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第221話「覚醒。チート嫁第2形態および第3形態(カトラス・フィーン)前編」

「まずは『魂約(エンゲージ)』の方法だけど、これは『能力再構築スキル・ストラクチャー』を使って、僕とカトラスの魔力をまぜあわせれば成立する」


 僕の言葉を、カトラスとフィーンは、ベッドに座って聞いていた。


 ふたりとも、真面目な顔だ。


「そして『結魂(スピリットリンク)』の方は、一定時間『魂約(エンゲージ)』していることが成立条件になる。それと……おたがいの身体を物理的に繋げる必要があるわけだけど」


「…… (ぶんぶんぶんぶん)」


「わかります」


 無言でうなずくカトラスと、納得した顔のフィーン。


「だから、カトラスと『結魂(スピリットリンク)』にまで持って行くには時間がかかるんだ。僕としては、これからなにがあっても大丈夫なように、カトラスをできるだけ強化しておきたい。もちろん『海竜ケルカトル』との約束が優先だから、後回しでもいいんだけど……」


「ボクは、あるじどのと『結魂(スピリットリンク)』したいであります!」


 カトラスはきっぱりと、宣言した。


「これは『海竜ケルカトル』がくれた機会だと思うのであります。そ、それに……魂の結びつきが近ければ……ボクがあるじどのの子どもをいただく可能性も……高くなるような気がするのでありますよ……」


