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第202話「番外編その16『自重しないチート嫁による、双子島のすごしかた(後編)』

「いちゃいちゃ回」後編です。


木の実を回収して、コテージに戻ったナギでしたが……。



 ──アイネ、レティシア編──





「木の実を取ってきたよ。アイネ」


「ありがとうなの。なぁくん」


「お帰りなさいですわ。ナギさん」


 島のコテージに行くと、アイネとレティシアが待っていた。


 レティシアは水着に上着を羽織ってるけど、アイネはいつものメイド服だ。


「…………ん」


 アイネは僕と視線がぶつかると、照れくさそうにうつむいた。


 隣でレティシアが、アイネを(ひじ)でつついてる。


 ……昨日なにがあったのか、みんなわかっちゃってるからね……。


「これが、イリスとレギィが見つけてくれた『ネバネバココナッツ』だよ」


「すごいの。これでトロピカルなジュースが作れるの」


「こんなレアな果物、よく見つけましたわね」


 レティシアが僕に向かって手を伸ばした。


 僕はアイネに向かって『ネバネバココナッツ』を差し出した。


「……あの、ナギさん? どうしてアイネに」


「だって身体につくとネバネバするから」


「……わ、わかってますわ。ですからわたくしに……」


「だって身体につくとネバネバして、大変なことになるから」


「……わ、わかってますわよ。もう、わたくしに渡してくださいなっ」


 レティシアは横から手を伸ばして、『ネバネバココナッツ』を受け取った。


 ぷくーってほっぺたを(ふく)らませて、僕を見てる。


 ……だってレティシアが果汁まみれになると大変だし。


 いくら僕だって、親友と確かめあいながら身体を洗いっこする方法なんか知らないからね。


「さっきリタさんがおさかなを持ってきてくださいましたわ。これで晩ご飯の材料はそろいましたわね」


「じゃあお料理をはじめるの。発動! 『お姉ちゃんの隠れ家』!!」


 アイネの結界が、コテージを包み込んだ。


 波の音が聞こえなくなった。


 まるで二重窓を閉め切ったみたいに、部屋の中は、しん、と静まり返ってる。



「出てきて『コンロ』。真水をちょうだい『水道』!」



 アイネが宣言すると、かまどの上に炎が発生した。鍋を置く部分は青銅(せいどう)のような材質で、(つた)が絡まりあったようなかたちをしてる。少し違うけど、僕の世界のコンロに似てる。


 よく見ると、壁には蛇口ができていた。こっちは竜の頭のようなかたちをしている。


「こうかな?」


 アイネが角の部分を倒すと、竜の口から水が出てきた。


 口をつけたアイネは、指先で丸を作ってる。ちゃんと真水になってるみたいだ。


「……すごいですわ、アイネ。いつの間にこんなスキルを身につけたんですの」


「なぁくんと一緒にいると、女の子は自動的に強くなっちゃうんだよ?」


「それはわかってますけれど、このスキルは格が違いますわよ……」


 レティシアは目を丸くしてる。


「このスキルがあれば……どんな場所でも生活できますわ。難易度の高いクエストのときにも、町に戻らずに戦い続けることができます。なんて……すごいスキルですの……」


 うん。レティシアの言う通りだ。


 この『お姉ちゃんの隠れ家』があれば、どこでも食事を作ることができる。水にも火にも困らない。さらに収納(しゅうのう)スキルの『お姉ちゃんの宝箱』と組み合わせれば、手ぶらで旅ができる。


 これは家庭的なアイネにふさわしい、最強の『生活力』スキルだ。


「……ナギさんの奴隷(どれい)になることで……これほど桁違いの能力が引き出されるなんて……」


「レティシアだって、なぁくんからたくさんスキルをもらってるの」


「そ、そうですけれど……」


 レティシアは額を押さえて、


「……や、やはり真の『ちぃときゃら』には(おと)るのですわ。アイネたちと並び立つには、ナギさんの奴隷になることが必要。もちろん、嫌ではないですけれど……ああ、でもでも、わたくしは立場上そういうわけには……」


「無理することないってば、レティシア」


「そ、それに……わたくしだけナギさんの奴隷ではなく親友なのは……仲間外れ……? もしかして、ひとりぼっちですの? わたくし……ひとりだけ……わたくしだけが……ああああああ」


