第23話 「親の心を子は知らず」
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翌々日。
仕事から帰ったパパは、深刻そうにツヅミに言った。
「ツヅミ……明日学校が終わったら迎えに行くから、校門で待ってなさい。なんか大変なことになったぞ……」
パパは、市役所の市民課で働いている。
ところが今日、地域福祉課の課長さんが、ツヅミに会いたいと言ってきたそうだ。地域福祉課と言えば、市の募金活動の総括窓口ではないか。
まさか娘の一件で訓告処分かとビビったが、それなら本人まで連れてこいというのはおかしい。
とにかく次の日。
親子ふたり、死刑判決を聞きに行くような心境で、びくびくしながら市役所の会議室へ向かった。
そこには課長さんだけではなく、市長さんまでいたからブッたまげた。
「お、お父さんは関係ないんです! ぜんぶあたしのせいなんです! ウワー、オエオエオエオエ……」
かわいそうに。
ツヅミはパパが解雇されるものと思い、大泣きしてしまった。
そうではなかった。
なんとツヅミは、市長さんから直々に、募金箱の製作をお願いされたのだ。
ひったくり犯の逮捕に協力したニュースのおかげで、市の募金活動にも注目が集まったらしい。
平年の、ゆうに3倍以上の寄付額が集まっているそうだ。
さらに事件の動画もネットでバズり、たいへんな反響となっていた。
「なんなんだ、この子は」
「コーヒー仮面が空気抵抗で輝いて見える」
「犯人も気の毒に。執行猶予つけてやれよ」
「この先生、生徒置いて逃げてんぞ」
とにかく反響があった。
市としても、これを逃す手はない。
市役所のロビーに募金箱を設置し、あのニュースの子が作りましたとPRしたいというのだ。
パブリック・リレーションズしたいというのだ。
その、あれだ、広報ね。
すなわち。
ビックリ箱みたいな募金箱を、ツヅミに作ってもらいたい。そしてゆくゆくは、総合体育館や図書館にも置きたいというのである。
「いえ、うちの娘にとてもそんな大役は。申し訳ございません」
パパは礼儀正しく断った。
わずか1秒で。
本当なら、市の正職員の立場で拒否できる話ではない。だがツヅミの製作物で、今度こそ死人でも出たら取り返しがつかない。
娘の将来を思い、断った。
ツヅミはちがう。
どこまでも空気の読めないツヅミは目を輝かせた。自分が失墜させてしまった箱崎家の名誉を回復する、またとないチャンスではないか!
「やっ! やっ! やりま、やりまくり、やらせてくだくだくだ!」
興奮しすぎて日本語にならなかった。
どうにか声をしぼりだし、肯定の意思を示そうとがんばる。
「やりま、がんば、一生懸命懸命懸命……!」
「申し訳ありません、娘もできませんと言ってます」
通訳するパパ。
「ちょっ! ちが、ちがいま、おけおけおけおけおけ!」
「黙るんだ、黙りなさい」
泣きじゃくる娘と、鬼の父。
「待ちたまえ、箱崎くん」
「お嬢さんの話も聞いてあげなさい。なんということだ」
困惑するえらい人たち。
急に不安になってきたようだ。




