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367 休 暇 2

「何だったのよ、アレは……」

 マイルを捕捉できたため、無理に今ゴリ押ししなくとも、後日またゆっくりと、マイルがひとりの時を狙って接触すればいい。そう考えて、クーレレイア博士はあのまま引き揚げていった。

 そして、レーナが不愉快そうに溢している。

「まぁ、いつものことですよねぇ」

「モテモテで羨ましいな、マイル!」

 そして、レーナを宥めるポーリンと、マイルをからかうメーヴィス。


「いえいえ、少女ホイホイのメーヴィス様には到底及びませんよ! 何なら、ギルド便で手紙を送って、ここの連絡先をあの『お嬢様』にお知らせしても……」

「悪かった! ごめんっっ!!」

 マイルの反撃に、血相変えて頭を下げるメーヴィス。

 そう、メーヴィスもまた、『本人が望まない形でのモテモテ』の迷惑さを充分に思い知らされている者のひとりなのであった……。


「まさか、付きまといの迷惑さを充分知っているはずのメーヴィスさんにそんなことを言われるとは思ってもいませんでしたよっ!」

「ごめん! 機嫌を直してよぉ……」

 本気で機嫌を損ねたらしいマイルに、必死で謝るメーヴィス。

 まぁ、『本気で』とは言っても、まだレベル1なので、大した心配はない。皆が心配し始めるのは、レベル2、つまりマイルの表情が抜け落ちて、無表情になるあたりからである。

 そして、眼が全く笑っていない笑みを浮かべるレベル3、その笑みが消えて、心底不愉快そうな顔や怒りの表情になる、レベル4。ここまで来ると、アレである。『その眼で睨まれし者、全ての希望を捨てよ』というやつである。あの、ギルドの受付嬢『このすべフェリシア』の、『この者に睨まれた者、全ての希望を捨てよ』と、ほぼ同じである。




 まぁ、そんなこんなで1週間の休暇を過ごし、再びハンターとしての生活に戻った『赤き誓い』の4人がギルド支部で依頼ボードを物色していると……。

「修行の旅の途上、『女神のしもべ』です。しばらくお世話になります!」

 どこかで聞いたような声で、どこかで聞いたようなパーティ名が聞こえてきた。

「「「「え……」」」」

「「「「「「ああっ!」」」」」」

 そう、それは、オーラ男爵家の娘リートリアを押し付け……、いや、推薦した、女性ハンターパーティ、『女神のしもべ』一同であった。


「互いに旅の途中で出会うとは、奇遇ですわね」

「いや、ここは私達の本拠地ですよ。ここが私達のパーティ登録支部であり、この国に私とポーリンの実家があります。今回の修行の旅は、先日終わりました」

『女神のしもべ』リーダーのテリュシアの挨拶に、皆を代表して、パーティリーダーのメーヴィスがそう言って答えた。


「あら、そうだったの。確かに、両方が動き回っているよりは、片方が1箇所に留まっている方が、巡り会う機会は多いわよね」

 数学的な確率計算をすると実際にはどういう結果が出るのかは分からないが、何となく雰囲気的には正しそうな気がするテリュシアの言葉に納得する面々。


「……でも、修行の旅って、少し早くないですか?」

『女神のしもべ』はCランクに昇格してからまだ間もないはずであるし、何より、全くの新人であるリートリアが加入したばかりである。それですぐに修行の旅に出るというのは、少し性急に過ぎる。そう思ったマイルが、聞いてみたところ……。

「ごめんなさい……」

 なぜか、リートリアがパーティ仲間に謝罪した。

「え?」

 リートリアの謝罪の意味が分からず、きょとんとするマイルに、テリュシアが苦笑いをしながら説明してくれた。


「あ~、実は、リートリアの父親、オーラ男爵が心配性でねぇ……。うちに見張りを張り付けたり、難易度の低い……というか、全く危険のない指名依頼を出してきたりと、色々と面倒でねぇ……」

