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『貴方、手を抜いてますね?』
『う…バレてた?』
リューのその一言で、背中に嫌な汗が一筋伝う。
この男はどこまでも鋭い。
『バレバレですよ』
そう呟いた言葉の後に、ご丁寧にも溜め息の音まで頭に流れ込んでくる。
だがリューが呆れるのももっともだった。
わざわざ出来る事を出来ないように見せかけるなんて。
『例え彼女の為でも、そろそろ連中に怪しまれますよ』
そう、これはただの稚拙な時間稼ぎ。
そんな事は分かっている。
『やっぱそうだよなぁ。すまねぇ、リュー』
『アスカの実力なら出来て当然の時間は経ってますからね。それに、貴方がそこまでしなくてもまだ多少時間は稼げますよ』
リューの意見にふと周りを見渡す。
七人の内、未だ能力を発揮できていないのは自分を含めて残るは三人。
中でもマルは苦戦しそうだ。
コツを掴むのが相当に下手なんだろう。
『だな。取りあえず俺も鉱属性だけ終らすわ』
『そうして下さい』
頭の中でリューの声が響いた直後、背中の方からやけに明るい声が聞こえて来た。
ハビだ。
「うお!見て見て~!俺も出来た~!」
「なにぃ!?マジか!ハビにまで抜かれるなんて…つかあと出来てねぇの俺とアスカだけじゃん!!」
そちらを見てみれば、手の平に幼鳥を乗っけて嬉しそうに破顔するハビの姿と、それを目にして焦りを隠せないマルの姿。
マルは眉を下げて困ったような表情をこちらに向ける。
どこかその顔には若干の期待の色が隠せていない。
でも、悪いけど。
「あ、ハハ、俺も出来たわ」
「マジでぇ!?」
マルは一気に期待を裏切られ、あからさまに肩を落とした。
「後はお前だけだな!まぁ頑張れや」
「うぅ……」
そんなのは口先だけで、本当は心の中では存分に時間を掛ければいいと思っていたなんて、リューにはバレバレなんだろう。




