7
「いいな!?お前達は人族の戦死として敵地に赴くのだ!人間の為を想え!人間の為に働け!人間の為に戦え!!」
遂にこの日が来た。
俺達七人は今日、人と妖の戦争の最前線である北の大陸へ送り込まれる。
戦場は時には妖が人の住む南の大陸へ、時には人が妖の住む北の大陸へとそれぞれが侵攻する、そんな繰り返しが長い時代行われていた。
今現在はこちら側が敵地の北へと攻めているようだ。
「場所は敵の陣地、敵地の真っ只中だ!敵となる妖魔・妖怪がそこらじゅうに蔓延っている!お前達は彼奴らを弱らせ、我ら人族を善戦へと導く事が使命だ!」
もう何回も何十回も聞かされてきた言葉の羅列。毎日毎日。全部覚える程に。
「そして彼の地で今も戦いを繰り広げている我らが仲間の盾となり、彼らを守るのだ!」
たった七人で?
そう思うとどうしようもなく乾いて濁った笑いが込み上げて来る。
まだ外に出てもいないのに既に疲れた。
フゥに、会いたい。
さっき会ったばかりなのに。
***
『……アスカ?』
『フゥ』
『アスカ、どう、したの?なんだ、か……カナ、シイ?』
あぁ、お前には分かるのか。顔が見えていなくても。
『アスカ?』
『フゥ、今日で……しばらく、お別れだ』
カナシイ。
ツライ。
この冷たいガラスと液体の中から、お前を出してやれなかった。
それは仕方のない事だけど、でも、抱きしめたかった。
『どう、して』
『……戦いに、行かなきゃ』
『たたかい……?』
『あぁ。人と妖が戦ってる。長い間……それを、終わらせに行くんだ』
どうしようもない事。決められていた事。
あの日、目覚めてから。妖魔の身体にされてから。
『アスカ…とおく、いく?あぶない、とこ……いっちゃ、う?』
『ん……でも』
行かなきゃならないけど。
『俺は死なない。必ずフゥの所に帰ってくる。約束だ』
『……アスカ…わたしも、いく』
『フゥ?』
『はやく、ここ、でて……アスカの、とこ、いく……やく、そく』
なんだろう、なんだか、目頭が熱い。
『そうだな……約束だ』
『ん……やくそく』
それで、また逢ったら。
『俺、そん時にフゥに言いたい事あるからさ』
『なぁ、に?』
『ハハ、まだ言えねぇって』
また逢った時に言うから。
『じゃぁ、そろそろ行かなきゃ。またな』
『アスカ』
『―――お別れだ、フゥ』
ガラス越しの口付けは、どこまでも冷たかった。