「その通りですわ。あるじどの」


 真っ赤になったカトラスの肩を抱いて、フィーンがうなずく。


「これはあるじどのにとっては実験の機会でもありますもの。奴隷(どれい)を『2段階パワーアップ』できる可能性があるのであれば、せひ、試してみてくださいませ」


「お願いするであります。あるじどの!」


「わかった。じゃあ、やり方を説明するよ」


 僕はカトラスとフィーンに『結魂(スピリットリンク)』までの手順を話した。


 作戦は、第1段階から第3段階まである。


 ふたりにもわかるように、できるだけていねいに話していく。


 カトラスは真っ赤になって聞いていたけど、僕が話を終えると──


「わ、わかったであります。第一段階をはじめるのは、明け方からでありますな?」


「うん。その状態のままメテカルに移動して……って感じかな」


「ぜひ、試してみたいであります!」


 カトラスは僕の手を握った。


 緊張してるのか少し震えていたけど、しっかりと指をからめて、繋いでる。


 それにフィーンが手を重ねた。


「どうぞ、カトラスをお好きにいじってみてください。あるじどの」


「『海竜との約束』と『2段階パワーアップ』のために」


「わかった。じゃあ、やってみよう」


「「おー!」」


 僕たちは宿の部屋で、重ねた手を掲げて──


「とりあえず、今日は早めに休もうか」


「はいであります!」「わかりました。あるじどの!!」


 その後、ボクとカトラスは早めに夕食を済ませて──


 明け方くらいに起きることにして、一緒のベッドで眠ったのだった。








 そして、明け方。


 空がぼんやりと明るくなりはじめた頃、僕とカトラスは目を覚ました。


「よく眠れた?」


「……が、がんばって眠ったであります」


 僕とカトラスは顔を見合わせた。


 それから僕たちは、宿の井戸で水を汲んだ。


 温泉が開いてたから、ついでにお湯も、もらってきた。


 部屋に戻って顔を洗って──寝てる間に汗をかいたから、軽く身体を拭くことにした。


 まだちょっと照れくさいから、背中合わせで。


 僕とカトラスは寝間着をはだけて、布にお湯をつけて、ゆっくりと身体を拭いていく。


「僕はカトラスとフィーンの、どっちと『魂約(エンゲージ)』することになるのかな」


「ボクたちは同一人物でありますよ。あるじどの」


「……そうだったね」


「そうであります」


「いつの間にか、カトラスとフィーンを双子の姉妹みたいに思ってた」


「フィーンが聞いたらよろこぶでありますよ」


「『魂約(エンゲージ)』の間も、フィーンを呼んだ方がいいよね」


「そうでありますね。途中でボクが引っ込んじゃうと困るでありますから」


「じゃあ、呼んでみて」


「今はだめであります」


「……そうなの?」


「ボクが服を脱いでおりますから……今呼ぶと、フィーンも服を着てない状態で召喚(しょうかん)されるであります……」


「……そうだったね」


「あるじどのがお望みなら……それはそれで」


「それはまだ早いかも」


「まだ、でありますか」


「……僕の理性が決壊(けっかい)したら困るからなぁ。せめて、今日の夕方までは」


「ボクのは……もう、決壊しかけてるでありますが……」


 ことん、と、カトラスの背中が、僕の背中に触れた。


「あるじどのとひとつになるのは……ボクにとって、よろこびでありますから」


「ありがと。カトラス」


 なんだか、すごく照れるけど。


 カトラスと触れ合ってる背中が、不思議なくらい熱くなってる。


 どっちの体温かよくわからなくて、僕とカトラスは背中合わせのまま、なんとなく笑ってしまう。


「以前、フィーンに、こんなことを言われたことがあるのであります」


「どんなこと?」


「ボクはあるじどののための(さや)になるのだと……」


「そんなこと言ってたの!?」


「言ってたのであります。ボクはずっと、その意味がわからなかったのでありますが……最近やっと……その」


 ……フィーン、そんなこと言ってたのかー。


 でも、そのフィーンは、カトラスでもあるわけで……。


 結局、彼女は最初から、僕たちがこうなるってわかってたのかな。






 それから──


 身体を()き終わった僕とカトラスは、ベッドに座った。


 いつも『能力再構築』するときのように、僕の前にカトラスが座って、壁に背中を預ける格好だ。


 それからカトラスは、床に置いたアーティファクト『バルァルの胸当て』に触れて──


「来て欲しいであります。フィーン」


「──待ちかねましたわ」


 ふわり、と、寝間着姿のフィーンが現れる。


 ぼーっとした顔のカトラスと違って、フィーンは余裕がありそうな顔してる。


 同一人物というより、仲の良い姉妹みたいだ。


 となると、やっぱりふたり同時に『魂約(エンゲージ)』をするべきだな。


 そのための方法は──


「まったく、カトラスったら、だらしないですわね」


「フィ、フィーン?」


「あるじどのと繋がるときはいつもこうなんですもの。あたくしのように、もっと落ち着いて──」


「あ、フィーン、ちょっとごめん」


「? どうしましたの? あたくしに触れて──って……ちょ? あるじどの。いきなり──あ……んんんっ!?」


