第20話 「兄妹の一刃は鬼をも滅す」
ポポポポポポーン!
スポポポーン!
ツヅミの募金箱が炸裂する。
四方八方、めちゃくちゃに爆散した。
ドドドドーン!
パーティークラッカー20個分の紙吹雪やリボンが、駅前道路に飛び散る。つづけて、大小さまざまなぬいぐるみが飛び出した!
さらに、コーヒー仮面の人形が発射される。
ミサイル弾のごとく撃ち放たれたコーヒー仮面は、津山くんの募金箱を貫通してどっか飛んで行った。
「わ―――!」
「ぎゃあ!」
「どわあぁ!」
「キャ―――!」
「エミリア!」
「ほんがにゃい!」
すさまじい絶叫が駅前に轟く。
安全装置がかかっていたのに、なぜ……?
奇跡である。
いや、悪魔のイタズラである。
666号の安全装置は、道路に投げつけられたショックで壊れてしまった。
そして。
筒に詰まっていた千円札のストッパーは、お兄ちゃんの投入した2枚によって、ついに決壊したのだった。
はやい話、筒に溜まってた硬貨が、ぜんぶ一気に流れ落ちた。
すべての作動スイッチにだ。
どの仕掛けが作動するかわからないのが666号の真価……とかじゃなくて、ぜんぶ作動した。
ポポポポーン!
ポポーン!
最後のしかけも発動した。
バラの花びらが一面に舞い、横30センチ、縦1メートルほどの垂れ幕が天に向かって放り出される。
ポポポポーン。
コイルバネの反発力で広げられた垂れ幕には「募金ありがとう」と書かれている。つづけて領収書まで飛び出した。ひらひら。
「うわあ―――!」
「ぎゃあ―――!」
「バーニング!」
腰を抜かすツヅミ。
まわりの友達もドミノ倒しにひっくり返る。石原先生は券売機のところまで逃げていた。
犬を散歩させてたひとが、リードを放り投げてすっ転ぶ。犬も驚き、目の前の牛丼チェーン店へ駆けこんでいった。
マモルお兄ちゃんは車道側へ転倒し、通りかかった原付バイクに撥ねられた。
その原チャに乗ってた人は、衝突の勢いでコーヒー仮面みたく吹っ飛んでった。2回の前方宙返りをして、郵便ポストに激突する。
彼の持ってたカバンが空を舞った。
「びっくりした! ああ―――ビックリした!」
もはや原型をとどめない募金箱を持ったまま、ツヅミは絶叫していた。
い、息が止まった!
驚いた。
ああ、驚いた。
そしてようやく、目の前の惨状を理解する。
「あ、あ……ど、どうしよう……!」
クラスのみんなは、アイタタとか言いながら、団子状態で転がっている。石原先生も券売機のところでコケていた。
牛丼屋からは、犬が犬がと悲鳴が聞こえてくるではないか。
やがて、駅員さんが3人もやってきた。
お兄ちゃんはなにがどうなったのか、自分を撥ねた原付バイクにまたがり、そのままノーヘルで走り去ってしまった。
もともと原付に乗ってた人は、俺のバイク俺のバイクと叫びながらあとを追おうとし、力尽きて車道にぶっ倒れた。
彼のハンドバッグが、電柱のてっぺんにぶら下がっている。あれじゃ取れっこない。
その数秒後である。
サイレンを鳴らし、パトカーがやってきた。
「ああ、か、神さま……」
自らの所業におびえるツヅミ。
ようやく、自分のやったことを自覚しはじめた。
なんてこと。
なんてことになってしまったの。
数分後、駅員の通報により救急車がやってきた。最終的に、パトカーが5台も出動するさわぎとなったのである。
……かくして、ツヅミによる爆弾テロさながらの騒動は幕を下ろした。今後、市で50年間も語り継がれる『募金活動クレイモア事件』がこれである。
この事件が、さらなる驚きの展開を迎えようとは、当事者たちはまだ誰も知らない。
どうでもいいことだが、念のために説明しておこう。
クレイモアとは無数の散弾を一方向に発射して敵を倒す、地雷爆弾である。




