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400 人竜大戦 1

『『『『『『ぎゃあああああああ~~!!』』』』』』

 直撃であった。

 古竜達に効く攻撃ができる生物などいない。

 なので、古竜達は必死で身体を鍛えたり技の鍛錬を行ったりはしない。

 ……そんなことをしなくても、古竜とまともに戦える者など存在しないのだから。

 そのため、いくら古竜の戦士といえども、あらゆる戦いに秀でているというわけではなかった。彼らの戦いは主に、仲間内での試合、つまり『対古竜戦』である。それも、本気で命の遣り取りを、とかいうものとは程遠い、作法にのっとった紳士的な戦いである。

 そう、それは人間でいうところの、「対人戦には秀でているが、それは『道場剣術』としてのみ。実戦や魔物相手の戦いは経験がなく、それらにはからっきし」というような感じであろうか……。

 そのため、防御魔法は前面に板のように、もしくは湾曲した盾のように張るものであり、マイルが使うような、全周を覆うバリアとは大きく異なっていた。なので、どうなったかというと……。


 古竜達の手前で大きくホップアップし、まるで対艦ミサイルのように、古竜達が張った障壁魔法シールドを跳び越え、真上から目標に突っ込んだ、レーナの『火焔直撃弾』。別名、『いったい何が(ホワッツ・)起こったの?(ハープーン)』である。

 障壁など関係なく、赤い霧の渦となって6頭の古竜達を包み込んだ、ポーリンの『赤き地獄』。

 障壁の下の隙間から突っ込み、古竜の脚を斬り裂いたメーヴィス。

 ……そして、障壁を簡単に貫いて古竜の身体に命中した、マイルの位相光線フェイザー・ビーム。障壁でかなり弱められたため、さすがに古竜の身体を貫通するだけの威力はなかったようであるが、魔力コーティングとウロコを突き破り、ある程度はダメージを与えられたようである。


『ぎょひいいぃ!』

『い、いたからあつ、ヒイィ!』

『あ、脚、脚がああああぁ!!』


 かなりのダメージを受けたらしい古竜達であったが、それでも、前回のケラゴン達のような混乱はなかった。まともに攻撃を受けはしたものの、元々古竜は身体に魔力による防護膜のようなものを纏っているし、身体から剥がれる前のウロコは魔力を帯びており、かなりの強度を持っている。

 そして更に、自分達が傷付けられることなどあり得ないため痛みや苦痛には耐性がなかったケラゴン達とは違い、この6頭はある程度の耐性を持っているようであった。精鋭揃いなのであろうか……。

 そのためか、かなり動揺してはいるものの、治癒魔法で怪我を治したり、風魔法、水魔法により火種やカプサイシン成分等の異物を吹き飛ばし排除したりして、何とか立ち直ったようである。


『は、話が違うではないか!』

 戦士隊のうちの一頭が、ケラゴンとベレデテスに向かってそう吠えたが……。

『何を言っている! 我はちゃんと説明したではないか! それを信じず笑い飛ばしたのは、お前達ではないか!』

『その通りだ! 思い切り馬鹿にして、我を腰抜け呼ばわりして戦士隊から除名するよう提言したのは、お前達であろう!』

『うぐぅ……』

 ベレデテスとケラゴンにそう言われ、黙り込んだ。


『そんなことは、どうでもよい! とにかく、人間共の全力の攻撃など、古竜のまともな戦士達には全く効かぬということがこれではっきりと分かったであろう!』

((((えええええ?))))

 ……思い切り、効いていたのではないか。

 そう思った『赤き誓い』の4人であった。

 そして、自分はまともな戦士ではないのか、と、ガックリと肩を落とすケラゴン。


 それでも古竜達は、余裕綽々(しゃくしゃく)であった。

 今までの歴史において、ごく限られた条件の場合、つまり古竜側がまだ幼い仔竜1頭であり、相手側がバリスタ等の大型兵器を大量に揃えた連隊か旅団規模の軍隊である場合とかを除き、いまだかつて古竜が他の生物に敗北を喫したという例はないのだから。

 今回の一連の事件においても、結果的には古竜は一頭も死ぬことなく、大怪我をすることもなく全員が無事帰還しているのである。


 ほんの少々骨のある敵に遭遇し、少し痛い思いをしただけなのに、それを大袈裟に盛りまくって報告している。皆がそう考えるのも、無理はなかった。

 なので、少し痛かっただけ。そう、人間が子犬や子猫に少し引っ掻かれただけ、という程度の認識であるため、古竜達には危機感も何もなかった。


 勿論、古竜達が余裕たっぷりの会話を交わしている間に、『赤き誓い』は頭の中で次の攻撃魔法の詠唱を行っている。こっちは、余裕がありそうな顔をしているけれど、内心では必死であった。

