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第4話 「木を隠すなら森のなか」

  

 


挿絵(By みてみん)




 ■ ■





 翌朝。

 ツヅミは学校の帰りに、となりの町へ向かった。

 

 15分ほどバスに揺られ、到着したのは木造2階建ての一軒家。

 大好きな、おばあちゃんの家だ。


 ここには、祖母とおじさん夫婦の3人が住んでいる。一人娘のサクラお姉ちゃんは、今年の春から東京の大学に受かって家を出ていた。


「こんにちは、こんにちは」


 ツヅミが玄関で呼びかけると、庭からおばあちゃんが来てくれた。



「おやツヅミじゃないか。ひとりで来たのかい」

「うん」


「大学の帰りかい。ずいぶん早いんだねえ」

「あたしまだ小学生だよ。大学はサクラちゃんだよ」


「そうだったかい? あ、そうそう。ビスケットがあるから上がんなさい」

「うん」


 居間に通されると、ケーキが出てきた。

 ビスケットより好きなので文句などないが、さすがにギョッとしてしまった。話がちがう。


「おいしいかい?」

「うん」



 ツヅミはうれしかった。

 びっくりしたからだ。


 事前の話とちがう、これこそ人間を驚かせる基本ではないか。


 (とう)のおばあちゃんは、ケーキをビスケットと言ったことさえ覚えていない。それに、さっきは小学校と大学を間違えた。


 前にママが、認知症とかいう病気だと言っていた。おばあちゃんが病気になって悲しいが、ツヅミに優しくしてくれるのはぜんぜん変わらなかった。


 

 本当は、昨日家でなにがあったのか話したかった。

 どれだけつらい目にあったか聞いてほしかった。


 でも、できない。

 病気のおばあちゃんに、余計な心配をさせるわけにはいかなかった。


 というか事実をありのまま話したら、おばあちゃんにも怒られるような気がした。

 さすがのバ……ツヅミでも学習していた。


 いや、今日はそんな話をしにきたのではない。



「おばあちゃん、前にあずかってもらった箱あるでしょ」

「箱? なんだい、箱って」


「ほら、ビックリ箱。いっぱい持ってきたやつ」

「知らんよ。なんの話?」



 これだ。


 荷物がビックリ箱だということは、半年前にもちゃんと説明したはずだ。そのうえで預かってもらったのだ。

 しかし箱の存在どころか、預かったことさえ忘れている。


 おばあちゃんなら、自分の作ったビックリ箱に驚くなど、造作もないことだろう。ある意味、ツヅミはうらやましかった。



「おじいちゃんの部屋に行っていい?」

「ああいいよ。でも気をつけるんだよ」



 この家の裏手は、かつて会社の作業室だった。亡くなったおじいちゃんが(いとな)んでいた歯科技工所のだ。


 おじいちゃんは腕のいい歯科技工士だったそうで、何人か職人さんも雇ってたって聞いた。亡くなったときに廃業して、いまは(あるじ)のいない作業室に、かつての仕事道具が保管されているばかりだ。


 作業場には、いまもたくさんの機械が残されている。そのすべて、なにに使う道具なのかさえわからない。

 でもツヅミは、それらを見ているだけでわくわくした。ツヅミの工作への情熱は、間違いなく祖父の遺伝だろう。



「あったあった」


 作業所の(はし)っこに積み上げられたビックリ箱は、預けたときのままだ。

 ぜんぶで50個。

 自信作の、101号から150号だ。




挿絵(By みてみん)





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イタいぜ!



チャッカマン



チャッカマン

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