を撫でた。

 混乱していたその時の俺には、『何か』が『茜の舌』だと気付くのには時間が必要だった。


「うぁ、え、ああ。ぎゃああああああ!」

 言葉にもならない声が出た。

 腕を動かそうとしてもぴくりとも動かない。足も同じだった。

 自分の体を見ると、赤くて、うろこの付いた太いものが巻きついていた。それは茜の下半身から伸びている。俺は茜に拘束されていたのだ。

「ちょ、何。え」

「んんん? ……既成事実?」

 嬉しそうに鼻を鳴らすな。頬を緩めるな。顔を赤く染めるな!



 前世まで振り返っても、今までで一番の波乱の朝だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