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第239話「挑戦! チート嫁ダンジョン(ラフィリア編)」

 ダンジョンの最初の角を曲がると、両開きのドアがあった。


「リタ。『気配察知』で、ドアの向こうを調べてみて」


「はーい。ご主人様」


 リタが獣耳を澄ませる。しばらくして、リタは──


「気配はないわ。部屋に動くものはいないみたい」


「となると、入るとなにかが出てくるパターンかな」


「では、『強制礼節(マナー・ギアス)』の準備をしておきますわ」


 レティシアが不敵な笑みとともにうなずいた。


 ちなみに聖女さまは (歩くのが面倒になったと言って)小さなフィギュアサイズの身体に霊体を入れかえてる。今はレティシアの肩の上でくつろいでる。


 ゴーレムの身体なのに「ふっふーんー」と鼻息が荒いのは──なるほど、そういう機能をつけたんですか。ほんっとに器用ですね聖女さま。


「ふっふーん。ナギくん。セシルくんとラフィリアくんの成長を、その目で確かめるといいよ!」


「聖女さまから見ても、ふたりとも成長してますか?」


「うん。特にセシルくんはすごいよ」


「セシルが成長を……」


 ちっちゃな身体でがんばってくれて、いつも一生懸命で、抱っこすると膝の上にすっぽりと収まってしまうあのセシルが、成長を。


 しかも「別人かって思うくらいに」。


 うん。すごく楽しみだ。


「ありがとうございます。聖女さまにセシルとラフィリアを預けてよかったです」


「ん? あ、うん」


「成長したセシルと会うのが楽しみです」


「そ、そうだね! きっとびっくりするよ!」


「はい。すごくびっくりすると思います」


 顔を合わせてうなずきあう僕と聖女さま。


 それじゃ、まずはダンジョンを突破しないと。


「それじゃリタ、レティシア。ドアを開けるよ」


「了解だもん」「わかりましたわ」


「あれれ。妙にナギくんの気合いが入ってるね……? あれれ?」


「「「せーのっ」」」


 僕たちが突き当たりのドアを押し開けると──






 その向こうは四角い大広間だった。


 広さは、学校の教室くらい。


 向かい側にドアがある。あそこが出口らしい。




『ふふふ、ついにここまで来たですねー』




 天井から、ラフィリアの声がした。


 でも、姿は見えない。


 ここはセシルとラフィリアが作ったダンジョンだからなぁ。


 ふたりとも、僕たちにはわからないところから、こっちを見ているのかもしれない。


『だが、これで勝ったと思わないで欲しいです!』


 びしり、といった感じで、ラフィリアは宣言した。


『マスターたちが倒したのは、四天王の中でも最弱! 真のボス「ギガントセシルさま」はあたしの十倍の強さを誇るですよぅ!』


「なるほど。これから敵が4体出てきて、それを倒すとラフィリアが、その次はセシルが相手になるのか」


『…………』


「……あのさ、ラフィリア」


『はいです。マスター』


「もしかしてセリフの順番、間違えたの?」


『さすがマスターなのです! あたしの考えなどお見通しなのですね!』


 ぶれないなー、ラフィリア。


 そこがラフィリアのいいところなんだけど。


「でも、元気そうでよかったよ、ラフィリア」


『いやいや、そうでもないです』


「……そうなの?」


『あたし、マスターがいなくてさみしかったです。でも、これも修業だと思って、いっぱい勉強したです。思いをぶつけるのは、マスターと再会してからのお楽しみと思っていたです。セシルさまなんて、マスターへの忠誠心が暴走しかけたのでその対策をもがぁ! もごもご……もごもご』


