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194 謎の誘拐団 2

 ポーリンは大将と共にギルドへ向かい、他の者はメセリアちゃんの案内で誘拐現場へと向かった。

 女将さんは、息子さん達と共に宿で留守番である。


「………………」

 怖い。皆、無言のマイルが怖かった。

 いや、レーナもメーヴィスも、そして勿論ダフレル父娘も誘拐犯には怒っているのであるが、それでも、マイルの全身から強烈に放射されている負のオーラに圧倒されていた。


「レーナさん、犯人は何が目的でしょうか」

「そ、そうね、考えられるのは、身代金目当て、人身売買、子供を玩具おもちゃにしたり殺して楽しむ変質者、そしてファリルちゃんが獣人とのハーフであるということが目的の場合、かしらね」

 ずっと黙っていたマイルが話しかけてきたので、このマイルからの負のオーラが弱まるなら、と、慌てて返答するレーナ。


「獣人とのハーフであること、と言いますと?」

「ほら、あるでしょう、色々と……。獣人は下等生物だとか、それが人間との間に成した子供は人間をお創りになった神に対する冒涜だとか言い出す連中とか、マイル、あんたみたいに獣人が好きな……、ヒイッ!」

「私のケモミミ少女好きと一緒にしないで下さい!」

 ……怖かった。マイルが、ちょっと怖かった。


「でも、多分、ファリルちゃんが獣人の血を引いているから、というのが正解なんでしょうね。人身売買にせよ、その他の目的にせよ……」

「「「え?」」」

 マイルの呟きに、レーナ、メーヴィス、そしてダフレルが驚いたような声をあげた。

「ど、どうしてそう思うのよ?」

「だって、メセリアちゃんが言っていたじゃないですか。誘拐犯達がファリルちゃんのことを『こっちだ!』って言って捕まえた、って。それって、最初からファリルちゃんを特定して狙っていたってことですよね? 普通の身代金目当てや人身売買、変質者等なら、メセリアちゃんも一緒に攫うのが普通でしょう?

 それを、攫いも口封じもせずに放置したということは、ファリルちゃん以外の者には危害を加える気が全くなかったということですよね。普通、犯行の発覚を遅らせたり目撃証言を無くすために、口を塞ぎますよね、ナイフのひと突きで、数秒もあれば充分なのですから。

 なのにそれさえしなかったということは、結構まともな連中なのかも知れません。……少なくとも、目的であったファリルちゃん以外の者には」


「く、口封じ!」

「な、ナイフでひと突き!」

 そして、今になってメセリアちゃんがいかに危険な立場であったかに気付き、真っ青な顔をしているダフレルとメセリアちゃんであった。




 宿から十数分走って、ようやくメセリアちゃんがファリルちゃんと遊んでいたという草地に到着した。子供の足なので、そう遠くというわけではない。

 父親のダフレルが背負って走ろうとしたのであるが、さすがに6歳前後ともなると、背負って走るより自分で走らせた方が早かった。


「こ、ここです! このあたりで、男の人達が……」

 メセリアちゃんが指し示したあたりが、ファリルちゃんが抵抗して暴れたりメセリアちゃんが男達にしがみついて止めようとしたからか、草の状態が荒らされていた。


「……嗅覚、視覚化!」

 突然、マイルがわけの分からないことを叫んだ。

「「……何?」」

 当然のことながら、レーナとメーヴィスが疑問の声を上げた。


「嗅覚を視覚化する魔法ですよ」

 ……そのままであった。

「それじゃ分からないわよ!」

 至極当然であるレーナの抗議に、仕方なくマイルがもう少し詳しい説明を行った。


「犬であれば、ファリルちゃんを臭いで追跡できます。しかしここには訓練した犬がいませんし、ファリルちゃんの臭いの見本もありませんから、代わりに私が身体強化魔法で臭いを追跡します。

 臭いは、普通は鼻で嗅ぐものなんですが、私には鼻で臭いの強度や方向を判別する能力はありません。なので、臭いを鼻で嗅ぐのではなく、臭覚信号を視覚に変換して、『臭いを眼で見る』ようにするのです!」

「「「…………?」」」

 全く分かっていないらしき、大人達3人。勿論、メセリアちゃんは問題外である。


「もういいですから! 時間が惜しいから、黙ってついてきて下さいよ!」

 そう言って、辺りを見回すマイル。


「これだ! 行きますよ!」

 ファリルちゃんと誘拐犯達の臭跡を見つけたらしく、地面を凝視しながら歩き始めたマイルを、慌てて追いかける4人。

「マイル、あんた、ファリルちゃんの臭いとか分かるの?」

「レーナさん、私が今まで何のために何度もファリルちゃんをくんかくんかしていたと思っているのですか!」

「「「…………」」」

 メセリアちゃん以外の3人、どん引きであった。


「メーヴィスさん、そろそろポーリンさんがギルドでの用事を終えた頃です。大体の方向が分かりましたから、しばらくはこの方向に進むと思いますので、ギルドへポーリンさんを迎えに行って頂けますか?」

「分かった!」




 そしてしばらく経って、メーヴィスが戻ってきた。ポーリン、大将、そして更に5人のハンターを引き連れて。


「な、何よ、その連中は!」

 怒鳴るレーナに、ポーリンは申し訳無さそうに頭を下げた。

「す、すみません。ギルドで受付嬢との緊急依頼のやり取りを聞いていたこの人達が、自分達も受ける、と言われまして。私達が受けるからと言ったのですが、無理矢理……。

 報酬額は銀貨1枚、と言ったのですが、それでも、と……」

「そいつら、駆け出しで宿屋住まいだった頃、うちに泊まっていたんだよ。ファリルも可愛がってくれて、懐いていたからな……。報酬は、あんた達に言われた通り銀貨1枚で依頼を発注したんだが、それでもいいって言ってくれてな。

 正直、俺としてはひとりでも多くの助けが欲しい。だから、厚意にすがって頼んじまった。一緒に頼む!」


 横から、大将がそう言ってフォローした。

 大将の気持ちも分かるし、ついてきたハンター達の気持ちも分かる。これは、断れないだろう。

 それに、そもそも「緊急依頼」は、受注者を指定するものではない。受注者を指定するのは「指名依頼」であり、指名するなら緊急ではないであろう、というわけである。

 しかし、今回は都合上「緊急依頼」にする必要があった。ギルドでの優先度や、この依頼のことを広く知らしめるには、その方が都合が良いからである。

 まぁ、既に『赤き誓い』が受けたから、として断ることは可能であったが、大将にそれを強要することは、さすがのポーリンにもできなかったようである。レーナ達も、仕方ない、というふうに肩を竦めた。


「私達が来たからには、もう安心よ! 先輩である私達に任せなさい!

 我ら、女神様に護られし5人の乙女!」

「「「「「女神のしもべ!!」」」」」

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― 新着の感想 ―
[一言] うわ~~、よりによってなんてメンツ……。シリアスな事件がグダグダになるフラグ立て^^;
[一言]  野生のおバカ達が現れた!
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