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第209話「あたらしい『高速再構築』スキルで、安全快適に奴隷少女を『調整』してみた」

 ──依頼者 ライラ=ティノータス視点──



 山の向こうにある『墨色(すみいろ)の谷』への巡礼(じゅんれい)が、自分の一族の成人の儀式だ。


 魔物の出る山を越え、谷で採取を行うことにより、成人として認められる。


 我が一族のほとんどは、エルフとハーフエルフで構成されている。『墨色(すみいろ)の谷』に向かうのは、一族の本能のようなもの、と長老は教えてくれた。


 山の裏道(うらみち)は、なだらかではあるが、魔物が出る。街道に比べて歩きにくい。


 しかし自分の一族は、山間の隠れ里で過ごしてきた。山歩きは慣れている。この程度のなだらかな山越え、軽くこなす自信がある。


 むしろ護衛の冒険者たち──彼らのペースに合わせて、ゆっくり歩くのに苦労するだろう。


 自分の足に追いつけるのは、山や森で生きるエルフやダークエルフくらい。


 人間の冒険者たちが、ついてこられるものだろうか……?




 そんなことも思っていた時期もありました。すいませんでした……。




 てくてくてくてくてくてくてくっ!!




 そして今、自分──ライラと、護衛の冒険者たちは、山道を進んでいる。


「なるほど。これがライラさんの一族に伝わる裏道ですか」


「……お、思っていたより、歩きやすいでしょう」



 てくてくてくてくてくてくっ!



「それに、これだけ離れていれば、(とりで)からは見えませんよね」


「……はぅ。そ、その通りでしょう……イリ──いえ、謎シーフメロディにとっては、この程度の道……んっ。どうってこと……ないので……」



 てくてくてくてくっ! しゅたたっ!



「意外っ! 不可解! どうしてあなたたちは自分の足についてこられる!? どうして自分が追い立てられるような格好になっているのか──っ!?」


 山道を歩きながら、思わず叫ぶライラ=ティノータスだった──。





 ──ナギ視点──




『北の町ハーミルト』を出発して、1時間後。


 ハーフエルフのライラさんを先頭に、僕たちは山道を歩いていた。



 てくてくてくてくてくてくてくてくっ!!



 うん、思ってたより順調だ。


 ライラさんを先頭に、僕たちは2列縦隊で進んでいる。


 僕とイリス。カトラスとセシル。アイネとラフィリアの順番だ。


 ライラさんが案内してくれたのは、普通の山道からは少し離れたところにある間道(かんどう)だった。彼女の一族には、隠れた裏道の情報が伝わっているらしい。


 道は少し狭いけど、地面は意外としっかりしてる。登りも、そんなにきつくない。


 なので、僕たちは『山歩き』スキルを活用して、普通に歩き始めたのだけど──



 てくてくてくてくてくてくてくてくっ!!


 しゅたたたたったたたたたったたたたっ!!



