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第18話 「油断大敵、火がぼうぼう」

 


挿絵(By みてみん)




 ■ ■


 


「ちゅっ! き、貴様……!」 

 舌打ちするツヅミ。



 よけいなことを……キッと村井くんをにらむ。小5の女の子とは思えない、憎悪に(ゆが)んだ(みにく)い顔だ。

 となりでそれを見た富山さんが、ドン引きしている。



「え? ああ、そうか。いいよ」

 財布を取り出すお兄ちゃん。

 小銭入れから10円を出したと思ったら、やっぱり引っこめて……すこし(なや)んだ顔で、100円玉に変えた。

 マモル兄には、ちょっとこういう見栄を張るクセがある。


「ちゅっ、ちゅっ!」

「お前、なに舌打ちなんかしてんだ。ほら100円やるよ」


 ツヅミに100円硬貨が近づいてくる。

 対してツヅミは、募金箱の投入口を両手でふさいでしまった。絶対拒否だ。


「や、やだ! いらないいらない!」

「なにやってんだ、手ぇどけろって!」


 アホみたいな攻防。


 ザワつくほかの子どもたち。

 箱崎さん、いったいどうしたんだろう。ていうか、さっきの舌打ちだったのか。投げキッスかと思った。

 ざわざわ。



「家族のあたしに募金したら、不正金券(・・)になる!」

「それを言うなら不正献金だろ。なってたまるか。それともお前、募金を着服でもすんのかよ」


「服ならちゃんと着てる! 脱がない!」

「バ、バカ! 駅前で誤解されること言うな!」


 ツヅミは真剣に抵抗していた。もしお兄ちゃんがお金を入れたとたん、666号が作動しようものなら大変なことになる。


 いや……待てよ?


 うっかりしていた。

 安全装置のこと忘れてた。


 心臓発作起こしかねないようなお年寄りや、赤ちゃんを抱いた人とかまで驚かせたらたいへんだ。

 そうならないように、念のために作ったセーフティー。


 いまこそ使うときだ!


 一見、飾りにしか見えないリボン。

 右にぐいと引っぱると、今度は左のリボンが短くなった。


 これでビックリ箱はロックされた。

 お金を入れられても安全だ。



「これでよし。さあ、100円入れて」

 ズイ。

 募金箱を押し出す。


 しかし……



「だれがお前になんか入れてやるか! きみに入れさせてよ」


 ツヅミを無視し、村井くんの募金箱へ入れるマモル。


 チャランチャラン!

 ポンポコポン。

 ピンポーン。


「ちょき! なんだ、いまの音は!?」


 箱から派手な音が鳴ったことに、マモルはビビってしまった。だがすぐさま、小学生の前でうろたえた自分に気づき、ゴホンと(せき)ばらいをする。


「ゴホン。あー、み、みんながんばってね」



 募金箱をつき出したままの妹を無視し、お兄ちゃんは去っていく。そりゃ、あんだけ拒絶したら、シカトもされるだろう。


 ありがとうございます。

 ありがとうございまーす。


 ツヅミも、きわめて儀礼的にお礼を言った。

 アリガトゴザマース。


 ふう。

 ツヅミはひとまずホッとした。とりあえず、家族に666号がバレる悲劇は回避できた。

 まさか、お兄ちゃんに遭遇するとは思わなかった。


 しかし、ようやく平穏が戻る。

 どうにか帰ってくれた。

 ホッとした。



 そのとき。



 プツンッ!



 ツヅミの募金箱の、首ヒモが切れた。


 とつぜん、プチンと。



 金具とヒモをつないでた部分が、ねじれて切れてしまったのだ。


 ツヅミの両手に、いきなりズシリと箱の荷重がかかる。

 それと同時に、首にかかっていた重さが消えた。


「おすろ!」


 バランスを崩したせいで、募金箱はツヅミの手からすべり抜けた。

 落っことす―――


「あ、お、ちょ、ちょ!」


 ツヅミはあたふたしながらも、どうにか箱を落とすまいと前進した。

 なんとか捕まえないと!

 

 だが模造紙でくるまれた箱は、つるつると(つか)みどころがない。



「あぶない!」

「キャッ!」

 みんなの悲鳴。


 ツヅミがなんとか箱に追いついたとき、もう目の前には、歩道のガード(さく)が迫っていた。

 しかしツヅミの足はもう止められず、よろよろと前に進み続ける。


 ガードレールに頭を打つ……


 いや、もっとヤバい!


 ガードレールをこえて、車道に倒れこむ!



「ぼあ!」

 悲鳴を上げながら、ツヅミはどうにかして倒れる体勢を変えようとした。なんとか手をつこうと、募金箱を放り捨てる。


 しかしもう、どうにもならない。

 ツヅミの上半身は、もうガードレールを超えてしまった。


 ガシャン!

 ゴロンゴロン!

 放り投げられた募金箱は、ワンバウンドして車道に転がり、ツヅミは……



 お兄ちゃんに両脇をかかえられていた。







挿絵(By みてみん)





挿絵(By みてみん)





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イタいぜ!



チャッカマン



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