 びくん、と、フィーンの身体が()ねた。


 僕がフィーンの胸に触れて、魔力を送り込んだからだ。


『能力再構築』は、もう起動してある。


 ウィンドウには、カトラスの『豪・中断盾撃キャンセリング・シールドチャージ』と、フィーンの『即時神聖器物掌握アーティファクト・ルーラー』が表示されてる。


 僕はそれに指を当てて、ゆっくりと魔力を送り込んでいく。


「……い、いきなりですわ。あるじどの、カ、カトラスとするのではなかったのですが……あっ。んっ」


「せっかくだから、ふたり同時に『魂約(エンゲージ)』しようかと思って」


「ふ、ふたり……って、あたくしはカトラスの別人格ですのよ。あたくしのことなんて……や、はぅっ」


 僕は『即時神聖器物掌握アーティファクト・ルーラー』の概念を、少しずつずらしていく。


 僕の魔力で奴隷(どれい)のみんなを満たす方法には色々ある。


 経験からいうと、こんなふうに『概念(がいねん)』の隙間から魔力を送り込むのが、一番効率がいいみたいだ。


 今回は『魂約』と『結魂』を連続してすることになるから、魔力供給をちょっとだけ、強めにしよう。


「魔力、ちゃんと行ってるかな? フィーン」


「は、はい……で、でも、あたくしじゃなくてカトラスにして差し上げてください……や、あ、あたくし、カトラスのお姉さん…………みたいなもの……なのに……こんな……」


 フィーンは小指をくわえて、涙目で首を振ってる。


「……あたくしは別人格で……カトラスのおまけなのに……しあわせをいただくのは…………ふぁ」


「僕にとってはフィーンも大事な仲間だってば」


「…………だ、だからって」


「そもそもフィーンがカトラスの一部なら、魂だって共有してるかもしれないだろ? だったら、フィーンもちゃんと、僕の魔力で満たしておかないと」


「だ、だからって……こんな。あ、あたくしは見られるのは平気ですけど……触れられるのに弱い……んっ、ですっ……んくっ。ふわぁ……ん」


 フィーンは細い身体を、ぎゅ、っと縮こまらせる。


 でも、僕の手は放さない。


 僕の手に自分の手を重ねて、荒い息をついてる。


 フィーンの力がゆるむのに合わせて、『即時神聖器物掌握』の『概念(がいねん)』も動くようになってきた。


 再構築したスキルの『概念』は外せないけど、ずらしたり、揺らしたりするくらいはできる。


 フィーンのこれも、ゆるんで、魔力を飲み込みやすくなってる。


「…………や……あるじどの……深いところ、さわりすぎ……」


 ゆるめて、魔力を込めて──っと。


 久しぶりに、魔力伝達用の『魔力の糸』を出して、『概念』に巻き付けて──


 軽く引っ張ってみると──


「…………はぅ。あるじどの、そ、それ……つよぃ……あ」


 ──よし、ほどけない。ちょうどいい感じだ。


 あとはこのまま、魔力を強めに送り込んで。


 全体になじむように、『即時神聖器物掌握アーティファクト・ルーラー』の概念を、指でつついて、ずらして──


「…………んぁ」


 ゆっくりとスキルをなでて、魔力の通り具合を、確かめて──


「も…………もぅ……あるじどの。カトラスの前で……こんな……」


 フィーンは壁に背中を預けて、ぺたん、とベッドの上に座り込んでる。


 ぐったりと両脚(りょうあし)を投げ出して、荒い息をついてる。


 ときどき、爪先をびくっと震わせて、(ひざ)を閉じたり、開いたりを繰り返してる。


 首筋も額も汗びっしょりだ。


「大丈夫? フィーン」


「……はぃ……ひゃい……」


 フィーンは恥ずかしそうに横を向いて、


「……あるじどの……どうしてあたくしから……?」


「魔力体のフィーンの方が、僕の魔力を受け入れやすいと思ったからだよ」


 僕は奴隷(どれい)の状態を示すステータスモニターを出した。


 カトラスのものも、フィーンのものも表示されてる。


 当たり前だけど『能力再構築スキル・ストラクチャー』は、カトラスとフィーンをそれぞれ個人として認識してる。


 そして、フィーンの身体は僕の魔力を受け入れやすい。


 フィーンの身体は、『バルァルの鎧』で作った魔力体だから。


 実体はあるけれど、魔力を受け入れる能力がかなり高いみたいだ。


「フィーンには、これから今日の午後まで『魔力の糸』で僕と繋がっててもらう」


「……ふぇ……え……あぁ……えええええ?」


「さっき説明した通りだよ。『魂約』が終わっても、しばらくはそのまま」


「……あ、ああ。そうでしたわね……ん。ぁ……はぁ」


 僕が手を取ると、フィーンの身体がまた、びくん、と跳ねる。


 かなり、魔力に敏感になってるみたいだ。


「短期間で『結魂』するために……繋がりを限界まで高める……そういうお話だったと……でしたら……あ……あたくし…………うれし…………んっ」


「……フィーンの方は、魔力は十分かな」


 ウィンドウを見ると、フィーンの方には僕の魔力が行き渡ってる。


 次はカトラスの番だ。


「…… (ぽーっ)」


「……カトラス?」


「ふぇ!? い、いえ、なんでもないであります。なんでもないでありますよ!?」


「……あれ?」


 ウィンドウを見ると……カトラスの方も、20%くらい、僕の魔力で満たされてる。


 いつの間に?