「く、屈辱(くつじょく)! 山道に慣れた自分が負けるわけには──っ!!」


 先頭を歩くライラさんは、徐々に肩で息をしはじめだったのだった。





「もうちょっとペースを落とした方がいいんじゃないですか? ライラさん」


 僕は言った。


 ライラさんは足を止めずに振り返り、イリスの方を指さした。


「じ、自分は問題ない。それよりそっちの娘を心配するがいい……」


「……ん。あぅ。はふ……ぁ」


「見よ。息があがっているぞ。無理をしているのではないか?」


「…………いえ。はぅ……あ。問題ございません。イリス……いえ、謎シーフのメロディ、足取りは確かでしょう……」



 てくてくてくてくてくっ。



 イリスは軽やかな足取りで進んでいく。


 荷物はアイネの『お姉ちゃんの宝箱』に入ってるから、ほとんど手ぶらだ。


 靴は『北の町ハーミルト』で仕入れた、山歩き用の丈夫なもの。


 まるで、ここがただの平地でもあるかのように、イリスはサクサクと足を進めていく。


「……あなたがたは……本当にこの道のことを知らなかったのか……?」


 ハーフエルフのライラさんが目を丸くしてる。


「なんでそんなにスムーズに進めるのだ? そんなに山に慣れているのか、あなたたちは?」


「「「「「さー」」」」」


 僕、セシル、アイネ、ラフィリア、カトラスは声をそろえた。


 その間も足は止めない。


 ライラさんは村の伝承で道順も歩き方も知ってる。だから先頭を歩いてるんだけど……常にその背後には僕とイリスが迫っている。


 イリスの足取りはまったく迷いがない。小さな足は地面をしっかりと踏みしめ、安定した部分を選んで進んでる。下半身はしっかりとしていて、でも、上半身はゆらゆら揺れてるという謎歩行。


 顔は真っ赤で、つないだ手のひらは汗びっしょりだ。


 時々イリスは「……んっ」と、声を漏らして、僕の手を握りしめる。


 そのたび僕はイリスの中にあるスキル『華麗散策(かれいさんさく)』をチェックする。


 スキルはちゃんと効果を発揮してる。


 4概念チートな『山歩き』スキルだから、山道も楽々だ。


高速再構築クイックストラクチャー(かい)』で作った『華麗散策(かれいさんさく)』の概念(がいねん)は、安定に時間がかかるけど、概念(がいねん)のずれも少ない。歩きながら指先で、ずれた概念を直すだけで元に戻る。


 だからイリスと手を繋ぎながら、少しずつ直してるわけだけど──


「……イリス、体調はどう?」


 僕はイリスの耳元でささやいた。


「…………はぅ……まったく、問題ないでしょう……はいぃ……」


 小さな指が、まだ、ぎゅっ、って、僕の手を握りしめる。


「いつも『再構築』していただくときに比べれば……ぜんぜん……へいき……。ただ……お兄ちゃんとひとつになってる感覚が……ずっと……続いて……坂道を登って、降りて……また登る……みたいで……」


「つらくはないんだよね?」


「……いえ、むしろ……ふわふわして……お兄ちゃんとの境目が消えているようで……しあわせ……」


 イリスは僕を安心させるみたいにほほえんだ。


 よかった。


華麗散策(かれいさんさく)』も役に立ってるし、イリスも調子良さそうだ。


「わ、わからない。自分は山歩きには慣れている。なのに……どうしてあなたたちはぴったりくっついてこれるのだ!?」


 先頭を歩くライラさんは、びっくりしっぱなしだけど。


「……あ、愛の力……でしょう」


 ぎゅ、ぎゅぎゅっ。


 イリスは小さく背中をふるわせて、また、僕の手を握りしめる。


 僕とイリスの視界には、矢印と数字が浮かび上がってる。


 これが4概念チートスキル『華麗散策(かれいさんさく)』の効果だ。


 このスキルはリタの『華麗逃走(かれいとうそう)』と同じように、視界にナビが表示される。歩きやすいコースを示す矢印や、疲労度の少ない歩幅や、安定した足場まで。僕とイリスはその指示の通りに歩いてるだけだ。


 だから僕も全然疲れてない。山なんかほとんど歩いたことないのに。


「セシルたちは大丈夫?」


 僕は後ろに向かって声をかけた。


「問題ありません。わたしは元々、森で暮らしてましたから」「快適なの」「歩きやすいですよぅ」「あるじどのたちと同じコースを歩いているでありますから」


 セシル、アイネ、ラフィリア、カトラスの元気な声が返ってくる。


 僕がカトラスにナビを送り、みんなその通りに歩いてるからね。


華麗散策(かれいさんさく)』で表示されるナビを『真・意識共有マインドリンケージ・トゥルー』で送れば、みんなもそれを利用できる。ナビが見られない人は僕とイリスの後を、そのままついてくればいい。僕たちが進んでいるのは『疲労度最小(ひろうどさいしょう)コース』だから、同じところを進めば、みんなも疲れにくくなる。


「……むむっ。この先は砂利道か。数年前に巡礼(じゅんれい)に来た者の記録と、少し違っているようだ」


 不意にライラさんがスピードをゆるめた。


「おっと。足を取られてしまった。滑りやすいから皆さんも気をつけ──」




 てくてくてくてくてくてくっ!! さささっ!