「こらこらこらこらこらっ!!」


「す、すいませんですわ。ちょ、ちょっと誘惑に負けそうになっただけで……」


「……主従契約しなくたって、レティシアは僕の大事な仲間だよ」


 僕は言った。


「それにレティシアは『正義の貴族』だろ? なりたいものがあるなら、まずはそっちを目指した方がいいって。一般人の味方をしてくれる貴族って、すごく貴重な存在なんだから」


「……そうでしたわね」


 レティシアは顔を上げた。


 納得してくれたみたいだ。


「わたくしは『正義の貴族』ですもの。ナギさんの奴隷になるわけにはいかないんですわ」


「うん。僕も、レティシアが求めるなら、いくらでも力を貸すつもりだから」


「ええ。わたくしたちは親友なのですから」


 そう言ってレティシアは、僕の手を取った。


 なんだか、照れくさいな。


 レティシアは貴族だけど、僕たちの事情を全部知った上で、こうして一緒にいてくれる。


 それがうれしくて、なんとなく、気恥ずかしかった。レティシアには僕とみんながしてることとか、全部知られちゃってるからね……。


「で、では! 夕食前に泳ぎに行きましょう。ナギさん!」


 レティシアも同じように思ってるのか、照れくさそうに、こほん、と咳払(せきばら)いした。


「わたくし、水泳は得意ですのよ。どっちが速いか競争しません?」


「いいよ。でも、僕は人並みくらいにしか泳げないかな?」


「ならば、公平になるようにいたしましょう」


「公平に?」


「わたくしを遅く、あなたを速くするのです。賢いナギさんなら、そのような調整もできるのではなくて」


 ……調整か。


 それなら、なんとかなりそうだ。


「わかった。じゃあ、やってみよう」


「ええ、やってみましょう」


「ちょっと待ってて。リタとイリスを呼んでくるから」


「ええ、リタさんとイリスさんを……って、ちょっと。あの。ナギさん?」




 ──10分後──





 ざばざばざばざばざばざばっ。


 すぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱっ。




「イ、イリス。泳ぎます。泳いで恥ずかしい記憶を忘れましょう! お兄ちゃんの身体を洗ったときの光景は記憶に刻みこみますけれども────っ!」


「ま、待ってイリスちゃん。速すぎ──っ!」


 というわけで僕とレティシアは、ハンデをつけることにした。


 レティシアは泳ぎが得意。でも、僕はそれほどでもない。


 だから僕はイリスにサポートしてもらって、レティシアは(水上歩行中の)リタに引っ張られて、それぞれ海へ。まずは50メートルくらい加速して──




((いち、に、さん、よん、ご、ろくしち……はち))




 僕とレティシアは互いにカウントダウン。


 互いに10秒数えたところで、





((離脱(りだつ)!!))




