闇医者と死神
……気のせいだろうか。いま少女の口からものすごく物騒な言葉が聞こえた気がする。
大抵の裏社会の人間は狂っているからあたり前といえばあたり前なのだが……聞き間違いであってほしいと荊は思った。
(けど無理だろうな……)
なにせ千棘の妹だ。そのへんの奴らよりも狂ってるかもしれない。いまだってドライバーを握ってこちらの様子をうかがっている。おそらくこの妹は兄のためならば平気で人を殺すだろう。いや、もう何人も殺しているかもしれない。
「大丈夫だよ千影。荊君は味方じゃないけど信頼できる。裏社会で一番といってもいい」
千棘は部下の持ってきた紅茶をすすりながらにっこり笑って言った。
「……こいつ、龍川組と、つながっている……」
どうやら千影は必要最低限の言葉しか口にしないようだ。表情もはじめから変わっておらず、まさに無表情と言っていい。しかし、その瞳には荊への殺意がうずまいている。
「ああ、まあつながってはいるけどあっちの味方ってわけでもないからね。安心していいよ。荊君はそういうのわきまえてるし、もしあっちに脅されたりしても絶対に味方にはならない。闇医者として仕事をするだけさ。」
あくまで中立にいるのだと説明すると千影は納得したのか手に持っていたドライバーをしまう。しかしそのあとの一言がいけなっかた。
「それに……彼のことは気に入ってるんだ。」
その瞬間、千影の瞳は不信から嫉妬の色に変わった……。
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今日は顔合わせだけだったようだ。簡単な自己紹介だけをして闇薔薇のビルをでる。
しばらく進むとポケットの中の携帯が振動した。着信音を響かせるような馬鹿な真似はしない。そんなことをしたら自分から居場所を教えてるようなものだ。(とくにチンピラにからまれるとめんどうだ)
「はい、月坂です。」
黒の、仕事用の携帯をとりだし(プライベート用は白)耳にあてる。
「……はい。わかりました。」
内容は仕事の依頼だった。荊は携帯をしまうと白衣をひるがえして歩き出す。
「めんどうなことになりそうだ。」
依頼主は荊をはじめて利用する。はたして荊のことをどこまで知っているのか……
はぁ…とため息をはいて依頼主がいるという今は使われていない駐車場をめざす。
そんな彼をみつめるのは影の中の存在とふたつの人影だった……。
読んでいただき、ありがとうございます!!
やっと荊に仕事をさせることができます。
ちょっとした波乱の予感もしますが……荊の実力はいかに!?
それと、メインは闇医者の話なんですけど悪夢とはなにかということもテーマにしていますので、そっちにも注目してみてください。
こんな駄文ですがこれからも楽しんでいただければ幸いです。