「……むむ。水たまりだ。地面がぬかるんでるから、乾いてるところを選んで──」




 しゅぱっ。しゅぱぱっ。てくてくてくてくてくっ!!




「き、木の根っこかあちこちに……」




 さっ。さささっ。てくてくてくてくっ!!




「……こわい。プロがいる。我が一族を超えた、山歩きのプロがこんなところに……」


「…………おにいちゃ、の。パーティにとっては……あたりまえ……でしょう……」


 ぎゅ、ぎゅぎゅっ。


 イリスはまた、汗ばんだ手のひらで僕の手を握る。


 僕は『高速再構築・改』のウィンドウを見た。





華麗散策(かれいさんさく)LV1』


『山山道』を『ききれれいい』で『すばやく確実実』に『歩くく』スキル





「……『概念』が少しずれてるね」


「──それでは……また……してください……おにいちゃん」


「立ち止まった方がいい?」


「それだと……みなさまに…………イリス……メロディとお兄ちゃんが……ひみつのことをしてるのが……ばれてしまいますから」


 イリスは恥ずかしそうに、口元を押さえた。


「身体は『おーとぱいろっと』で、勝手に歩くでしょう……だから、このまま……この、メロディのなかを……」


「まぁ、ちょっとずれてるだけだからね」


 僕は『華麗散策』の概念を、軽く指で押した。


「…………はぅぅ」


 イリスの肩が、びくん、と震えた。


 もうちょっと強く、かな。


 ぐいっ。


「……んっ。はぁ……」


『概念』が元に戻り、イリスが胸を押さえてため息をつく。


「…………時間はかかりますが……いつも……していただくのと違って、不思議な感覚でしょう」


「そうなの?」


 てくてくてくてくてく。


 歩きながら僕たちは言葉を交わす。


「……ええ。いつもは……イリスとおにいちゃんの魔力が……いきおいよくまざりあう感じなのですが……今回は……静かに溶け合っていくような……気がします」


「……『魂約(エンゲージ)』の時みたいな感じ?」


 てくてくてくてくてく。てくてく。


「……は、はい。今も……お兄ちゃんとの境目がなくなってるような……気が……いたします……」


 ぎゅっ。ぎゅぎゅっ。


 スキルの『概念』が震えるたびに、イリスが手に力をこめる。


『調整』しながら歩いても、イリスのペースはまったく落ちない。


 ただ、ときどき、ぴくん、と肩をふるわせたり、指をくわえたりしてるだけ。


高速再構築クイックストラクチャー(かい)』は、移動しながらスキルを調整できる。ただし調整時間は通常の数倍で、その間奴隷(どれい)のみんなは『僕とずっと繋がってる感覚が続く』だけ。


 便利だ。


「今度から『再構築』するときは、これをデフォルトにしてもいいかも」


「い、いけません……お兄ちゃん」


 イリスが真っ赤な顔で、僕を見た。


「お、お兄ちゃんと……まりょくで……つながったまま歩くのが……当たり前になったら……イリスのじょうしきがほうかいしてしまいましょう……」


「大丈夫。将来的に僕たちは、働かない生活をするつもりだから」


 僕とイリスは手を繋いだまま、「てくてく」進んでいく。


「……めんどくさい時は外に出ないつもりだし……多少、常識は無視してもいいんじゃないかな」


「…………もう。お兄ちゃんは」


 てくてくてくてくっ!