 僕はイリスの手を放し、レティシアはリタが握っていたロープを放して、自力水泳を開始した。




 そして──



「「ごぼぼぼがががががわわわわわっ!!」」




 ごろごろごろごろ。ずしゃー。



 ──失敗した。




 僕とレティシアは方向を誤って砂浜へ。


 イリスとリタに引っ張られた勢いのまま、2人で絡まり合って転がり、砂まみれになって倒れた。


「……無茶だったか」


 よく考えたら、僕もレティシアも、自分でコントロールできる速度を超えてた。


 覚醒状態(かくせいじょうたい)のイリスは水中ではむちゃくちゃ速いし、リタは地上を歩くみたいに水上を進める。


 めいっぱい加速して手を放したら──こうなるよね。




「……競争にならなかったね」「……ハンデもなにもありませんでしたわね」




 僕とレティシアは、砂まみれの顔を見合わせた。


 それから、お互い()き出して、


「ナギさんってば、なんですの、その顔」


「レティシアだって髪の毛ぐしゃぐしゃになってる。あと、水着ずれてるし」


「もー。なんでもいいですわ。ふふ。はははははは!!」


「そ、そうだね──」


 夕暮れ。


 アイネがいるコテージからは、美味しそうなにおいがただよってきてる。


 戻ってきたイリスとリタは、僕たちを心配そうな顔で見てる。


 そんな当たり前の光景の中にいる、砂まみれで髪の毛ぐしゃぐしゃの自分たちの姿がおかしくて──




 僕とレティシアは砂浜の上でお腹を抱えて、笑い転げたのだった。







 ──セシル、ラフィリア編──




 夜。


『ジャイアント・シーバス』の照り焼きとスープでお腹を満たしたあと、僕は地下道にやってきていた。


 妖精のレーンとリーンは地上にいるから、ここは静かだ。地熱の関係であったかいから、夜の散歩にもちょうどいい。


 それに、古代エルフの遺跡でもあるからね。時間のあるときに、見ておかないと。


 ──って、そう考えるのは僕だけじゃないはず……。




「あれ? ナギさま?」「マスター、どうされたのですか?」




 しばらく歩くと、ふたつの島の中間地点に、セシルとラフィリアが立っていた。


 ふたりとも寝間着姿で、通路の壁を見つめてる。


「んー。調査かな。それと、なんとなくふたりがいるような気がして」


「さすがナギさま。わかっちゃいましたか……」


「ご先祖さまの遺跡ですからねぇ。あたしも、気になるですよぅ」


 セシルは眠そうな顔をしてる。


 ラフィリアの方はは……なんだか、いつもとは違うな。


「難しい顔してるけど、ラフィリア。どしたの?」


「はい。考えていたですよ。古代エルフが、どうして滅んだのかということを」


 ラフィリアは真剣な表情でうなずいた。


「こんな施設や、あたしのような『古代エルフのレプリカ』を作る技術もあったのに、どうして滅んじゃったのかな、って、考えていたです」


「確かに、島と島を地下道で繋ぐなんて、オーバースペックな技術まで持ってたんだもんな」


「妖精さんは、元々あった洞窟を、古代エルフが改造したって言ってましたですけど」


「しかも島全体に『子どもができない魔法』までかかってるんだもんな……」


「滅んだ理由が、その魔法が暴走したからっていうオチだったら嫌ですねぇ」


「やだよそんな末路……」


 どんだけ悲惨な末路なの、それ。さすがにないと思うけどさ。


 そんな種族的大事件があったら、地竜か天竜か海竜が知ってるはずだからね。


「わたしのご先祖……魔族もほろびました」


 僕の隣で、セシルがぽつり、とつぶやいた。


「それは魔族が他の種族と争わず、静かに消えることを選んだからです」


「……そうだったね」


「でも、古代エルフさんたちは、いろいろなアイテムや施設を作っていたんですよね。地竜さんとも仲良しでした。なのに、どうして滅んでしまったんでしょう」


「あたし、時々こわくなるですよぅ」


 ラフィリアは手を伸ばして、僕の寝間着の(すそ)をつかんだ。


「マスターや、みなさんとこうしている時間が、ほんの一瞬で、あたしもいつか……本当の『古代エルフ』みたいに消えちゃうんじゃないかって」


「それはないな」


 僕はラフィリアの手を握った。


 細い身体を引き寄せて、その両肩に手を乗せる。


「ないよ。そういうふうには、ならない」


「どうして、そう思われるですかぁ?」


「僕とラフィリアは『魂約(エンゲージ)』するから」


 僕は言った。


「ラフィリアがひとりぼっちで消えたりなんか、絶対にさせない。当たり前だろ?」


「……していいのですか?」


「もちろん。なんだったら、今しようか?」


「うーん」


 ラフィリアは(くちびる)に指を当てて、少し考えてから、


「今は、いいですぅ。今はあたし、さびしくなっちゃってますから。そういうとき……マスターにしていただくのは、なんかかっこよくないです」


「そっか」


「そのうちに、かっこよく『魂約(エンゲージ)』できそうなスキルを、あたしが手に入れてみせますぅ。組み合わせると、すごくすっごーく『かっこいいスキル』になりそうなものを!」


「実用性は?」


「それは二の次で」


 ラフィリアは大きな胸を揺らして、にはは、と笑った。


 いつものラフィリアだった。


「あたしはそのうちに、古代エルフの遺跡を見ることになるのです。その時、ご先祖様のお墓に向かって『あたしはマスターにもらっていただいて、こんなかっこいい存在になったですよぅ』って自慢したいのです!

