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ごぽっ


ごぽぽ……


相変わらずのコードやらパイプやらが散乱した床に、それらが伸びる先の青い液体から漏れ出す空気の音。

そこに静かに佇む女の影。

以前と何も変わらない光景に若干眉を寄せる。


「この方が…フゥさん?」

「あぁ。まだ痛々しいけどな。ちょっと待ってろ」


フゥを見つめるリューにそう告げ、頭の中でいつものようにフゥに呼びかける。


『フゥ?』

『アス、カ……?』

『悪いな、こんな遅くに』

『ん…だいじょ、ぶ』


フゥは呼びかけにすぐ応えて来たが、やはりその声はどこか眠たそうな響きが混じっていた。若干申し訳ないと思いつつもこんな時間にしかここには来られないのだからこればかりは仕方が無い。


『今日はさ、前に連れてくるって言ってたヤツもいるんだ。リュイエン…俺らはリューって呼んでる』

『リュー……?』

『フゥもこの距離なら話せるかもしんねぇから、ちっと待ってろよ』


そして一度意識を戻し、横にいるリューへと視線を合わせる。

だがリューはこちらを向いておらず、何やら散乱しているコードだのそこら辺に張り付いているパネルだのを懸命に見ているようだった。


「リュー、何してんだ?せっかくだからお前も話せるか試してみろよ」

「あ、すいません、ちょっと気になって…じゃあ私もやってみますね」

「あぁ」


……

………


ヒマだ。


見た感じ目を瞑ってじっと佇んでる様子からすると、リューもフゥと会話が出来ているように思える。

だがただ待っているだけというのはどうにも暇だ。

なのでふと思いついた事を行動に移してみる事にした。


『おーい。二人ともちゃんと喋れたか?』

『おや、アスカ』

『アスカ……』

『お、通じたじゃん』


何も頭の中で会話出来るのは二人だけ、とは限らないのじゃないかと思って自分も割り込んでみたのだが、どうやら三人での会話も可能なようだ。

今までは全てフゥが相手での会話だったが、ならば自分とリューの二人だけの場合はどうなのだろう。後で試してみる価値はありそうだ。


『リュー、アスカ、いったとおり…ひと』

『ん、だろー?』

『なんて言ったんです?』

『やさ、しくて…しんらい、できる、ひと……』

『そんな事言ってたんですか?』


そう言って一度こちらに目線を投げるリューに、ニッと笑みだけを返す。


『リュー、アスカと、おなじ…しんらい、できる……』

『…ありがとうございます』

『なに、リュー照れてんの?めずらしーな!』

『何言ってんですか。私だって照れるくらいします』

『はは!いやー、あんまりこんなリュー見た事ねぇからさ』

『ふふ……』


その時ふと聞こえてきた柔らかい声に、思わずリューと目を見合わせた。


フゥが、笑った。

普段は話していても笑う事の無いフゥが、僅かではあったが声を出して笑っていた。


『フゥ…お前、もっと笑えよ』

『わら、う……?』

『あぁ。今みたいに声出してさ。フゥが笑えば俺も嬉しいし』


実際に見える表情が笑顔になる訳ではないが、声だけだって笑っていた方がずっといい。

こんな冷たい水からさっさと出て、自由になったらもっと。

フゥはどんな顔で笑う?どんな表情をする?

早く、見たい。

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