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異世界の伊東家たち  作者: 織姫彦星
初めての冒険編
2/36

第2話「そして俺たちは」

 ――ピピピッピピピッ!


 朝の目覚めを告げる目覚まし時計が鳴る。

 なんだか、長い夢を見ていた気がする。

 俺は働かない頭で、目覚ましを止めると

 ぱっと窓のカーテンを開けて、外を確認した。


 そこには……


 おーおー、夢じゃないのねと分かる景色が広がっている。


 まだ人は少ないが、確実に一昨日まで見た景色とは違うその光景に

 内心は辟易しつつも、なんとなく納得してしまっている自分を

 褒めてあげたいと思う。


 ゲームじゃおなじみの耳の長い綺麗なレディ。

 うさみみ、犬耳、猫耳の人。

 妖精さん、ドワーフっぽいおっさんなどなど。


 その下の玄関口を見ると、昨日からお泊り警護だったのか

 兵士姿の人間も見えた。


 そして、ベッドから立ち上がり着替える。

 昨日あれから、その玄関口にいる兵士に

 マーガスさんとの次の面談日程などを聞いたら

 今日も会ってくれるとのことで、

 家長であるオヤジ、それからオフクロが向かうことになっている。

 オヤジ以外では唯一の男手で年長の俺は家で待機だ。


 蝋燭を無駄にするわけには行かないと、

 俺とオヤジで水風呂に入ったときに決めた。

 最初は抵抗感があったものの、幸いにも気温は

 季節柄にも暖かかったためするっと入れたのはよかった。

 俺が残る案は、日本とはあきらかに違うと感じたため、

 治安を考えてのことだ。

 まぁ、腕っ節の強い麻美もいることだし、問題はないだろう。


 が、先ほど見えた光景に武器屋らしきものが見えたので、

 刃物が日常かされている可能性も考えられることに油断は

 できないとも考えられる。

 色々と考えることはあるがともかくまずは……


 俺は一階に降りると、もうすでに

 起きていたらしい妹二人に挨拶をした。


「おはよー。はやいな~お前ら。」


「おはよう、お兄ちゃん。」


「ん。」


 反応は様々だが、まぁいつものこと。

 俺はつぐみの側に行き、屈むと悠斗にも挨拶する。


「悠斗、おはよー。今日もお前は可愛いなー!」


 そういうと、悠斗もだぁ~♪と可愛い声をあげる。

 よしよしと頭を撫でると、


「どうだ?食料は。」


「うん。冷凍庫の氷でなんとか……これも冷凍庫に冷凍食品なくて幸運だったからだよ。」


 昨日あれから、一通り俺への制裁、説教なんでもござれを終えた

 オフクロたちで電気の止まった冷蔵庫の整理をしていた。

 幸いにも、冷凍食品は次の日に買う予定ということでなかったので、

 まだ溶けてない氷を使い、冷蔵庫の食品を冷やすことにしているが、

 それもたかがしれているので、今後今日の話し合いで決まるものだと思う。


 ちなみに昨日は七輪で料理を作っていた。


 もちろん庭に出て、魚やら、肉やらを焼いていたので

 うちの周りはさながら、駅前の居酒屋が放つ焼き鳥の匂いのような

 空気に包まれていたことだろう。近くを歩く人に、何あれ的な視線と

 ともによだれなど共に、色々と注目をされていた。

 食べながら、じっと見ている獣人を指して

 肉に困ったら……げふんげふん、辞めとこう。


 明日の分も腐らない範囲で作っておきましょうかと用意した

 おにぎりを今は朝食として食べている。

 七輪でご飯なんて炊けるのかと驚いたもんだ。


「あ…そうだ。お兄ちゃん、これ見て」


 そういうと、つぐみは自分の財布から何か丸いものなどを見せた。


「なんだそれ?硬貨……って感じじゃないよな。」


 十円玉よりも深い土色の硬貨っぽいものや、五百円玉より少し小さい

 銀色の硬貨っぽいものまである。

 はっと俺は自分の部屋へ戻り財布を取って戻ってくる。

 そして、あることに気づいた俺はちゃぶ台にぶちまけた。


「こ、これって……」


 そう、紙幣が入ってた財布と小銭入れからもつぐみが見せたようなものが

 出てきた。キャッシュカードやレンタルカード類はそのまま変わらずにあり、

 状況としては間違いなくこれがこの世界の通貨だっていうのが分かる。

 仮に違うとしたら、こういいたい。お金を返せと。

 ……使えないだろうけど。


「お兄ちゃんもそうなら、これが昨日言ってたお金って

 解釈でいいんだよね?」


「そうとしか思えないかも。あたしのもだし。」


 麻美も持っている財布から同じように硬貨を出す。

 それらをちゃぶ台へ広げると、考える。

 これはあれだろうか?俺たちがこっちに来たのと同時に

 こちらの通貨に変化した感じ?