「まだスキルを表示させただけなんだけどな……」


 そう思って、カトラスのスキル『豪・中断盾撃』に手を伸ばすと──


「──や、あ、あるじどの。今、触れるのは駄目であります。ちょ……今はあちこち……ぴりぴり……んっ。やっ、ああっ!」


 びくん。


 僕が首筋に触れると、カトラスの背中が大きく震えた。


 カトラスはそのまま何度も(ひざ)をこすりあわせて、それか──くたん、と脱力する。


「…………ふぇぇぇん。これ、なんでありますかぁ。いつもと……ちがって……ボクのあちこちが、あるじどのに抱きしめられてる感じでありますよ…………」


「僕の魔力がフィーン経由で流れ込んでるのかな?」


 試しに、フィーンの方に多めに魔力を送ってみると──


「……ひぁっ? ちょ……あるじどの。お、落ち着いたばかりなのに……はぅ」


「……ま、また。ちょ……まだ、今はぴくぴくするでありますぅ……」


 やっぱりだ。


 カトラスの中にある僕の魔力が、23%に増えた。


 フィーンはもう100%、僕の魔力で満たされてる。


 だから余った分は、カトラスの方に流れ込む、ってことか。


 となると──


「……カトラス」


「…………ふわ……あ、あるじどの……」


 カトラスが、うつろな目で、僕を見た。


 小さな口が、ぱくぱく、と、開いたり閉じたりしてる。


 顔は耳たぶまで真っ赤になって、灰色の髪が汗で張り付いてる。


「カトラスの体力を考えると……ここで一気に終わらせて、第2段階に入った方がいいんだけど……いいかな?」


「第2段階……でありますか……」


 カトラスは考え込むように、小指を唇で挟んだ。


 それが自分のものではないことに気づいて、慌てて放して、それから──


「第3段階への下ごしらえで……ありますね。いいであります。一気に、してくださいであります……」


「大丈夫?」


「ボクは元、騎士候補生(きしこうほせい)でありますよ?」


 カトラスはうるんだ目のまま、にやりと笑った。


 僕が額をなでると、くすぐったそうに目を細めて──


「……これくらいのこと……たいしたことないであります。あるじどのにいただく『しあわせ』が……ちょっと強くなるだけでありましょう……だったら」


「わかった。じゃあ、いくよ。カトラス」


「……はい、来て下さいであります……あるじどの」


 カトラスはじっと、僕の目を見ていた。


 僕はうなずき返して、彼女の『豪・中断盾撃キャンセリング・シールドチャージ』に、一気に魔力を注ぎ込む。


 さらに『魔力の糸』で繋がったフィーンにも魔力供給開始。


「…………あ、あ……ちょ……これ…………また……ぴりぴりが……ぁ」


 カトラスの背中が、ぴん、と反り返る。


 ウィンドウに表示されるカトラスの情報──彼女の中にある僕の魔力が、一気に上昇していく。


「……あ、あああああっ! これ……ボク……まっしろに……ふわぁ…………あ、ああああっ」


「……ちょ、カトラス。がまんなさい──感覚が……あたくしの方まで……あ、やだ……これ……すごい……ん、んんんんんっ!!」


 カトラスとフィーン──ふたりの身体が、大きく跳ねた。


 ぴちゃり、と、汗がシーツに落ちていく。


 僕はふたりの方を見て、止めるかどうか視線で訪ねる。


 でも、カトラスとフィーンは、迷わず首を横に振った。


「…………最後まで……してほしいであります」


「…………こ、ここでとめてしまったら……へん……にな」


 まるでシンクロしているかのように、カトラスとフィーンは僕にしがみつく。


 そうして、ふたりが、ぎゅ、と僕を抱きしめて、放して、


 それがしばらく続いたあと──








「これで、魔力の交換は充分だ」


 すっかり脱力したカトラスとフィーンの背中に、僕は触れた。


