第19話 「かごの鳥はいつ出やる」
「大丈夫か?」
「だ、だいおうじょう……」
お兄ちゃん、いつの間に。
誰よりも早くお兄ちゃんは駆けつけ、妹を助けた。
車道に倒れこむ、まさに間一髪のところで、ツヅミは転倒せずにすんだ。
あと1秒遅かったら、ホントどうなってたかわからない。
「大丈夫かって!」
「だ、だいじょうぶ」
「そうか」
「そう」
ツヅミが両足で立っているのを確認すると、ようやくお兄ちゃんは手を離す。と、石原先生とみんなが駆け寄ってきてくれた。
箱崎さん、大丈夫?
ケガしなかった?
みんなが心配してくれてるけど、ツヅミはまだ心臓がドキドキして、うまく答えられない。しどろもどろ、どうにか平気だということを伝えた。
「う、うん。だいじょうぶ。あれ、お兄ちゃんは……?」
ふと車道を見ると、お兄ちゃんは募金箱を拾いに向かっていた。軽トラが通りかかろうとしていたが、手でストップの合図を出して停まってもらっている。
急いで箱を拾いあげるや、運転手に何度も会釈した。
ガードレールをまたぎ、お兄ちゃんは戻ってくる。
「ほら、募金箱。ちょっと凹んじゃったな」
「あ、ありがとう」
募金箱を受け取るツヅミ。
お兄ちゃんが言うように、箱の底がひしゃげてしまっている。穴が開かなかったのが不思議なぐらいだ。
それに首ヒモは、金具から完全に抜けていた。さすがに道具無しでは修理できないだろう。ずっしりと重い。
「ほら。これ2枚、落っこちてたぞ」
箱が転がったとき、投入口から10円と50円がこぼれたらしい。お兄ちゃんは、それも拾ってきてくれた。
2枚とも指ではさんで、ツヅミに見せる。
お兄ちゃんの学生服の袖のボタンが、ひとつ無い。
さっきツヅミを助けたときに取れたのだろうか。
わからない。
「いらないんなら、そこのコンビニで募金するぞ」
「……いる」
ツヅミがきょとんと固まっていたのは、ほんの2秒くらい。セーフティーのリボンが安全なのを確認し、箱をお兄ちゃんに差し出した。
「あ、ありがとうございます」
チャリン。
チャリン、チャリン、チャリン。
硬貨2枚が、ツヅミの募金箱に戻された。
美しい音が鳴り響く。
チャリンチャリンチャリン♪
チャリン♪
「ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
まわりの友達が、一斉にお礼を言った。
「ありがとうございます」
石原先生も、マモルにお礼を言う。
「ありがとうございます!」
ツヅミは誇らしげにもう一度、お兄ちゃんにお礼を言った。
その瞬間。
666号が作動した。
スパパパパーン!
「どにゃあ!」
「ぅごえ!?」
ポポポポポポーン!
スポポポーン!
ツヅミの募金箱が炸裂する。