 ラフィリア、セシルに口をふさがれたみたいだ。


 その後、ぼそぼそと小声で話し合う声がして、


『ふふふ! ついにここまで来たですね!』


「やり直したんだね……」


「ラフィリアらしいわ」「ですわね」


『ですが、マスター相手に小細工が通じないことはわかっているです!』


 びしり、と、どこでラフィリアが僕を指さす気配。


『迷路やトラップではマスターとリタさま、レティシアさまを止められないのです。だから、力ずくで通せんぼすることにしたです』


「通せんぼ?」


『あそこに出口のドアがあるですね?』


「あるね」「あるわね」「ありますわね」


『あのドアは、今から10分後に消えるです』


 ラフィリアが宣言すると、空中にタイマーが浮かび上がる。


 表示は『10:00』。それがどんどん減っていく。


『あの数字がゼロになるまでに出口にたどりついたらマスターたちの勝利。たどりつけなかったら、あたしたちの勝利なのです!』


「なるほど。考えましたわね」


 レティシアが感心したようにうなずいた。


「仕掛けは表向きには見えないようにして、時間制限を付けることでこちらの(あせ)りを誘う。残り時間が少ないとなれば、考えをめぐらせる余裕もなくなりますから」


「ラフィリア、なかなかやるわね」


『えへへー。ですぅ』


 ラフィリアの声と同時に、天井に穴が空いた。


 そこから人影が降りてくる──あれは!?


『そしてマスターたちの足止めは、この子たちがするです! 行くですよ! 「量産ラフィリア型ゴーレム」さんたち!!』



『はじめましてですぅ!』


『こんにちわですぅ!』


『いらっしゃいませです!』


『だいかんげいするです!!』



 床に降り立ったのは、ラフィリアにそっくりなゴーレムたち。


 ラフィリア本人と同じくらい大きな胸を揺らして、エルフ耳をぴん、と尖らせて、こっちに向かってくる。着ているのは奴隷服(どれいふく)


 全員が、びしり、と背筋を伸ばして、気品のある動きでこっちに向かって来る。


 ゴーレムのはずなのに、見た感じはまるで人間みたいだ。


『あれは「リトルドラゴンゴーレム」を参考に作った、やわらかゴーレムの人型プロトタイプだよ』


「知ってるんですか、聖女さま!?」


『うん。ウリエラくんの魂を入れるために作った、ゴーレムの試作型だね。余ったから自由にしていいよって言ったんだけど……そっか、ラフィリアくんは、自分と同じ姿に作り替えたんだね』


「それって……」


「まさかとは思うけど……」


 僕とリタは顔を見合わせた。




「「(リタ) (私)の分身スキルがかっこよかったから!?」」


『正解なのです。リタさまのあれはすごくかっこいいですからねぇ』


『『『『かっこよくてあこがれるです。すごいです』』』』




 ラフィリアの声に合わせて、ゴーレムたちが拍手する。


 なるほど。


 ……ラフィリアもリタみたいにかっこよく分身したかったんだね。


 そのためにゴーレムを自分そっくりに改造した、ってことか。


『ではでは、時間切れまでマスターたちをとおせんぼするです! ゴーなのです!』


 ラフィリアの合図で、量産型ラフィリア──長いので量産ラフィ──が、僕たちを取り囲む。


『こんにちは』『いらっしゃい』『歓迎するです』『ゆっくりするです』って口走りながら、僕たちの行く手をはばんでる。


「仲間にスキルを使うのは気が進みませんが、いたしかたありませんわね」


 レティシアはそう言って、姿勢を正した。




「発動『強制礼節(マナー・ギアス)』! こんにちは! レティシア=ミルフェですわ!!」




『強制礼節』は、目の前の相手をむりやり礼儀正しくさせるスキルだ。


 このスキルを発動したレティシアを見たものは、お辞儀を返さずにはいられなくなる──




 しゅたたたたっ!




 あれ? 量産型ラフィの動きが止まらない? なんで?


 僕たちを取り押さえようと、まっすぐに向かって来る。


「まさか!? 『強制礼節』が通じないんですの!?」


『ふふふ。レティシアさま、よーく考えてくださいです』


「な、なにをですの?」


『レティシアさまの「強制礼節」は、相手を礼儀正しくするスキルなのですよね? だけど、目の前にいる「量産ラフィリア型ゴーレム』は、登場したときからあいさつを続けているのです!』


「「「……あ」」」


 そうだった。


 量産型ラフィは、さっきからずっと「こんにちは」「いらっしゃい」と、あいさつしながら走ってきてる。


『強制礼節』は、相手の礼儀を正すためのスキルでもある。


 最初からむちゃくちゃ礼儀正しい相手には通じないんだ。


『こうして話してる間も、あたしはペコペコとみなさんにあいさつを続けてるです。そのあたしがあやつるゴーレムですから、「強制礼節」は通じないのですよぅ!!』


「「「おおおおおおおっ!」」」


『──って、少し前にマスターが言ってたです』


「……え?」


『大分前に、レティシアさまの「強制礼節」の破り方で話し合ったときに、アイディアを出してくださったです。確か、強いスキルを破るのは燃える、とかおっしゃっていたですよ?』