 ふたりとも汗びっしょりだ。僕たちの足下でシーツがねじれて、湿った音を立ててる。


(ちか)いの言葉を──いいかな」


 僕が言うと、カトラスはうるんだ目で、こっちを見た。


 手を伸ばして、僕の手を掴んで、それからフィーンと手を重ね合わせる。


「はい、あるじどの……ボクに……くださいであります」


「わかりましたわ……魂の約束をいたしましょう……あるじどの」


 僕たちは深呼吸して、『魂約(エンゲージ)』の誓いの言葉をつぶやきはじめる。




「僕、ソウマ=ナギは、カトラス=ミュートラン、フィーン=ミュートランとの、消えない(えにし)を願う」


「ボク、カトラス=ミュートランは、あるじどのとの永久不滅(えいきゅうふめつ)(えにし)を願うであります」


「フィーンも同じです。どんなかたちであっても、あるじどのとの縁を」


「「「互いの運命と血が邪魔をしても、それに負けないくらいの結びつきを」」」


 そうして僕たちは顔を見合わせてから、ゆっくりと──




「「「魂の結び目の約束を──『魂約(エンゲージ)』」」」







 カトラスとフィーンの胸の中心から、光の輪が浮かび上がった。


 それはふたりの間でひとつになり、小さなひとの姿になる。


 灰色の髪の、ちょっと自信がなさそうで、でも、すぐに小悪魔みたいな表情に変わる。


 カトラスとフィーン、ふたりの魂が合わさった姿だ。




『ふあんていなたましいをすくいだしてくれたひと。ささえあうひと』




『「けいやく」よりも、ふかいえにしを、あなたに』




『「わたしたち」をお願いします。ささえあうひと』




 カトラス・フィーンの魂は、自分の髪を引き抜いて、僕の薬指に巻き付けた。


 それから僕の髪を2本、引き抜いて、カトラスとフィーンの薬指に。




『「わたしたち」には、罪はないから』




『「わたしたち」を流れる血に「わたしたち」が苦しまないように、へいおんのちに……ともに』




 そう言って、僕に向かって、ぺこり、と頭を下げて──


 魂はまたふたつに分かれて、カトラスとフィーンの胸に吸い込まれていった。





魂約(エンゲージ)』、成功だ。


 カトラスとフィーンのステータスには、新しいスキルが追加されてる。





聖騎士変化(パラディンモード)』(魂約スキル(エンゲージ・スキル)



 騎士を目指していたカトラスの願いが結実したもの。


 発動すると身体のまわりに『聖騎士の鎧』が形成される。


『聖騎士の鎧』は魔力で作られており、これが破壊されるまで、カトラスにダメージが行くことはない。


『聖騎士の鎧』の展開中は防御力・対魔法能力が上昇する。


 さらにパーティメンバーから『魔力』『神聖力』を注入してもらうことで、『魔力の鎧』を修復することもできる。





 ──すごい。


 要はカトラスのまわりに『鎧型(よろいがた)の魔力バリヤー』が展開されるってことだよな。


 それが破られるまで、カトラスはノーダメージ。


 さらに魔力を注ぐことで、鎧を修復できるって……RPGだったら最強タンクになれるよ。


 さすが『魂約』スキルだ。桁外れに強いな……。




 フィーンの方もスキルが増えてる。こっちは──




神聖器物探索アーティファクト・サーチャー』(魂約スキル(エンゲージ・スキル)



 周辺にある『神聖器物(アーティファクト)』の位置を感じ取ることができる。


 これまでもフィーンは、視界に入ったものが『神聖器物』かどうか判断する能力があったが、これからは自分を中心とした、半径数十メートルに『神聖器物』が存在するかどうかを感じ取ることができる。


 基本的に壁や障害物、宝箱などでは妨害されない。




 ──ふたりともすごすぎない!?