 難しいことは知らないが、為替が変わるとかそんなやつ。


 改めてみると、昨日説明された銅貨、銀貨がある。

 計算すると、金貨はもちろんのこと、白金貨はないだろう。

 なんせ金貨は一枚三十万と白金貨は一枚三千万くらいの価値だ。

 オヤジたちが持っている財布もこの分だと変わってると考えて間違いない。


 これがお金としてとりあえずは今後の生活においては問題ないかもと

 考えるが、ふとある問題もあるのに気づく。

 それはこの世界の物価が分からないことだ。

 そして、保留になっている税?だっけ。

 俺は学生なので全く分からんのだが、なんか大事なことのような気がする。


「これだけのお金で一体、どれくらいの生活ができるんだろうな。」


「食料だけじゃなくて、生活に必要な洗剤とかそういうのも必要だと思うし」


「シャンプーとボディーソープと化粧水がないと、始まらないわ!」


 そんなことを口々に、色々思うところをだしあう。

 麻美は完全に自己中だが。


「とりあえず近くに商店街もあるし、様子見がてら回ってみよう。

 兵士さんに言って外で住人のみなさんに聞いてみるのもいいだろうし。」

「お父さんたち待たなくていいの?」

「いいでしょ、それこそ兵士さんたちに言っとけばいいんだし。」


 とりあえず、ここで待ってても仕方ない。

 そう思った俺たちは、玄関口で警護をしてくれている兵士さんたちに

 言伝を頼み、外へ探検にでることとなった。

 そういや、兵士さんたちが警護している理由についても、

 マーガスさんが話してたな。


 渡界人とはそもそも異世界から来た人のこと、つまりはその世界の文化を

 常識として考えてくるが、それがこちらの常識であてはまるかというと

 そうでもなく、家の建築様式やら俺らの見た目なんかは初めて見るものらしく

 そういった保護の目的もあってということを聞いた。


 そうだよな、電気なんて使ってなさそうだったし。

 昨日、入ってからもキョロキョロと見ていたが、やはりというか

 ランプに火を灯し、それを灯りとして使っているかのように

 部屋にも、各所にもそれらしきものが見て取れた。

 こういった文化の違いを見ると、つくづく自分たちはアウェイだと

 思ってしまう。


 そんなことを考え敷地の外に出ると、

 やはりというか人種がいっぱいいることに驚く。

 もちろん昨日や今日窓からも見ていたため、そこまでというものではないが

 つぐみはうさぎの獣人の子供を見て、目をうるうるさせているし

 麻美に限っては、なぜか拳を握ってネコ?ヒョウ?の獣人を睨んでるし、

 ケンカを売ろうとするな。

 いくら、ネコ嫌いだからって……。


 そんな感じで俺たちは、目新しいものを見ながら野菜やら

 魚だろうか肉屋もあるそんな商店街らしいところを練り歩く。

 似たような食材もあれば、見たこともないものもある。

 なんかこう考えると、本当に違うところへいるんだなと思う。

 そして改めて自分のバカさ加減に腹が立つ。


 今考えれば、ちゃんと考えておけばよかったと思う。

 先ほどまで考えてた通り、俺たちは物珍しい渡界人。

 そして、ここは日本じゃない。

 それが何を意味するのか。


 それは少しわき道にそれて戻ろうとしたときに起こった。

 がつんっと頭に衝撃を受けた俺は、咄嗟に自分の命よりも

 妹たちを思い、意識を失う前に見た妹たちの悲鳴に

 逃げろっと思いながらも抵抗できずに暗闇に溶けていった。


 こんなことが起こりえると考えてなかった自分のバカさ加減を呪いながら。

誤字、段落訂正(3/25)

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