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「いいな!?お前達は人族の戦死として敵地に赴くのだ!人間の為を想え!人間の為に働け!人間の為に戦え!!」



遂にこの日が来た。


俺達七人は今日、人と妖の戦争の最前線である北の大陸へ送り込まれる。

戦場は時には妖が人の住む南の大陸へ、時には人が妖の住む北の大陸へとそれぞれが侵攻する、そんな繰り返しが長い時代行われていた。

今現在はこちら側が敵地の北へと攻めているようだ。


「場所は敵の陣地、敵地の真っ只中だ!敵となる妖魔・妖怪がそこらじゅうに蔓延っている!お前達は彼奴らを弱らせ、我ら人族を善戦へと導く事が使命だ!」


もう何回も何十回も聞かされてきた言葉の羅列。毎日毎日。全部覚える程に。


「そして彼の地で今も戦いを繰り広げている我らが仲間の盾となり、彼らを守るのだ!」


たった七人で?

そう思うとどうしようもなく乾いて濁った笑いが込み上げて来る。

まだ外に出てもいないのに既に疲れた。


フゥに、会いたい。

さっき会ったばかりなのに。



***


『……アスカ?』

『フゥ』

『アスカ、どう、したの?なんだ、か……カナ、シイ?』


あぁ、お前には分かるのか。顔が見えていなくても。


『アスカ?』

『フゥ、今日で……しばらく、お別れだ』


カナシイ。

ツライ。


この冷たいガラスと液体の中から、お前を出してやれなかった。

それは仕方のない事だけど、でも、抱きしめたかった。


『どう、して』

『……戦いに、行かなきゃ』

『たたかい……?』

『あぁ。人と妖が戦ってる。長い間……それを、終わらせに行くんだ』


どうしようもない事。決められていた事。

あの日、目覚めてから。妖魔の身体にされてから。


『アスカ…とおく、いく?あぶない、とこ……いっちゃ、う?』

『ん……でも』


行かなきゃならないけど。


『俺は死なない。必ずフゥの所に帰ってくる。約束だ』

『……アスカ…わたしも、いく』

『フゥ?』

『はやく、ここ、でて……アスカの、とこ、いく……やく、そく』


なんだろう、なんだか、目頭が熱い。


『そうだな……約束だ』

『ん……やくそく』


それで、また逢ったら。


『俺、そん時にフゥに言いたい事あるからさ』

『なぁ、に?』

『ハハ、まだ言えねぇって』


また逢った時に言うから。


『じゃぁ、そろそろ行かなきゃ。またな』

『アスカ』

『―――お別れだ、フゥ』





ガラス越しの口付けは、どこまでも冷たかった。



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