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「さーな、って。はは、まさかペル好きになっちまったとか?」
「バカか」
「じゃー大穴でココの研究員!」
「ありえねー殺すぞ」
自己嫌悪だ。
なんでこんな奴に話を振ってしまったのか後悔のドン底だ。
それでも、この頭の軽い会話のお陰で何時ものペースが戻って来ていた。
「そもそも妖魔ってのは恋だの愛だのの感情に乏しいんだろ?」
「らしいな。つーかマルは昔でもそんな繊細な感情乏しそうだと思ってよ」
「なっ!どーいう意味だよ!!」
「ははっ」
そう、妖魔には恋愛感情というものが殆ど無い。
実際どの程度乏しいのかは知らないが、事実“恋”という言葉を忘れ、“好き”という感情にピンと来なかったのだからそういう事なのだろう。
だけど、俺は。
フゥが好き。
それは間違いない。
ではこの恋は?
これは俺の中の人間の記憶が「そうだ」と言っているだけなのか?
それとも今の妖魔である俺が持ち合わせている感情なのか?
「―――そんなのは、どうでもいい、か。」
妖魔だとか。人間だとか。
そんな器の問題は関係ない。
「あ?」
「いや、なんでもねぇよ。それよりマル、召喚出来たのか?」
「ぐ…っ!」
これ以上この話題はマルとする意味も無い。
面白がられるのは目に見えている。
多少ムリヤリ話題を変えてもマルなら問題ないだろう。単純だ。
「つーかてめぇも出来てねぇじゃんかよ!」
「まぁなー。まだレンとクロだけか」
「そーだな。ってか、このカラダにすんだったら最初っから全部チカラ使えるようにしてくれりゃいーのによ」
「ま、そんな何でもかんでも上手くいかねーってコトだろ」
当初は自分もマルのように思っていた。
早く戦場とやらに行って、為すべき事をし、ココに戻って。
「さーて、次はその問題の召喚訓練だろ?ちゃっちゃとやろーぜ」
「だな」
「これが出来りゃ、いよいよ戦場だ。俺達には…目的があんだろが」
「……あぁ」
目的。
それは今でも変わらない。
だけど、今は少しでもいいから時間を稼ぎたかった。
フゥが目覚める前に俺はココから出ていかなきゃならなくなるかもしれない。
正直それは嫌だから。だから、早く出てきてくれ。
もう、時間が無い。