「……ナギさん」


「ごめん。そういえばそうだった」


 燃えるよね。強力なスキルの攻略法を考えるのって。


 それに、敵が『強制礼節』対策をすることもあるからね。スキルの弱点は、早めに見つけておきたかったんだ。そうすればいざという時に、僕たちがフォローすることもできるから。



『こんにちはー』『ぬぎぬぎするですー』『ふにふにするですー』『くっつくですー』



 そんなことを話している間にも、量産型ラフィは迫ってくる。


 タイマーの残り時間はどんどん減ってる。


 せっかくラフィリアががんばったんだから、僕の負けでもいいんだけど……でも、こういうのは全力でいかないと悪いよね。


 こっちもやれることをやってみよう。


「リタは『分身攻撃』を起動。量産型ラフィを押さえて!」


「りょーかいっ!」


 僕の合図で、リタがスキル『分身攻撃』を起動する。


 直後、リタが4人に増えた。


 うち3つは分身だ。これでなんとか量産型ラフィを押さえてゴールまで──


「──と、思わせておいて本体登場なのですぅ!」


 ──駆け出そうと思った瞬間、天井からラフィリアが降ってきた。


 深紅のマントをつけていた。


 着ているのは漆黒(しっこく)のローブだ。すごくよく似合ってる。かっこいい。


 でも、顔が真っ赤に火照ってるのは、どうしてだろう。


「修業で身につけたあたしの新スキル『瞬間強化(しゅんかんきょうか)』をお見せするです!」


「『瞬間強化』!?」


「そうなのです。そのスキルのおかげで、今のあたしは五感と魔力が強化されてるのです! その制限時間は5分!」


「まさか、この部屋のクリアに制限時間がついてるのって……」


「はい。あたしが時間ギリギリまでかっこよく戦うためなのです」


 深紅のマントをひるがえして、黒いローブ姿のラフィリアは宣言した。


「そして! あたしが自分を強化している間は、『量産ラフィリア型ゴーレム』と感覚が共有するです! まるで自分の手足のように、ゴーレムたちを動かせるです!」


『よろしくですー』『礼儀正しくくっつくですー』『マスターをぬぎぬぎするですー』『リタさんとレティシアさまのごいっしょするですー』


 かっこいいポーズを決めるラフィリアと、人間そのものの動きで迫ってくる量産型ラフィたち。


 僕が聖女さまの方を見ると──彼女は、してやったり、って顔でうなずいてる。


 ラフィリアの言ってることは本当みたいだ。


『本人が告白したなら教えてあげてのいいかな。確かにラフィリアくんは一時的に自分を強化する「瞬間強化」スキルを手に入れているよ』


「その間は五感と魔力が強化されるんですよね?」


『ふっふーん。その通り』


「で、ラフィリアはあの量産型ラフィたちと、感覚を共有しているんですね?」


『ふふっ。そんな話をしている暇があるのかい? 残り時間は少ないよ?』


 レティシアの肩の上で、聖女さまがタイマーを指さした。


 残り時間は5分足らず。


 しかも、僕たちは完全に量産型ラフィに取り囲まれてる。


「ナギ。ここは強行突破しましょ。私が量産型ラフィたちの背後に回り込むわ」


「わたくしは『回転盾撃(シールドスクランブル)』で牽制(けんせい)しますわ」


 リタとレティシアがつぶやく。


 でも、ラフィリアは僕たちの作戦を読み切ったように、


「そうはさせないです! 『竜種旋風』!!」




 ぶぉおおおおおおおおお!




