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(六)吉田と林田、喜ぶ

 ホーサイレイがラジオや『歌のリラックス』などメディアにちょくちょく出るようになると、新しいファンがつき始めた。

 デビュー当時からのファンの人たちが作っている私設だが吉田プロ公認のホーサイレイファンクラブ「マンマンデェ」の会員が増えた。

 158人だった会員数が450人になったと、ファンクラブ会長から連絡がきた。

 二ヶ月前にリリースしたシングルCDも最初一万枚にも満たなかったものが、四万枚も売れ、過去のCDも徐々にだが、売れ始めていた。


 この情況を林田に報告しに行った吉田社長は、病室で林田と共にうれし涙を流した。

「あいつらもやればできるじゃないですか、社長!」

「だよな、だよな。うんうん。夏木も頑張ってるよ、林田くんの遺言を受け継いで一生懸命だ」

「……いやいや、社長、僕、死んでませんし、今のところ、死ぬ予定もないんですけど!」林田は真顔で返した。

「……だよな、だよな。んがはははは~。わるいわるい。でもうれしいなぁ。あいつらも自分たちの歌を多くの人に聴いてもらえる喜びを、最近感じてきてるみたいだしな」

 吉田は、自分で持ってきた見舞いのマスクメロンを勝手に切り、食べながら言った。


「やはり、僕がもっと早くにあいつらのやる気を見出してやっていれば…。反省してます」

 体を動かせず、寝たままそう言った林田の口に吉田は、一口大にカットしたメロンを放り込んだ。

「ほ、ふみまへん(あっ、すみません)」



「何も林田くんが反省することないよ。もっと早くにとか、もっとあとにとか、そんなもんは関係ない。何事にも時期というものがある。ホーサイレイは、その時期っていうやつが今やってきたんだよ。それに、あいつらは林田くんに頼りきっている、見てるとわかる」

「社長…」飲みこんだメロンが涙で少ししょっぱい林田である。

「あいつらが、この五年間の間に辞めたいって言ってこなかったことは、ありがたいな。ぼくは、吉田プロダクションに所属する人間…、タレントだけじゃないぞ、マネージャーやスタッフみんなもだ、全員が楽しく毎日を過ごしてくれることが、ぼくの一番の喜びだ。だが、あんだけ長い間、ただ飯食ってるやつらは、あいつらだけだが、な。あはははは~」

「社長―。僕は一生、吉田プロに付いて行きます! あいつらの面倒も見ます!」

 林田の目から涙がこぼれた。が、体固定のため拭うことができず、流れっぱなしだ。

「あはは~、頼んだぞ! 林田くん!!」

 林田の涙に吉田もまた笑いながら泣き、寝ている林田の胸元をバンバンとおもいきり叩いた。

「うっぎょーーーーー」

「あっ…………」

 林田の嬉し涙は、苦痛の涙に変わり、退院が少し延びてしまった。




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