【05】応援
文音ちゃんの色々な衣装姿に、私は悶絶する日々だった。MVのひらひらドレスも可愛かったけれど、みんなお揃いの衣装では、いつもより露出度が少し高めな姿に何故か涙が出た。
この前のライブで見せたチアリーダー姿も最高だった。黒いポンポンを持って、1人だけずっと振り方が小さくて……。世にも珍しい黒いチアリーダーな文音ちゃんに、優しくポンポンを振られたい。
そんな感じで文音ちゃんを遠くから愛でる日々が続いた。そう、今までがおかしかったんだ。特に小学生の時。私があんなに近い所で文音ちゃんを見ていられたことが奇跡だったんだ。
肝心のライブは全くチケットが手に入らず、入ることすらできなかった。学校の片隅でやっている活動にしては、異次元の人気だ。やっと行けたのは次の年、2月くらいのライブだった。……その分曲を全部予習できたからいいか。
オタクでごった返すライブ会場は久しぶりだった。他のアイドルも追いかけていたけど、文音ちゃんがアイドルになったことを知ってからはあの子一筋だった。
他では中途半端だったけど、ここでは最古参だって豪語できる。メンバーの1人を小学生の時から知ってるんだから。張り合えるもんならかかってこいだ。
ライブの1発目はやはりデビュー曲。毎回恒例のコールを叫びまくった。
曲が終わり、暗転していたステージが再び明るくなると歓声が上がる。
「みんな――っ!こんにちは――っ!私たち、『ドリームテイル』です!」
オタクたちは当然、挨拶1つで大騒ぎ。ただ、最古参にもなるとこれくらいのことで大はしゃぎはもうしない。あくまで冷静に見守っていた。ドリームテイルのみんなは、順番に挨拶やコーレスをしていく。
みんな可愛くて、やっぱり私はアイドルが好きだと実感させられた。そして、満を持して文音ちゃんの番が回って来た。
「は、はいっ……!こんにちは……。七星文音です……」
結構な回数のライブを重ねて来ただろうに、まだ声が震えてる……。マイクを両手で握りしめて、視線が泳いでいるのまで見えた。双眼鏡、持って来ておいてよかった……。
「あなたの物語に、私の名前を刻んでもらえるよう、精一杯頑張ります。では……。行きます……!」
来るぞ……。文音ちゃん渾身のコーレス……!しかし覚悟の決め方がもはや武士だった。
「文音の声にーっ……。めろめろきゅーんっ!」
私たちがめろめろきゅ――――んっ!って叫ばされるコーレス。こればかりは本気で叫んだ。オタクの屈強な喉はこの時のためにある。
「きょ、今日もよろしくお願いしますっ!」
自分でしておいて恥ずかしいのか、早口でまくし立てて文音ちゃんはMCを終わらせてしまった。こんなかわいいMCの後に、『綺羅星』を歌われたら誰だって好きになる。
ステージで歌われるあの曲はまた格別だった。ステージの階段に腰かけて、優しい声で、切なくも希望がある物語を歌いあげていた。
その流れでチアコスのときの曲も歌ってもらえて、オタクの心はぺしょぺしょです。文音ちゃんは歓声に応えて、前よりは大きめにポンポンを振ってくれていた。
文音ちゃんはずっと会場の隅っこに向けて、しゃがんでポンポンをきらきら細かく振っている。ファンサが、できるようになってる……!今日まで諦めず推してきて、本当によかった……。