 自分の左右に、巨大な竜巻を呼び出した。


 いつもより大きい。魔力が高まってるせいか、『竜種旋風』も強化されてるのか。


「久しぶりにマスターに会えたのです。全力でいくです。さぁ、量産ラフィリア型ゴーレムたち。マスターの服をぬぎぬぎして、思うぞんぶんさわさわするですー!」


「欲望がダダ漏れになってる!?」


「なんの! セシルさまに比べればかわいいもんです!!」


「セシルには一体なにがあったの!?」


「それを知りたければ、ここを突破していくですよー!」


「うん。わかった」


 僕はリタとレティシアを手招きした。


 五感が鋭くなっているラフィリアに聞かれないように、小声で作戦を伝える。


「「──なるほど!」」


 作戦を聞いたふたりは、ぽん、と手を叩いた。


 ……あ、聖女さまも目を見開いている。さては作戦が聞こえたな。


「行くよ。ラフィリア!」


「「「「覚悟しなさい。ラフィリア!」」」」


「しょ、しょうがないですわね。わたくしもやりますわ」


 僕たちは量産型ラフィに向かって走り出す。


 聖女さまの警告も間に合わない。量産型ラフィは僕たちを完全に取り囲んでる。その上、背後には巨大な『竜種旋風』。僕たちにも逃げ場はないけど、量産型ラフィたちもそれは同じだ。


「くるですかー!」「やるですー!」「マスターをもらうです!」「欲望を解放するですー!」


 近づいてくる量産型ラフィたち。


 やっぱりだ。その目線は、完全に僕の方を向いている。


 ラフィリアと感覚共有した、4体の量産型ラフィ。そして魔力と感覚(・・)が強化された、ラフィリア本体。その意図するところは──


「リタ! 頼む!」


「「「「はーい。ご主人様!」」」」


 リタと分身たちが、僕のところに集まってくる。


 そして──3人のリタたちは打ち合わせ通り、僕を担ぎ上げた。


「「「とー!」」」


 そのままリタたちは騎馬戦(きばせん)状態で僕を担ぎ上げたまま、ジグザグに走り出す!


『な、なんですとー!』『マスター!』『マスターに手が届かないです!』『ぬぎぬぎ、ふにふにできないですー!』


「な、なんですと! こ、これでは──」


 本体のラフィリアがのけぞってる。


「4人がかりでマスターをふにふにしようと思ってたのに、手が届かないのですぅ!?」


 やっぱりかー。


 考えてみれば量産型ラフィたちは、ずっと僕を狙ってたもんな。


 しかも堂々と「ぬぎぬぎ」「ふにふに」って言ってたもんな。


 で、ラフィリアが新たに覚醒(かくせい)したスキル『瞬間強化』は、彼女の魔力と感覚(・・)を強化する。つまり、触覚も強化されてるはずだ。


 だとすれば、ラフィリアの狙いを読みとるのは簡単だ。


 ラフィリアはゴーレム4人がかりで僕を抱きしめて、強化した感覚でそれを楽しもうとしていたんだ。ゴーレム4体(かける)触覚強化で、『ふにふに10倍』とか考えてたんじゃないかな……。