 ──いいえ、むしろ古代エルフは、マスターの奴隷(どれい)を作り出すためだけに、その存在意義があったと! 遺跡すべてに響き渡る声で叫ぶつもりですぅ!!」


「古代エルフが聞いたら怒るからやめなさい!」


「……魔族はナギさまの奴隷(どれい)たるセシル=ファロットを生み出すために……?」


「セシルにも感染した!?」


 なんだか熱い瞳で宣言するラフィリアとセシル。


「この地下道に、古代エルフのお墓とかないよな……? 聞いてたら怒るぞ、きっと」


「大丈夫ですよぅ。あたしは、別にケンカを売ってるわけではないです。ただ……」


 ラフィリアは少し考えてから、手をメガホンのようなかたちにして、




「古代エルフのあなたたちに作られたあたしは、今がすっごく楽しいのですよぅ────っ!!」




 地下道いっぱいに響く声で、叫んだ。


「──って、言いたいだけなのですから」


「──わ、わたしはナギさまと出会えてから……ずっとしあわせです──っ」


「まだ照れがあるですね、セシルさま」


「そ、そうですか?」


妖精(ようせい)さんたちは地上にいるので、この地下の声は誰にも聞こえないはずなのですよぅ。なので、遠慮(えんりょ)することはないのです」


「で、でもでも」


「マスターも言ってさしあげてください。ここは無人島なのですから、恥ずかしがることはないのだと」


「……確かに、そうかも」


「マスターも言ってさしあげてください。ここは無人島なのですから、多少恥ずかしいことをしても、恥ずかしがることはないのだと」


「いや、それは恥ずかしがった方がいいんじゃないかな」


「でも……こういう無人の施設に来ると……ドキドキしませんかぁ?」


 ラフィリアは両手でほっぺたを押さえた。


「誰も見ていない……でも、地上にはみなさんがいて、誰か来るかもしれない……うっかり、開放的な自分になりそうになる……そんな気分に」


「……わからないでもないけど」


「たとえば、この通路には、おっきな鏡がありますよね?」


「あるの?」


「あるですよ?」


 ラフィリアとセシルは僕の手を引いて、歩き出す。


 着いたのは、地下室の入り口から少し離れた、通路の角。


 そこの壁に、大きな鏡がついていた。天井にも、反対側の壁にも、高さ2メートルくらいの姿見がついている。


 なにか魔法的な設備だろうか。


「昼間、セシルさまとも調査したのですぅ。この地下道にあるのは、マスターたちが愛を交わすのに使われたあの部屋と、この鏡だけでしたぁ」


「隠された壁画や、魔法陣があるかと思ったんですけど」


 ラフィリアとセシルは、首をかしげてる。


「それらしいものはなにも」「ありませんでした」


「元々、星を見るために作られた施設だからなぁ」


 妖精たちを観測者にして、未来を予測するために星を見させていたんだっけ。


 結局、古代エルフに未来が読めたのかどうかは不明で、残ったのはこの施設だけ。


 ここにはもう、『妖精さんを繁殖(はんしょく)』させる役目しかないのかもしれない。


「施設が生きてたら顔認証(かおにんしょう)とか、生体認証(せいたいにんしょう)とかありそうだけどな」


 鏡の前で手を振ってみても、反応はなにもなし。


 寝間着姿の僕とセシルとラフィリアの姿が映ってるだけだ。


「機能が一部だけ生き残ってる廃墟(はいきょ)か遺跡って感じかな」


「わくわくしますねぇ」


 わかる。


 しかも、妖精たちと僕たちの他には誰も知らない。


 ここに入れるのは僕たちだけで、またいつでも調査ができる。誰も来ない、遺跡。


「確かに、わくわくするよね……」


「ここでじっとしてれば、誰にも見つからない場所ですからね」


 セシルは瞳を輝かせて、鏡をのぞきこんでる。


「以前教えていただいた、ナギさまの世界のお話に出てくる『ひみつきち』みたいです」


「……そういえばそんな話もしてたっけ」


 セシルたちには僕が元の世界でゲームを作ってたこととか、その元ネタになったアニメの話とかもしてたな。そういえば。


「秘密基地か……確かに、そんな感じだな」


「となると『かっこいいポーズ』の研究をしたくなるですね」


 びしり、と、寝間着姿でポーズを決めるラフィリア。


 あ。変なスイッチを入れてしまった……。


「わかるけどさぁ……」


「となると、開放的な姿で『かっこいいポーズ』の研究をしたくなるですね」


「なぜ脱ぐ必要が?」


「服を脱いでもかっこよくなければ、真の『かっこいいポーズ』とは言えないからです」


「それはわからな……いや、わかるような気が」


 夜中で、変なテンションになってるからだろうか。