 歩きながら振り返ると、セシル、アイネ、ラフィリア、カトラスも、のんびり後をついてきてる。


 問題なしだ。


 イリスがスキル実験をさせてくれたおかげで、山道も余裕になってる。


 その分、僕がイリスをサポートするのは当然だよな。うん。


「…………お、おぼえていてくださいませ。しょうらい……ちゃんとお兄ちゃんに……常識外のお願い……いたしますからね」


 ぎゅ、ぎゅぎゅっ。


 イリスはまた、ちっちゃな手に力をこめる。


 僕はイリスのスキルの、ずれた『概念』を、とんとん、と叩く。


 とんとん、てくてく。


 とんとん、てくてく──って、まるで歩調と指先がリンクするみたいに、リズミカルに旅は進んでいく。


 僕の歩調とイリスの歩調がシンクロしていって──


 いつの間にか、後ろを歩くセシルたちも、それとぴったり合うようになり──


 まるで平地を歩くみたいに、旅はスムーズに進んでいって、このまま一気に目的地まで行けそうな気がしたところで──


 



「ちょ、ちょっと待って欲しい……」





 前を歩いてたライラさんが立ち止まった。


 全身汗だくで、肩で息をしている。


「なんなのですかあなたたちは。ただの冒険者のはずなのに、どうして自分のペースについてこれる……の……もう……げんか……い」


 ぺたん。


 ライラさんは、地面に座り込んだ。


「す、少し休憩……させてください。今日の行程の8割は来ました……から」


「「わかりました」」


 僕とイリスは同時にうなずいた。


 ……って、あれ?


 イリスの方を見ると、イリスも同じように僕を見る。


 同時に首をかしげる……タイミングを測ったみたいに。


 というか、イリスがなにをしたいのか、なんとなくわかる。僕が水筒に手を伸ばすと、イリスは口を開けて僕を見る。水筒を口に当てると、僕が傾けるのに合わせて、こくん──って。


 これってもしかして、僕とイリスがシンクロしてるのか?