 これ、ダンジョンとかで使ったら宝箱の位置がまるわかりになる奴だ……。


 わかるのは『神聖器物』だけだけどさ。


 でもたとえば、ダンジョンの最奥に『神聖器物』の宝箱があって、その位置がわかるとしたら……そこまでのルートも逆算できるってことだよな。


 さすが『神聖器物』能力持ちのフィーン。たいしたもんだ。




 僕の方は──




能力増強(スキル・ブースター)』 (魂約スキル(エンゲージ・スキル)




 対象のスキルから『レベル』だけを抜き出すことができる。


『レベル』を抜き出されたスキルは、概念崩壊(がいねんほうかい)して消滅する。


 抜き出した『レベル』は『能力再構築』の際に、再構築スキルに追加することができる。


(例えば『ドブそうじLV1』の『LV1』を抜き出し、『能力再構築』の際に使えば、再構築したスキルはLV1ではなく、LV2になる)


 抜き出したレベルは、1つまで保存しておける。




 ……またすごいのが出てきた。


 要は、スキルの『概念』のように『レベル』だけを抜き出しておけるってことか。


 で、それを『能力再構築スキル・ストラクチャー』で再構築スキルを作るときに使える、と。


 前に『概念』だけを取っておける『能力抽出(スキル・ストッカー)』を手に入れたけど、それとは別にストックできるわけだ。


 地味だけど、意外と使えそうだな。




 さてと。


 フィーンには『魔力の糸』が、まだ繋がってる。


 これは夕方まで、このままにしておこう。


 カトラスは、ちょっと休ませた方がいいな。


 でも、胸に手を当てて……できるだけ魔力の繋がりは維持して、っと。


「…………ふぇ、あるじどの」


「休んでていいよ。カトラス」


「…………いいえ」


 僕の腕の中で、カトラスは首を横に振った。


「まだ、終わりではないでありますよ。あるじどの。ボクを『2段階パワーアップ』させてくださるのでありますよね?」


 カトラスは、ぐっ、と拳を握りしめて、


「そ、それに……さっきはちょっと……あるじどのがくださる『しあわせ』に……押し負けて……頭がまっしろになってしまったでありますが……次はもっと、がんばるであります。だから……してくださいで、あります」


「……うん。わかった」


 僕はカトラスの髪をなでた。


 カトラスは子猫みたいに、頭をこすりつけてくる。


 呼吸は……落ち着いてる。この分なら大丈夫かな。


「じゃあ、続きをはじめるよ?」


「はい。来てください、あるじどの」


 カトラスがうなずいたから、僕は自分とカトラスの中に、準備しておいたスキルをインストールした。


 そして、カトラスの中に触れて、僕は──




「発動! 『高速再構築クイックストラクチャー(かい)』!!」




 カトラスと、さらに深く繋がるためのスキルを、発動したのだった。




今回覚醒したスキル (の一部)


聖騎士変化(パラディンモード)


騎士を目指していたカトラスの思いによって覚醒したスキル。

発動すると、魔力によって純白の鎧が作り出される。 (しかもかっこいい)

魔力でできた鎧なので軽く、動きの邪魔にもならない。


けれどその防御力はすさまじく、大抵の武器や魔法は防いでくれる。

ただ、強力な分だけ、1度使うと再チャージまでには時間が必要。


ちなみに『聖騎士変化』は「せいきしへんげ」・「パラディンモード」どちらの名前を呼んでも発動できます。かっこいいと思う方を使いましょう。



今回のお話は長くなってしまったので、2話に分けることにしました。

第222話 (後編)は、今日の9時くらいにアップする予定です。 

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新作、はじめました。

「弱者と呼ばれて帝国を追放されたら、マジックアイテム作り放題の「創造錬金術師(オーバーアルケミスト)」に覚醒しました 
−魔王のお抱え錬金術師として、領土を文明大国に進化させます−」

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魔王の領土に追放された錬金術師の少年が
なんでも作れる『創造錬金術師(オーバー・アルケミスト)』に覚醒して、
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こちらも、よろしくお願いします。
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