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――――……
「?」
今……
『―――?』
聞こえる。
確かに。
『おい!聞こえるか!?アンタ無事なんだな!?』
『ァ……カ?』
『そうだよ、アスカ!覚えてんだな!?どうして今まで声聞こえなかったんだ……!?』
『アスカ……よ、かった。きこえる……』
『あぁ、俺も聞こえる。良かった……ホント良かった』
アンタの声が聞けて。
こんなに安心したのは初めてかもしれない。
『なぁ、何があった?とにかくアンタ無事なんだな?』
姿も見えないし何処に居るかも分からない。この声でしか存在を知ることが出来ない。声が聞こえなかった間、一体何があったのか。
またいつ突然聞こえなくなるかと思うと、焦燥感が沸き起こる。
『ぶじ……けど、あのあと……ねむって、た』
『眠って……?』
『アスカとはなして、て……きゅうに、ぼーっとなって……きがついた、さっき』
急に意識が遠くなったという事か。こんな事が頻繁に起こっているのか?
『前にもあったのか?長く眠っちまうって事』
『わか、ら、ない……』
『そっか……』
理由は気になるが、無い頭でいくら考えても答など出ない。
他にも気に掛かる事は有るが、とりあえず何所かがおかしいとかそういった不調は感じられず―――というより以前と同様に頭の中で語りかける事しか出来ないようだった。
そして、思い出す。大事な事を聞き忘れていたと。
『なぁ、アンタの名前は?』
『ナ、マエ……?』
あれからずっと聞けず仕舞いだった名前。
『そう。前も聞いたろ?あん時は邪魔が入って聞けなかったからさ』
『…………』
覚えていないのだろうか。その可能性は十分にあるとは思ったが。
だが、少しの沈黙の後に聞き取れるか取れないか程の小さな声が零れた。
『………フゥ……?』
『フゥ?』
『よく、おもい……だせない』
『でもそれが浮かんだんだろ?名前の一部なのかもな。よし、んじゃこれからアンタの事フゥって呼ぶから……いいか?』
『うん』
心なしか、その応えは嬉しそうなくすぐったそうな響きが篭っているように聞こえた。
それは自分が嬉しいと思っているからかもしれない。ずっと知りたかった名を知れた今、感じるのは確かに嬉しいという感情だった。
フゥが全てを思い出せないのは、まだ意識が完全に覚醒してはいない為だろう。まだ言葉もたどたどしく子供のような印象が抜けない。
そもそもが子供なのかもしれなかったが、それは無い。
そんな気がした。