「……『高速再構築・改』って、僕とみんなの……」


「……はい。お兄ちゃんと奴隷の『合体』を強める効果がありましょう……」


 なるほど。


 ただの『高速再構築』のアッパーヴァージョンじゃなかった。


『高速再構築・改』は、奴隷と離れた状態でスキルを『調整』できる。つまり、それだけ繋がりが強いってことになる。


 それだけじゃない。


 よく見ると、僕のスキルリストに、イリスのスキルが、うっすらと浮かび上がってる。


 繋がり続けることで、イリスのスキルを借りることもできるのかもしれない。


 これは、あとで実験してみよう。


「…………あなた方は、本当に余裕がありそうだな……」


 水を飲みながら、ライラさんが僕とイリスを見ていた。


「……まだ、今の状態で、行けるのか?」


「は、はい…………まったく問題ありません。あったかくて……満たされてて……ずっと今の状態を続けても……いいくらいでしょう」


 イリスは、ことん、と、僕の肩に頭を乗せて、そう言った。


「…………叶うなら、このまま夜まで、ずっと……」


「あなた方がすごいパーティなのはわかった。勘弁(かんべん)してくれ……こちらの体力が持たないのだ……」


 ライラさんはそう言って、頭を抱えたのだった。




────────────




「ここが、今日のキャンプ地か」


 僕たちは昼過ぎに、山の中にある湖にたどりついた。


 木々に囲まれた場所で、まわりにはなにもない。ただ、遠くにぼんやり、砦の影が見えるくらいだ。


「紹介する。ここの湖は地熱で温まっていて、汗を流すのにちょうどいい」


「温泉みたいなものですか?」


「同意する。我が一族が、巡礼の途中で身体を清めるのに使っている……のぞくなよ」


「のぞきませんよ」


 ライラさんは、じろり、と僕を見た。


 エルフのセシルとラフィリアを奴隷化してるんだから、ハーフエルフで『エルフ萌え』のライラさんは警戒するよね。


「アイネ。一休みしたら天幕(テント)を出してくれる?」


「了解なの。その前に食事の準備をするの」


「はい。わたしがお手伝いします!」


「あたしも手伝うですよぅ」「ボクもであります」


「ラフィリアとカトラスは、先に汗を流してきていいよ。イリス……じゃなかった、メロディも一緒に」


「…………はう……」


 イリスは僕の背中にぴったりとくっついてる。


華麗散策(かれいさんさく)』のおかげで疲れてはいないけど、汗びっしょりだ。


 食事の前に、水浴びした方がいいよね。


「……おにいちゃ……おにちゃ……はい、謎シーフメロディは、からだ、あらってきます」


「……だいじょうぶ? メロディ」


「…………へっちゃら……まだ……おにいちゃと、まりょく……つながってる……だけで」


 僕とイリスは、ずっと繋いでた手をほどいた。


 イリスは軽く「んっ」とみじろぎして、ラフィリアとカトラスと一緒に歩き出す。


 ……大丈夫かな、イリス。まだ『高速再構築・改』の『再構築』ボタンが出てないからなぁ。


 そろそろ、仕上げになってもいい頃なんだけど。


「メロディちゃん、ちょっと様子がおかしかったの」


 アイネが、僕の方を見た。


「なぁくんがあげた『華麗散策(かれいさんさく)』のおかげで、疲れてはいないはずなのに……?」


「そうですね。不思議と……『しあわせ』がずっと続いてるような顔をしてました」


 するどいな。アイネもセシルも。


 イリスの希望で、みんなには『「華麗散策」は僕がひとりで再構築した』って言ってあるんだけど、このままだとバレるかもしれないな。


「…………って、あれ?」


 ふと見ると、『高速再構築・改』のウィンドウが点滅してた。


 画面下に、『再調整』のボタンが出てる。


 すぐに『再調整』しよう。それでイリスも落ち着くはずだ。


「メロディ──っ。今、大丈夫──っ!?」


 僕はイリスたちが水浴びに行った方に向かって叫んだ。




 しばらくして──




「…………ふ、ふぁい。だいじょぶでしょう──!」


「メロディさまはあたしが見てますよぅ」


「ボクも、剣は手元に置いてあるであります!」


 水音とともに、イリスたちの返事が返ってくる。


 ……うん。ラフィリアとカトラスが一緒なら安心だ。


 早めにイリスを楽にしてあげたいからね。


 じゃあ──みんなに気づかれないように、小声で、と。




「…………『華麗散策(かれいさんさく)』を再調整する。実行、『高速再構築クイックストラクチャー・改』──」





 それから、しばらくして──





 ととととととっ。



 ん?


 布を身体に巻いただけのイリスが走って来た。


 全身、ゆでだこみたいに真っ赤になってる。一体なにが──?


「お、おおおおおお、おにいちゃんっ。ど、どうして、師匠(ししょう)とカトラスさまの前で、し、しちゃうのでしょうかぁあああっ!?」


「え? だって……『高速再構築・改』は……負担が少ないはずだけど……」


「イ、イリスもそう思っておりました……けれど……」


 イリスは顔を真っ赤にして、うつむいて──


「…………さ、さ、さいごの『再調整』は……いつもと…………おなじで……イ、イリ……いえ、メロディは、師匠とカトラスさまの前で…………あ、あのような……」


「…………ごめん」


 そういえばさっき、イリスはラフィリアたちと一緒に水浴びしてたところで……。


 …………どうなっちゃったんだろう……?


「はい! マスター、それはですねぇ」


「師匠──っ! 口止めいたします! 全力で師匠(ししょう)を口止めいたします──っ!」


 必死にラフィリアの口を押さえるイリス。


 そんなわけで──




 イリスの身体を張った実験により『高速再構築・改』の強さと危険性が確認できたのだった。




「しばらく禁じ手にしようかな……」


「い、いえ。嫌ではありませんでしたので……」


 着替えを終えたイリスは、僕の隣に腰を下ろした。


 それから、こほん、とせきばらいをして、


「……お兄ちゃんとふたりで眠るときなどに、使っていただければ」


「そうなの?」


「『魂約(エンゲージ)』のときと、同じ状態でしたので。きっと、良い夢が見られることでしょう」


「わかった。じゃあ、うちに戻ったらね」


「約束でしょう」


 僕とイリスは、そんな約束を交わした。


 それからみんなでご飯を食べて、交代で周囲を警戒することにしたのだった。






いつも『チート嫁』を読んでいただきまして、ありがとうございます!


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どちらも、よろしくお願いします!

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