第18話 後日談
「起きて……起きて、あなた」
微睡みの中で、俺は声を聞いた。
それはとても優しい女性の声だった。
「もう、あなたったら……甘えんぼさんね」
その声の主が、覗き込むようにこちらを見てくる。
「ちゅー」
ゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりその人の唇が近づいてくるのに気付いて俺は体をぐるりとロールさせた。
「あぶね……」
少女は枕と唇を交わしていた。先程まで俺の顔があった場所だ。
少女とは、もちろん茜である。
さっきは『あなた』なんて俺のことを呼んでいたが、もちろん結婚してるわけじゃない。
つまりは夫婦ごっこだ。茜は服の上からエプロンを着ていた。それもごっこ遊びの一環である。
別に頼んだわけでもなんでもないのに、茜は俺と一緒にこの家に住んでいた。
部屋は腐るほどあった。しっかりとは数えていないが、10部屋は軽く超えるだろう。
エントランスホールはそれこそ竜1匹が収まりきりそうなほどの広さがあった。
俺1人が住むには持て余す広さだ。
「常葉くんの匂いだ……」
茜はすんすんと鼻を鳴らして枕の匂いを嗅ぐ。
「やめなさい」
俺は枕を引っ張った。しかし、茜は離してくれなかった。
「ぬぬ……」
それどころか新しい抱き枕だとでもいいたいように、ぎゅっと枕に手を回していた。
子供か。俺は不意に突っ込みたくなったが、面倒になって手を離した。
ふかふかのベッドから立ち上がって、俺は扉のほうへ歩き出す。
今日も、モンスター娘の街での1日が始まるのだった。
多摩川多摩の次回作にご期待ください!
言ってみたかっただけです。はい、ごめんなさい。