 今まで古竜関連では幸運が続いてきたが、それらは、古竜側がこちらを甘く見て、最初から本気で掛かってきたりはしなかったこと、そして今までの古竜達は皆、何だかんだ言って、結局は小さな下等生物に対して、結構甘かったのである。できれば殺さずに済ませて、うまく報告すればいい、とか考えて……。

 それが、今回は指導者が立ち会っており、最初から人間達しょうどうぶつを殺す、という前提での接触である。最初のうちは本気ではないにしても、最終的には見逃してもらえるとは思えない。

 ……そう、実力でねじ伏せるしかないのであった。いつものように……。


「ゼロゼロ魔法第3号、『円錐螺旋ドリル徹甲誘導弾(ミサイル)』、発射よ~い……」

「火焔溶融砲、スタンバイ……」

「ウィンドエッジ、出力全開……」

 ポーリン、レーナ、そしてメーヴィスの攻撃準備が整った。

 ポーリンとレーナ、それぞれが出し得る、最大威力の攻撃魔法。

 メーヴィスは、味方の攻撃に巻き込まれないため、やむなく『ウィンドエッジ』による攻撃であるが……。


 おそらく、これで古竜達は本気になる。それはつまり、ブレスと巨体による肉弾攻撃が何の容赦もなく叩き付けられるということであり、6頭の古竜からのそれは、到底『赤き誓い』に持ちこたえられるようなものではない。

 そう、『赤き誓い』最後の攻撃である。

 他の者達を巻き込まないために素直に呼び出しに応じたが、それは他に取るべき方策がなかったからに過ぎない。決して、そう楽観視していたわけではない。なので危険は覚悟していたが、古竜達がここまで一方的であり、そして人間の小娘4人に対してここまでの戦力を用意しているとは思ってもいなかった。

 もしそんなに『赤き誓い』の実力を認めてくれているならば、高位種族である古竜であればもう少しまともに話し合いができると思っていたのである。

 確かに、それもあり得たであろう。……もし交渉の相手が、まともな年配の古竜であったならば。


 6頭の古竜相手に、勝算はない。

 しかし勿論、かといって負けるつもりは毛頭ない。

 マイルがいつも言っているように……。

『諦めたら、そこで戦闘終了ですよ!』


 そしてマイルが、魔力が古竜の半分だろうが6頭分だろうが関係ない、最強にして最兇、最大の切り札(トランプ)を切った。

「気温、湿度、気圧制御! 屈折率操作、氷晶配列、空間湾曲……、集束魔法、発射用意!」

 マイル専属のナノマシンが、その命令を中継し、伝達する。

 上へ。上へ。上へ……。


「「「発射!」」」


 どひゅん!

 ごおぉ!

 ひゅん!


 ポーリン、レーナ、そしてメーヴィスの攻撃が全弾着弾したが、6頭の古竜が本気で張った防御魔法シールドは抜けなかった。

 そして、今回はちゃんと、防御魔法シールドが全周に亘って張り巡らせてあった。


 完全に防げはしたが、もし防御魔法シールドを張っていなければ。

 もし古竜が一頭だけの時に狙われ、この一斉攻撃を受けたならば。

 ……危険は、排除しなければならない。

 古竜が、僅か数人の人間に倒されるなどという可能性は、たとえごく僅かであろうとも看過することはできない。

 なので、6頭の古竜達は一斉に息を吸い込んだ。必殺の攻撃のために。

 以前、マイルが3頭分の攻撃に何とかぎりぎり耐えることができたドラゴンブレスを、6頭分。

 そして、古竜達がブレスを吐こうとした寸前……。


「サンシャイン、デストロイヤアアアアァ~~!!」


 ずばしゃあああぁ!!


 天空から光の剣が地面に突き刺さり、大地を斬り裂いた。

 ……そして斬り裂かれた大地は、岩が溶けてマグマと化し、6頭の古竜の周りをぐるりと取り囲んだ。


 いくらマグマの川に取り囲まれようが、空へ舞い上がれば関係ない。

 しかし古竜達は、ブレスを吐くことも忘れ、吸い込んだ息をそのまま吐き、呆然と立ち尽くしていた……。



今回の話数で、遂に400話!

連載開始から3年半です。

高校生活全てよりも、長い年月。

そして、もうすぐアニメ放映です。(10月、TV放映開始。)


……今はただ、何もかも皆、懐かしい……。(T_T)


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