太平洋決戦(後編)
「おい、お前!逃げるのか、逃げないのか、はっきりしろ!」
「うーむ…どうしようかな…」
アメリカ軍人が足を鳴らし出した。空中なので音はしないが。
「うーん…迷うなー。」
アメリカ軍人は手を組み人差し指を連打させている。今気づいたのだが、その男は結構な眼圧でこちらを睨んでいた。気づいてたらケンカは売れなかっただろうな。
「うーん…。」
これはただ相手をイラつかせているわけではない。参謀本部から言われた通り、時間を稼いでいるのだ。俺は今、素晴らしい働きをしていると思う。これはただのこの男の言い訳に過ぎない。ただ単に戦いたくないだけだ。
「?」
ふと、疑問に思った。(なぜこのアメリカ軍人は攻撃してこないのか。肩にはゴツい銃を持っており、俺なんか一撃だろう…!、そうか。これはいけるかもしれない。)
「そこまで言うなら打ってみろよ。アメリカ人!」
「!!」
緑の軍服の男はほぼ丸腰同然。その状況で自分を撃て?狂っているとしか言いようがない。が、これが現状の最適手段だった。
「ほら、どうしたんだ?打てよ!」
「クッ、」
アメリカ軍人は銃に手をかけるが打とうとはしない。何故か。簡単だ。上層部の許可が降りていないのだろう。敵が目の前にいようと発砲すれば処罰を受ける。だからアメリカ軍人は緑の軍服の男に初めに逃げる様に促した。だが、残念なことにこんな一方的な勝利が見えた戦いを放棄するなんてできない。
(さーて、どういたぶってやるか…)
緑の軍服の男はアメリカ軍人に銃を向けた。その瞬間、
バン!
「!?」
発砲したのはアメリカ軍人の方だった。
「良かったな!たった今、上層部から許可が降りた!素直に逃げなかったことをあの世で悔いるがいい!」
アメリカ軍人は緑の軍服の男に向けて銃を連射した。が、緑の軍服の男は、飛んでくる球全てを避けた。
「!?」
「そうか、お前は覚醒してないんだな。」
緑の軍服の男はそう言い残し、アメリカ軍人を撃ち抜いた。
…そう、確かに撃ち抜いた。
「はははははは!一人だけ死んでたまるか!」
「何!?」
アメリカ軍人は最後な力を振り絞り緑の軍服の男ごと自爆した。
「しっかりしてください!少佐!」
声が聞こえる。瞼が少しずつ明るくなっていき、瞳は次第に広い青空を映し出した。
「ここは?…」
「病院に運んでいるんです!休んでてください。」
緑の軍服の男、いや、少佐を5人が囲む様にして、空中で運んでいる。
「あぁ、俺は部下に恵まれたな。」
爆発に巻き込まれたのだろうか。意識は保つのがやっとだった。そんな中出したほんの小さなささやき。届くはずもないと思っていたが、部下たちは少し笑顔になったのは気のせいだろうか。この瞬間、俺の意識は途絶えた。
次回とうとう近況報告!