第21話 「極刑をもって臨むほかない」
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さて。
募金活動がめちゃくちゃになって、午後……
ツヅミが両親にどれほど怒られたか、すべてを記すことはとてもできない。
ただただ、地獄の一語だった。
パパとママは、学校、警察、駅、牛丼店、同級生の家々、犬の散歩してた人のお宅を訪問し、娘が娘がと涙ながらにお詫びした。
もちろん謝罪にはツヅミも連行され、最後に松崎くんの家に謝りに行ったときには、もう夜10時を過ぎていた。たいへん迷惑がられた。
バイクに乗ってた人は救急車で搬送されたと聞き、病院までお詫びに行こうとした。
だが警察は、頑として被害者について教えてくれなかった。
皮肉なことに、その警察署にお兄ちゃんはいた。
ノーヘルで原付に乗ってるところを補導されたのだ。バイクのフロントは、バキバキに割れていた。
だがお兄ちゃんは、なぜ自分がバイクに乗ってたのか、どこで手に入れたバイクなのか、なにもわからないと供述した。
ていうか自分の名前も思い出せなかった。ショック性の、一時的な記憶喪失である。
夜8時にすべての記憶を取り戻したものの、何度かけても両親が電話に出ない。しかたなく、伯父夫婦が身元引受人として呼び出された。
そして翌日。
土曜日。
親族一同がおばあちゃんの家に集まり、ツヅミの今後について会議が行われた。
両親はツヅミを修道院に預け、自分たちも出家すると主張した。その顔は完全に憔悴していた。
いくらなんでもそれは……と親戚全員が説得したことで、どうにか思いとどまらせた。
そして5時間におよぶ話し合いの末、ついにツヅミの処遇が決まる。
① 一生、工作にも料理にも裁縫にも関わらせない。
② 一生、アニメ、ゲーム、漫画、ネットを禁じる。
③ 学習塾に週7日通わせ、一切の自由時間を与えない。
④ 毎年の夏、冬休みは、禅寺に泊まりこみで精神修養をさせる。
⑤ おじいちゃんの作業室は取り壊し、費用は箱崎家が負担する。
⑥ その費用はツヅミが就業して以降の給与から、家族に返済する。
⑦ 返済が完了するまで恋愛を禁じる。
判決を聞いてツヅミは気絶した。
状況が変わったのは、さらにその次の日。
日曜。
家族の会話が完全にとだえた箱崎家に、あろうことか刑事がやってきたのだ。すさまじい強面の刑事さんだった。
彼の来訪により、事態は急変する。
「あたしはみんなに喜んでもらえると思ったんです!」
「もう二度とビックリ箱は作りません、ウワー! オエオエオエオエ……」
かわいそうに。
ツヅミは自分が少年院に送致されるものと思い、大泣きしてしまった。
そうではなかった。
このたび、ツヅミとお兄ちゃんに感謝状が贈られることに決まったという。
もう一度言う。
箱崎兄妹に、警察署長から感謝状が贈呈されることになった。
バイクでお兄ちゃんを撥ねたひと。
彼は、ひったくり犯だった。
それも県内各地で犯行を重ねていた常習犯だという。
あの日も団地通りで主婦のハンドバックを強奪したが、これをたまたま向かいのアパートの住人が目撃。
駅方面に逃走したとの通報により、ただちにパトカーが出動し……
あとは知ってのとおりである。
逃走する犯人のバイクの前に、偶然、お兄ちゃんが転倒したのだ。
あのとき、あまりにもタイミングよくパトカーが来たのは、そういうわけだ。
ツヅミの件とは関係なかった。
ひったくり犯を追跡していたら、犯人が人身事故を起こして倒れていたという顛末である。
その原付バイクも盗んだものだったそうで、これまた盗まれたナンバープレートで偽装されていた。いわゆる天ぷらナンバーである。
病院に担ぎこまれた犯人は、全身7か所を骨折し重傷。
絶対安静の入院中ではあるが、道路運送車両法違反、21件の窃盗罪、3件の強盗傷害罪、過失運転致傷罪で逮捕された。
退院後ただちに拘置されるそうだが、こんなロイヤルストレートフラッシュみたいな罪状では、実刑は免れないだろう。
それだけに、犯人逮捕につながったツヅミらの貢献は大きかった。
もちろん、お兄ちゃんも人身事故の被害者ということになる。そんなわけで刑事さんは、被害届の提出を求めにやってきた。
あわせて、感謝状が贈られることを教えてくれたのだ。
なんと贈呈式には、新聞、テレビの取材も来るというではないか。
「いやいやいや! 感謝状なんてとんでもない!」
「もうこれ以上、世間さまの注目を浴びるのだけは……!」
パパとママは、何度も何度も辞退を申し出た。
しかしその日の午後には、もはや断れる状況ではなくなってしまった。
なんと事件の映像が、夕方のテレビのニュースで放送されたのだ。
「つづいてのニュースです。おととい、○○市の駅前で、連続ひったくり犯が逮捕されました。逮捕の決め手となったのは、付近の小学生が携行していたビックリ箱でした」
ニュースを見た箱崎家の4人は、全員ズッコケた。




