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ガキィィン……!
「終わりだな」
「っくそ、まぁた負けた!」
「マロじゃ十年はえーよ。出直してきな」
「マロじゃねー!」
「んじゃマルだな」
「んがぁ!!」
今自分を含めた七人は、リュー…リュイエンに急かされてやってきた訓練所にいた。
妖魔の能力以外にも、七人にはそれぞれ武器が与えられ、それの訓練もさせられているのだ。
普通妖魔は武器は使用しないらしいが、これについては研究員が考えての事らしかった。
外では毎日戦争が繰り広げられているのに、未だに能力訓練だの武器戦闘訓練をさせられている毎日。
研究員達によれば、まだまだ自分達はチラカを十分に使いこなせていないようだ。
「よし、次!ハービヒトとクロワーテル前に出ろ!」
「はいよー」
「…………」
研究員の声が無機質な部屋に響き、ハビとクロがゆっくりと立ち上がり部屋の中央へ歩いて行く。
それを横目で見送りながらマルが口を開いた。
「つーかアスカにゃまだ誰も勝ってねぇじゃねーかよ」
「んなコトねぇよ。レンにゃ負けたぜ?なぁ、レン」
「……あれはお主が転んだからだろう。私の実力ではないぞ」
「だはは!ダッセー!」
「うるせぇ!!」
「マール、失礼だぞ。アスカが一番強いのは事実だ」
そう言いながら、レンは彼に武器として与えられた横笛を口に当て、音は出さないまでも指で何かの曲を演奏するように動かしている。
ちなみに皆武器はそれぞれ違う物を用意されていた。
レンは横笛、マルはデカい扇子、そして自分には双剣。
何故こんなちぐはぐな、一見武器にも見えない物を選んだのか。
だが皆不思議と「しっくり来る」と使いこなしているので、人間だった頃と何か関連があるのかもしれない。
レンはその横笛を武器としてではなく楽器そのものとしても扱う。
その演奏は素人の自分でも分かる程に上手かった。
「レン、後でまた笛吹いてくれよ」
「あ、俺も聴きてぇし!」
「む。もちろんだ。では今宵」
レンの笛の音は癒される。娯楽も何も無いこの研究所での唯一の楽しみだ。
今夜が待ち遠しいなと思った丁度その時、床に何かが倒れ込む大きな音が響いた。
「そこまで!勝者クロワーテル!」
そちらを見てみれば音の原因は床に転がっているハビだった。
「お、終わったぜ」
「ハビ弱ぇ~!」
「つーかクロが強いんじゃねぇの?アイツすばしっこいし、先が読めねぇから俺は一番戦りにくい相手だな」
言いながらクロの方に視線をやるが、長い前髪と目深に被ったフードでやはり何を考えているのかは分からなかった。




