あの方の世界を想像した。
もし、普通じゃないと気づいたら、壊れちゃうから。
もう少しだけ、このままで居させて。
日奈子side
「ん?」
私が目を覚ますと病院で着るような服を着ていた。
元々は青いヒヤシンス柄のワンピース。
「あぁ、起きたのですね。俺は高嶺正樹です。
この研究所で貴方を作りました。」
「は、はぁ?」
何を言っているんだ。私は人間だぞ。
「貴方のお母さんお父さん、お兄さんは血の繋がってないのです。
家電ロボットの失敗作を安く買ったクズです。」
「うそ、うそ。そんなわけない。
にいちゃんは、にいちゃんはお前は俺の妹って、言ってくれたのに。」
クズ。両親はまだしも兄ちゃんまで。
「現実を見ましょう。貴方はアンドロイド。AI。
我々が作った家電ロボットの失敗作です。
日奈子さん。15年間お疲れ様でした。」
「ま、さきさん。私どうなるんですか?」
「んー、うちで修理して、違う人生を歩んでもらいます。
記憶があるからきっと良い家電ロボットになりますよ。
誰にも買ってもらえなければ、俺がもらいますから。御安心を。」
「西宮日奈子は。どうなるの。」
「行方不明者として扱います。一生見つかるわけないですがね。」
「えーちゃんは。えーちゃんはどうなるの。」
「えーちゃん、誰のことですかね。」
「如月絵梨奈。私の友達。」
「友達。ほう。そんな、アンドロイドの友達とは。物好きな方ですね。
どうなるか、でしたっけ。それなら簡単。探し続けるだけです。
質問はこれ以上受け付けません。手術室へ向かいます。
この服に着替えてください。」
「わかり、ました。」
15年間の思い出も消えれば、西宮日奈子も消える。
違う私になるんだ。
少し高揚感がある。
ワクワクしているんだ。
変われることに。