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あれから五日経った。
今日もまだあの声は聞こえてこない。
顔も知らないし名前も判らず仕舞い。どんなヤツなのか全く判らないのに、何故だか凄くあの声の主が気になる。
あの声が聞こえないと落ち着かない……これは不安なのだろうか。
心配、しているのだろうか。
「はぁ……」
「どうしたんです?ここ数日は溜息ばかりですね」
「あ?……あぁ、ちょっとな」
「あの時言っていた“声”、でしょう?貴方が元気の無い原因は」
「―――は?」
「違いますか?」
そういえば……リューには問うた事があったのだったと思い出す。
あの“声”が聞こえないかと。
だがそれを差し引いてもリューは色々と鋭く、常に周囲を良く見ている。
七人の中でも一番礼儀正しく、一番穏やかで一番人当たりが良い。
―――ように見える。
あの一件以来、それは表面上そう見せているだけで、胸の内は結構なモノが巣食っているようだと気付いた。
「分かるか?」
「まぁそうじゃないかな、と。憶測に過ぎませんが……何かありましたか?あなたの様子から結構最近は話せていたんじゃないんですか、その声の主と」
「……鋭すぎ」
「あはは、そうですかね。まぁ貴方は顔に出易いですから……で、何があったんです?」
顔に出易いと言われ、思わず頬に手を添えてしまう。
自分では全く自覚が無かった。
「いや……あれからずっと毎日声は聞こえてたんだ。段々会話も出来るようになってた。けど……」
「けど?」
「ここ五日くれー全く声が聞こえねぇ。いくら呼んでも何も返って来ない」
一体どうしてしまったのだろう。
何故何も……何も一言も聞こえて来なくなったのだろう。
「そうですか……なんだか心配ですね」
「心配……?そう、だな。俺……やっぱり」
心配している。
あの声の主の事を。