第17話 「性格はいつか運命になる」
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「みんな、ジュースをもらいましたよ。いただきましょう」
石原先生が紙パックの飲み物を持ってきてくれた。駅長さんが差し入れてくれた、オレンジジュースやアップルジュースだ。
子どもたちが、わっと歓声をあげる。
「はい。あと30分で学校に戻りますよ、最後までがんばりましょう」
ジュースを飲み終えると、ツヅミたちはまた定位置に並んだ。
この間、通りがかる人たちに変化があった。
学生が増えてきたのだ。
どうやら今日は、とある高校の試験の日だったらしい。まだ昼前だというのに、下校する高校生たちが現われはじめた。
彼ら彼女らの持つカバンを見て、ツヅミは「あっ」と声を漏らす。
お兄ちゃんの学校だ。
そう言えば、お兄ちゃんも試験勉強してた気がする。
「募金、お願いしまーす」
「おねがいします」
一生懸命に声をそろえてみるが、どうも反応は芳しくない。女子高生ふたりが、かわいいかわいいと言って写真を撮っていったが、募金はしてくれなかった。
もちろん相手も学生なわけで、こづかいから寄付してくれとは言えないが……写真だけ撮っていくのはどうなんだ。
それでも、少しずつ様子が変わってきた。3人組以上のグループが目立ちはじめたのだ。
面白いもので、グループのひとりが募金してくれると、連れの学生も募金してくれる。
そこに、またべつのグループが現われたら入れ食いだ。募金している同級生を見るや、彼ら彼女らも寄付をしてくれる。
やっぱり、おなじ学校の顔見知りが募金しているのを見たら、スルーしにくいのだろうか。
彼らの寄付額はけっして大金じゃないが、ワイワイと賑やかなテンションで集まってきてくれる。
それが、募金活動をとても楽しいムードにしてくれた。
ツヅミの募金箱にも、新たに何十枚かのお金を入れてもらえた。
それはもちろん嬉しいんだけど、さっきからツヅミは、腕がメチャクチャ疲れていた。箱が重くて重くて、たまらない。
それに首ヒモが食いこんで、肩がひどく痛い。
無理もない。
お金はぜんぶあわせても300グラムくらいだろうけど、666号を搭載してる箱そのものが、メッチャ重いんだもん。
なんだか、足も痛くなってきた気がする。
もう2時間以上立ちっぱなしだし、当たり前だ。
いよいよ、募金活動の刻限もせまっている。誰ともなしに、お腹すいたすいたと言いはじめた。
そこへ。
な、なんということだ……!
「あ、ツヅミちゃんのお兄ちゃん」
「あれ。えーっと、ミキちゃんだっけ。なんだ、ツヅミもいるのか」
マモルが現れた。
さっきの電車が到着して10分以上たってるというのに、今ごろになって、ひとりで改札から出てきた。
トイレにでも行ってたのだろうか。
「ゲッ! お、お兄ちゃ……」
「なんだ、ゲッって」
マモルはツヅミを見ても驚かない。昨日の夕食のとき、ツヅミが募金活動をすると聞いてたからだ。
とは言え、まさか駅にいるとは思わなかったが。
ツヅミはというと、メチャクチャ焦っていた。
まさかお兄ちゃんめ、募金する気じゃあるまいか。
家族にビックリ箱のことがバレるのはマズい。
ヒミツの666号計画が台無しだ。
「ツヅミちゃんのお兄さん?」
「うわ、けっこうカッコいい」
「背ぇ高ぁ。バレー部だ」
ほかの子たちが、わあわあと騒ぎ出した。
注目を浴びて、マモルは居心地が悪いやら、かっこいいと言われて悪い気はしないやら。
いや俺バスケ部だよ、ツヅミがいつもお世話に……と、似合わない愛想笑いで、先生やクラスのみんなに頭を下げていた。
ツヅミはなんとなく恥ずかしい気持ちになった。学校の活動を家族に見られるというのは、どことなく落ち着かない。
なんか、自分だけ授業参観されてる気分だ。
クラスのみんなに兄を冷やかされるのも、なんかヤだった。
「もう、お兄ちゃん帰って!」
「言われんでも帰るわ」
ふだんと変わりない、ぶっきらぼうな会話。
だがツヅミはホッとした。
やれやれ、やっとお兄ちゃんがいなくなってくれる。
しかし、あってはならないことが起こった。
去ろうとするお兄ちゃんを、なんと村井くんが引き止めたのだ。
「箱崎さんのお兄さん、募金していってよ」
「ちゅっ! き、貴様……!」
舌打ちするツヅミ。