「さ、さすがマスター! あたしの『マスターを40倍ふにふに作戦』を読んでいたですか……!?」


 40倍だった。


 となると、ラフィリアの触覚は10倍になってるのか。すごいなー。


『待って下さいー』『リタさまのフットワークすごいですー』『おいつけないですー』『わわわー』


 僕を担いだリタたちの動きに翻弄(ほんろう)された量産型ラフィたちは、包囲網(ほういもう)を完全に乱してる。その隙間を、僕とリタ、レティシアはすり抜ける。


「包囲網を抜けましたわ!」


「このままラフィリアを突破するわよー!」


 残り時間はあと2分。


 前方には赤いマントをひるがえしたラフィリアと、『竜種旋風』の竜巻が立ち(ふさ)がる。


 僕はリタの耳元に第2の作戦を伝える。


 リタはうなずき、走る速度を上げた。


「むむむー! ですが、ここは通さないのですよー!」


「ラフィリア、あなたは強くなった。でも、こっちにはナギがいるの!」


 騎馬を(・・・)組まなかった(・・・・・・)4人目のリタが、量産型ラフィをつかまえて戻って来る。


 量産型ラフィは、リタに抱えられたまま、じたばたしてる。


 僕はその耳元に顔を近づけて──




「ふーっ」と、息を吹きかけた。




「ひゅわわわわわわわわっ!?」




 ラフィリア(・・・・)本人(・・)が、真っ赤になって座り込んだ。


 うん。くすぐったいよね。触覚10倍だもんね。


「ひゅわ、ひゅわわわわわ……まさか、こんな手があったですか……」


 集中できなくなったのか、『竜種旋風』が消える。


 残り時間はあと1分。でも、ラフィリアは動けない。


「……ふ、ふわわ。こ、これはずるいですよぅ。こんなの、あたしがレジストできるわけないじゃないですかぁ」


「いや、だってラフィリア、ゴーレムを使って僕に触ろうとしてたじゃないか」


「あたしから触るのはいいんですぅ!」


 言い切った。


 すがすがしいくらい、きっぱりと。


「で、でも。さすがはマスターなのです。分身とあたしの感覚が繋がっていること……あたしの感覚が鋭くなっていること、すべてを利用して突破するとは……なのです」


 ラフィリアは床に座りこんだまま、真っ赤な顔で僕を見てる。


「でも、わかんないです。あたしのゴーレムたちを攻撃すれば簡単に突破できたですのに。なんでこんな、まわりくどい手を使ったですか?」


「いやいや、ラフィリアを攻撃できるわけないだろ」


「……あたしに似てても、あれはゴーレムですよ?」


「ゴーレムでも嫌だよ。当たり前だろ」


「……もう、マスター……そんなこと言われたら、負けを認めるしかないじゃないですかぁ」


 かちり、と音がして、カウントが止まった。


 勝負あった。


 ラフィリアは床に座ったまま、僕を見上げてる。


「ですが、油断しないでくださいです! このラフィリア=グレイスは、マスターの奴隷の中では最弱!」


「そうだったの!?」


「……最も弱点が多いので、略して最弱なのです」


 あ、そういう意味か。


 でもね「後で弱点をすみずみまで教えるです」と言われても困るからね。そういうのはふたりっきりの時にしてね。ちゃんと時間は作るからね。


「でもでも、気をつけてくださいです。みなさん、セシルさまはすっごく強くなってるですよ」


「わかった。気をつけるよ」


「ラフィリアも強くなってたわよ」


「わたくしのスキルも……通じなかったですもの」


 リタもレティシアもうなずいてる。


 僕もそう思う。


 ラフィリアの部屋は、まともなやり方じゃ突破できなかったからね。


「じゃあラフィリア、またあとで」


「はいです。それと、聖女さま」


『なにかな、ラフィリアくん』


 レティシアの肩で、フィギュアサイズの聖女さまが立ち上がる。


『君もがんばったからね。なにかして欲しいことがあったら言っていいよ』


「マスターたちは、ここまでの旅とダンジョン攻略で疲れているです。これが終わったら、お風呂を用意してあげてくださいです」


『もちろんいいよ。準備しておくね』


「ありがとうなのです。それと聖女さま、もうひとつ」


『なにかな?』


「あたしと感覚共有したゴーレムって、お風呂に沈めておいても大丈夫なのですか?」


『ナギくんと再会したからって暴走しすぎ! なにを企んでるかはっきりわかっちゃうんだけど!?』


 まったくもう、ラフィリアは。


 パワーアップした分だけ、天然さと素直さまで強くなっちゃってるみたいだ……。


 そんなラフィリアをなだめて (お風呂にゴーレムを沈めるのは禁止して)僕たちは出口の先へ。


 ドアの向こうは長い通路。


 そしてその先には、またドアがあった。






「次はセシルのダンジョンだね」


「セシルちゃんは真面目だもん。かなり難易度は高いと思うわ」


「気を引き締めて参りましょう」


 僕とリタとレティシアは手の平を重ねて気合いを入れる。


「それじゃ行こうか。成長したセシルに会いに」


 そうして僕たちは、ダンジョンの奥へと向かったのだった。






いつも「チート嫁」をお読みいただき、ありがとうございます!

書籍版第12巻の発売日が決定しました。7月10日です!

今回も、ほぼ全編書き下ろしでお送りします。

(11巻以降は、ほとんどすべてを新しく書き下ろしています)


『なろう版』とは別ルートに入った書籍版『チート嫁』を、どうかよろしくお願いします!

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新作、はじめました。

「弱者と呼ばれて帝国を追放されたら、マジックアイテム作り放題の「創造錬金術師(オーバーアルケミスト)」に覚醒しました 
−魔王のお抱え錬金術師として、領土を文明大国に進化させます−」

https://ncode.syosetu.com/n0597gj/

魔王の領土に追放された錬金術師の少年が
なんでも作れる『創造錬金術師(オーバー・アルケミスト)』に覚醒して、
異世界のアイテムで魔王領を大国にしていくお話です。
こちらも、よろしくお願いします。
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