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393 防衛戦 7

(じゃあ、この遺跡は……)

【はい、既に完全に機能を停止していたものが、ごく最近、スカベンジャーによって活動を再開したものです。尤も、機械装置類は大半がさびの塊であり、使えるものなど何もなかったでしょうから、殆どゼロからの再建となったのでしょう。まだ現地増産されたスカベンジャーと防衛用のゴーレムが揃っただけで、この遺跡自体の修復等は手付かず。現在は修復活動のための機械を建造している段階のようです】

(むむむ……)


【そして先程、マイル様の外見、声紋等からマイル様のことに気付いたらしく、生体パターン照合等を行って『管理者』と確認、慌ててここへ御案内した、という次第のようですね。そして、何か御指示をいただければ、と思っているようです】

(って、そうか、私があの時に指示した命令に従って行動しているスカベンジャーがここに来て、自分達を複製しているわけだから、みんなあの指示を引き継いでいるわけか! だから、なるべくヒト種や亜人達に危害を加えないよう配慮してくれているんだ。侵入者を撃退する程度に留めて……)

 本当は、遺跡を護るためならばもう少し積極的に戦ってくれてもいいと考えて指示したのであるが、おそらく防衛にはまだまだ余裕があるため、甘い対応のままなのだろう。これがもっと追い詰められれば、本気を出すのかもしれない。それまでに構築した防衛機構を使って……。


(じゃあ、現在の状況は、ゴーレムが生息していなかった場所に突然ゴーレムが発生、遺跡とゴーレムの関係を知っているのかどうかは分からないけれど、遺跡を調査しようとした連中とたまたま鉢合わせとなったか、それとも『死んだ遺跡』のはずだったのにゴーレムが確認されたため再調査となったか、何か、そのあたりかな……)

「……ル! マイルってば!」

「あ……」


 レーナ達が呆然と作業現場に見とれている間にナノマシンと会話していたマイルであるが、いつの間にかレーナ達は我に返っていたらしい。

「あんた、驚きすぎよ」

 マイルも目の前の光景に驚いて硬直していたと思っているのか、レーナがそんなことを言っているが、それも無理はない。ここは、前回見た、小規模なゴーレムの修理場所とは全く違っていた。

 前回のは、言うならば『従業員数人の、小さな町工場』であった。数人の工員が、台の上にある機械製品を修理している、というような感じで……。しかし今マイル達の目の前に広がっているのは、そんな小規模なものではなく、もっと規模の大きなものであった。

 大工場、というほどのものではないが、少し広い場所で、60体以上のスカベンジャーが何やら大きな筒状のものをいくつか作っている。直径3~4メートル、長さは……、後で繋ぎ合わされるのであろう、ひとつひとつは数メートルであるが、完成したものがどれくらいの長さになるのかは分からない。

 そして、その作業現場とマイル達が今いる場所とは、透明な壁で仕切られていた。レーナ達はただのガラスだと思っているのであろう。こんなに大きくて透明度の高いガラスはまだこの世界の技術では作れないであろうが、ガラスというものを知っているレーナ達にとっては、凄い、とは思っても、不思議に思う程のことではなかった。……実際には、それはガラスなどではなかったが……。


「い、いえ、驚きますよね、普通!」

 慌てて適当に誤魔化したマイルであるが、今更である。レーナも、ああは言ったものの、実は本当にマイルが自分達以上に驚いているとは思っていなかった。いつもこういう時には一番冷静であるし、今も、額にシワを寄せて何やら難しい顔をして考え込んでいたようであり、別にレーナ達のように大口を開けて両眼を見開いていたわけではない。


「では、ちょっと状況を確認しますね……」

 そんなことを言い出したマイルであるが、もう、みんなその程度のことで驚くようなことはない。

 どうやら前回のアレから、レーナ達は『マイルは、魔物使い(テイマー)のような能力を持っていて、ヒト種のような知的生物が産みだした魔法生物とある程度意思を通わせることができる』とでも考えているようであった。


 いや、この世界には『魔物と意思を通わせることができる、魔物使い(テイマー)』などというものは存在しないが、もふもふ好きでケモナーである謎の覆面作家、ミアマ・サトデイル先生の作品にはしょっちゅう登場する、夢の、憧れの職業であるため、実在しないにも拘わらず、その何たるかを知っている者はかなり多いのであった。


(じゃ、ナノちゃん、通訳を……)

 今回は、前回の末端装置のようなものはないため、スカベンジャーの一体に聞くしかない。

 しかし、末端装置は、いくら『特定用途のAIの、予備の予備の予備』とはいっても、一応は『管理システム』であったが、スカベンジャーはただの作業機械に過ぎない。いくらナノマシンを介しても、果たしてまともに話が通じるものかどうか……。

 そう思っていたマイルであるが……。

【あ、彼らはマイル様の言葉が通じますよ?】

(え?)