 なんだかラフィリアが、もっともなことを言ってるような気がしてきた。


「……下着姿ならどうですかぁ?」


 ラフィリアは期待に満ちた目で、僕を見てる。


 それは僕の許可を得るようなことなのかなぁ。なんだろうな。


 こういうところ、ラフィリアはきっちりしてるし。


「……下着姿なら、ぎりぎり……ありかな」


「許可をいただいたですぅ!」




 ばっ。




 ラフィリアは寝間着の帯をほどいて脱ぎ捨てた。


 いろいろときわどい下着姿になった。


 まぁ、湯浴み着を着ているところは何度も見てるし、それと同じだと思えば……ありかな。


「では、あたしがこれからいろいろな『かっこいいポーズ』を取るので、評価してくださいです。マスター、セシルさま!」


 ラフィリアは宣言して、変身ヒーローにも似たポーズを取った。


 いつもほわほわしてるラフィリアだけど……芸術的センスはあるんだよな。


 だから、下着姿で、しゅたっ、と腕を伸ばしたポーズは──すごくかっこいい。


 さらに変なところで完璧主義だから、鏡を見ては指の角度を調整したり、腕を上げたり下げたり。その熱心さには、いつの間にか僕もセシルも影響を受けて──


「ていっ!」


「こ、こうですか?」


「セシルさまはもうちょっと腕を上げた方が、身体が大きく見えて強そうですよぅ。はい、マスターも!」


「……こう?」


「いいですねぇ。ただ、寝間着が邪魔で身体のかたちが見えにくいですぅ。ぬぎぬぎしてください、マスター」


「えー」


「ぬ、脱いだ寝間着は……わたしの寝間着の上に置いていただければ、砂がつかないと思います……」


「……しょうがないな」


 やはり夜中のテンションは危険だった。


 ……でも、そのことに気づいたときには、すでに手遅れで──




「はーっ! ふふっ。今のポーズは決まりましたですね。マスター!」


「このポーズは……なんだか、魔力が高まったような気がしました!」


「今度、その状態で魔法を撃ってみようか。威力が変わるかも」


「「さすが (マスター) (ナギさま)。名案 (なの)です!」」


 僕たちは眠くなるまで、地下道で『かっこいいポーズ』の練習を続け──




「……すぅ」


「……ふわ。かっこいいです……ナギさま」


「……むにゅむにゅ。今のは決まりましたよぅ。マスター」





「…………ここで一体なにがあったの……?」




 翌朝、あきれ顔のアイネに発見されることになるのだった。







 ──数時間後、島の湖で──




「姉さま……今日も美しい姉さま」


「なぁに、今日も可愛いレーン」


「さきほど地下道を散歩していたら、水晶玉を見つけましたよ?」


「まぁ、スキルクリスタルね。どうしたのかしら」


「……今は地竜の縁者(えんじゃ)さまがいらっしゃいますから」


「……あの方たちが、なにかのスイッチを入れたのかもしれませんね」


「……残っているのは、恐ろしく複雑な認証だけのはずですけれど……」


「……私たちでも解読できなかった……手足の動きで発動する認証を……突破したのでしょうか?」




「「なんと……すばらしい方たち……」」


 妖精たちは互いの身体を洗いながら、光るクリスタルを捧げ持った。




「これは、あの方たちに差し上げましょう」


「これは、あの方たちにふさわしいもの」


「古代エルフの遺産」「彼らの使っていたもの」




「「『星読みスキル』を」」




 そう言って妖精レーンとリーンは、うなずきあったのだった。




いつも「チート嫁」を読んでいただき、ありがとうございます。


書籍版8巻と、コミック版3巻の発売日が決定しました!

書籍版8巻は2月9日、コミック版3巻は2月8日の発売です!(1日違いなので、ほぼ同日の発売となります)

こちらもあわせて、よろしくお願いします。

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新作、はじめました。

「弱者と呼ばれて帝国を追放されたら、マジックアイテム作り放題の「創造錬金術師(オーバーアルケミスト)」に覚醒しました 
−魔王のお抱え錬金術師として、領土を文明大国に進化させます−」

https://ncode.syosetu.com/n0597gj/

魔王の領土に追放された錬金術師の少年が
なんでも作れる『創造錬金術師(オーバー・アルケミスト)』に覚醒して、
異世界のアイテムで魔王領を大国にしていくお話です。
こちらも、よろしくお願いします。
+注意+

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