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創世記と恋物語  作者: みいみ
創世記と恋物語 -道連-
21/53

【08-2】献身

2026/01/31 空行が多かったため、修正しました。

 恐ろしく演劇的となったライブを終えて、私たちは満身創痍だった。お互い、とても心臓に悪いステージだった。その大半は私のせいだ。


「ほんっっとうにごめんっ……。私、なんてことを……」

「か、顔を上げてください澪さん。何とかなりましたから……」


 元の調子を取り戻した文音ちゃんに諭される。


「そうだよ、あんなライブは文音ちゃんにしかできないよ!配信のコメントもすごいことになってるし!」

「は、配信……?」


 ゆめみちゃんに見せられた携帯の画面には、コメントの激流が表示されていた。


『サンマリ難民救済』

『文音ちゃんの掌で私たちは踊らされている……どこまでガチなの、今のやつ』

『決めた サンド推しになる 文音ちゃん今までありがとう』


 最後のコメントにはお互い顔を見合わせ苦笑いするしかなかった。私が誰かに推されたくて出た訳じゃないんです。むしろ私が乗ることで文音ちゃんに作品愛を燃え上がらせてほしかっただけなんです。

 現場にはアンコールが響いている。はるか昔から、ライブと言えばアンコールなしの方がおかしい。


「澪さん、ありがとうございました。あとは観客席から見守っていてください」

「え、席あるの?」

「ありません。ですから、会場の隅で……」

「そんな、ひどいよ~~……」


 と、いうことで私はバックヤードからつまみ出されることになった。いや、サンドさんコスのままだからまだライブ出演者の一員といえるのか。

 とにかく、ライブを少しでも良くするためにできることをしよう。バックヤードから大きなゴミ袋を1つ拝借した。




 アンコール曲は、ドリームテイルのデビュー曲だった。ついに11人態勢で一緒に歌っている。今日はマリンきゅんだけど。彼にはどう考えても似合わないきらきらな曲を、精いっぱい踊っていた。文音ちゃん、あんなに複雑なフォーメーションダンスをこなせるようになっていたんだ。私は観客からも少し離れた位置で、黒……いや、グレーのペンラを振って思う存分声援を送った。そして、最後のサビでは高輝度のサイリウムをガンガン折った。目立つけど、もういいかと思えた。それがお決まりだったから。


 コスプレライブは無事終了して、観客はぞろぞろと会場を後にしていく。私はここからが本業だ。

 私は、サイリウムをその辺に放置して帰るようなオタクにはなりたくないし、この現場から生み出したくもない。




「みなさーん!使ったサイリウム回収しまーす!」

「持って帰るかこっちに持って来てくださーい!」


 私が持っているゴミ袋と反対の手には、さっき撃たれたばかりの銀テープを束で持っていた。床に落ちた分をかき集めてきた。


「銀テ拾えなかった人――!1本どうぞ――!」

「はい、いっぱい拾えたラッキーな人は持ってない人に分けてあげてくださ――い!」


 もちろんみんなびっくりだ。さっきステージで大ドジやらかした人がこんなところでサイリウム回収マンと銀テープ分配マンになっているんだから。


「え、サンド!?さっきのサンドじゃん!またライブ出てください!」

「はは、どうも……」 


「ドリームテイルの新メンバー?」

「い、いやそういう訳では……。単なるお手伝いというか……」


 その場でサンドさん推しになることを決めた人まで現れて、ツーショットをせがまれたときは焦った。ゆめみちゃんに拾ってもらってまたゴーグルしてたのであまり顔出ししてないけど。

 ドリームテイルのコスプレライブは大盛り上がりで、SNSのトレンドも揺るがしていた。メンバーの名前に並んで、『クリミナルクリスタル』も浮上してきて本業のファンたちが混乱していた。

 そして、『サンドさん』がトレンドを駆け上がってきている。とうとう『文音ちゃん』を追い越した。


「なぜ、澪さんが……?」

「え、分かんないよそんなこと!」


 本当は大いに心当たりがあった。そりゃあ目立っただろう。でも、拡散されるほどだとは思わなかった。


『サンドさんに銀テ分けてもらえて涙出た オタクの鑑すぎる』

『黒いペンラ振ってたからサンドさんやっぱりマリン推しだ……。それか文音推しだ……』

『サンド推し名乗らせてほしい サイリウムの折り方すき……ラスサビ直前のちょっとの時間で何本も折ってたのかっこよかった』


 最後の曲なので撮影やSNSアップもOKになっていた。そんな皆のカメラが、思わぬ方向に向いてしまっていた。私の方だ。


「これは……ご、ごめん……」

「あなたは、本当にアイドルがお好きなのですね。皆さんの声でよく分かります」

「うん。大好き。私の全部って言ってもいい。せっかく目立つ格好してるんだから、現場の治安良くしたいと思って……」


 ドリームテイルのライブは、フリーライブも多く治安の面では苦しい状況に立たされていた。11人がどれだけ尊くても、治安が悪ければご新規さんは寄り付かない。

 そして、文音ちゃんたちの目を汚したくなかった。多くの人が大人しくしていても、一部の人の素行が悪ければライブはめちゃくちゃになってしまう。


「あなたは誇れるファンの1人です。また、何かあったら力を貸してください」

「もちろん。やれることは全部やるよ」


 次の日から私は正式に、ドリームテイルの裏方として迎え入れられた。

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