【いえ、確かに前回はマイル様達の言葉が通じませんでしたが、自分達が待ちに待った『管理者』が現れたというのに、その指示が言語的な問題で直接理解することができず、他者の通訳に頼らねばならない。……そういう状況を我慢できると思われますか?】

(……ちゃんと正しく翻訳されているかどうかも分からないのに、それは嫌だろうなぁ……)


【そして、以前は制限が多くてヒト種との接触が限られていましたが、マイル様のおかげで今はヒト種の居住場所へ近付くことも、街に密かに侵入することも可能となっています。

 また、素材の入手にもあまり困らなくなり、自分達で金属の採掘から精錬まで行えるようになっています。なので、小さな虫型の情報収集機を造り、現在使われている言語を解析することくらいは簡単に……】

(超小型のスパイロボット……。何ソレ、怖い……)

 管理者である自分にも、常に情報収集のためのスパイロボットが張り付いているのではないか。そう考えると、何だか少し怖くなってしまったマイル。

【……】

 そして、それを聞いて焦るナノマシン。

 超小型。

 常に対象に張り付いている。

 あらゆる情報を収集している。 

 考えてみれば、ナノマシンは、それらの条件を全て完全に満たしているのであった。

【…………】


【た、たたた、ただの集音・録音機能付きの道具ですよ、マイル様が前に言われていた、『ICレコーダー』とかいうものが小型になって、羽と手足が生えただけですから!】

(もっと怖いよ!!)

 嫌そうな顔をしたマイルであるが、ナノマシンが言った言葉からゴキブリのような形状を想像したため、それからナノマシンを連想するようなことはなかった。そしてマイルの様子からそれを察知し、にやりと笑うナノマシン。

【計画通り……】

(何か言った?)

【いえ、何も?】


 そして、側に控える案内役のスカベンジャーに向かって声を掛けるマイル。

「私の言うことが分かる?」

 こくり

 マイルの言葉に、大きく頷くスカベンジャー。

 状況を確認したり、管理者達の指示を受けたりするために当然聴音機能はあるが、発声機能は必要がないために装備されていない。しかし、情報収集機により、ヒト種が言葉を使わずに行う意思伝達手段、つまり『身振り手振り』というものも当然マスターしていた。

 ……というか、それは昔の管理者達に対しても必要な機能であったし、彼らの子孫である現在の人間達も、簡単な意味を持つ身振りは殆ど変わっていなかったのであるが……。


【マイル様、彼らに、お言葉を……】

 そう言われても、何を言えばいいのか分からない。

(どうしよう……。変なことを言っちゃうと大変だし、みんなに自分の存在意義を自覚し、生きがいを持ってもらうための、無難な言葉は……)

 既に自分達のオリジナルを造った者達の姿はなく、ただ複製を繰り返すことにより存在を続けるだけの被造物。彼らに、希望や望みはあるのだろうか……。


 少し悩んだ後、マイルはスカベンジャーにそっと告げた。

「あなた達を造った人達の期待に応えなさい。そして、この世界を護ってくださいね……」

 しくもそれは、以前遺跡を立ち去る間際にナノマシンがあの末端装置に告げた言葉に酷似していたのであった……。



マイル、カオル、ミツハ。三人娘のフィギュアが、揃い踏み!(^^)/

2019年夏の、ガレージキット展示即売会、『ワンダーフェスティバル』(7月28日(日)、幕張メッセ)において、こみの工房様にて販売!(各15体ずつ)

あと1カ月です。(^^)/


ミツハ「どうして私だけ2000円なの?」

マイル「ミツハさん、胸の分だけ材料費が安上がりなんじゃないですか?」

ミツハ「ななな……。マイルちゃんの胸の脂肪、ついてこい! 転移!!」

マイル「ぎゃあああああああ~~!!」

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― 新着の感想 ―
[一言]  死兵が増加…( ̄▽ ̄;)
[一言] >超小型のスパイロボット…… これとか以前の話で出たエクソダスけいかくとか、なんとなくレア・ガルフォ-スっぽい、先史文明のヒト種は火星(相当の星)に居るのかな。
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