「「「「あ~……」」」」

 納得の声を上げる、マイル達。

 如何にもやりそうであった。……というか、事実、やっている。

「それで、鬱陶うっとうしいから、早めに修行の旅に出ることにしたのよ。

 修行の旅とは言っても、個々の戦力を上げるための特訓の旅じゃなくて、みんなのコンビネーションの擦り合わせを重視したものだから、無理をするつもりはないわよ。あまり強くない、色々な魔物を相手にしての練習をするための旅よ。1箇所に留まったままだと、あまり多くの種類の相手と戦えないからね。

 それに、そう長期間の旅にするつもりもないしね。この国にしばらく滞在したら、反転して帰路に就くつもりだし……」


『女神のしもべ』は、個々の戦力の大小ではなく、皆のコンビネーションによってその力を何倍にもして発揮するタイプであり、レーナが『自分達も』と目標にしているパーティである。なので、新たにリートリアが加わったことから、その擦り合わせをするために、オーラ男爵にちょっかいを出されないところでゆっくりと訓練すべく、旅に出たのであろう。


(……新入社員教育の合宿のようなものかな?)

 マイルが考えている通り、皆の親睦と新人への初期教育、そして少しでも早くリートリアがパーティに溶け込めるように、との配慮も兼ねているのであろう。あの街にいると、リートリアはしょっちゅう実家に顔を出すよう求められ、落ち着けないであろうから。


「皆さんには、私のせいで迷惑ばかりお掛けして……」

「そんなことはないわよ!」

 申し訳なさそうに頭を下げるリートリアの言葉を、テリュシアがすぐに否定した。

「リートリアが後方から攻撃魔法を放ちつつ金砕棒でラセリナを護ってくれるから、ラセリナが支援魔法に専念できるし、ラセリナの護衛や後方からの魔物の奇襲を気にせずに済むようになったタシアの自由度が上がって、戦術に幅が持たせられるようになったのよ。これは、うちのパーティにとってはすごく大きなことよ」


 タシアは、弓による遠隔攻撃、短剣による後方や側方からの奇襲阻止、そして魔術師であるラセリナの護衛と、様々な役割をこなさねばならず、手一杯であったのだ。それが、自由に動けるようになったメリットは大きい。

 そして、ラセリナが得意な支援魔法に専念できるメリット、魔法攻撃と打撃武器の使い手を得たメリットを加えれば、『女神のしもべ』というパーティの戦闘能力がどれだけ上昇したか、計り知れない。

 しかも、打撃武器といっても、リートリアが使うのは、レーナやポーリンが使うスタッフではなく、金砕棒なのである。外皮が硬くて刃物が通らない相手だろうが、魔法攻撃に耐性がある相手だろうが、強烈な打撃力で叩き潰し、粉砕し、吹き飛ばす、その威力。

 たったひとりの加入で、まさかここまで戦力が向上するとは、おそらくテリュシアも思っていなかったに違いない。


「だから、リートリアを紹介してくれたあなた達には、とても感謝しているのよ」

 心の底からそう思っているらしいテリュシアが『赤き誓い』のみんなに対して言った言葉と、タシアにポンポンと軽く頭を叩かれて、えへへ、と可愛らしく微笑むリートリア。

 どうやら、リートリアは既に完全にパーティに馴染んでいるらしく、もう、『赤き誓い』に執着する様子はない。

 もしリートリアが『赤き誓い』に入っていたならば、ここまでの屈託のない笑顔になれたかどうか……。

((((よかった……))))

 リートリアを自分達ではなく『女神のしもべ』に託した判断に誤りはなかったことを知り、安堵の表情を浮かべる『赤き誓い』の4人であった。



いよいよ今日、3月15日(金)、『私、能力は平均値でって言ったよね!』10巻の発売です!

遂に2桁!!

とりあえず、この週末の間に、10巻をゲットだぜ!

……なぜ週末の間なのか?

それは、オリコン初週売り上げにカウントされるのが、17日(日)までの売り上げ分だからさ!


私をオリコンランキングまで連れてって!(^^)/

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― 新着の感想 ―
[一言] > もしリートリアが『赤き誓い』に入っていたならば、ここまでの屈託のない笑顔になれたかどうか……。 帝国軍や変異種や古竜との戦いのどこかで死ぬかあしでまといになって離脱してたんじゃないです…
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