強さを
「…っ!!」
やはり庇うんじゃ無かったかな…
血はあまり出ていない。致命傷ではないが頭を殴られたため、視界が歪んでいる。
「し、少佐…すいません…お、俺…」
「いい、逃げろ…」
「…出来ません!少佐を置いて離れるなんて…」
まぁ、そうだよな。俺は記憶のないただの一般人…信用してくれるわけがないな…が、
「いけ!これは少佐命令だ!」
「…」
「必ず、生きて帰ってきてください…」
「仲間を庇うとは、余裕だな…」
「あぁ。お前なんて余裕だよ。」
技術でも力でも負けている。ならば気持ちだけでも勝たないと…
「じゃあ、行くぜ!」
(来る!)
男はこちらに向かい、武器を使わず殴りかかってきた。俺はそんな攻撃、簡単に避けれる…
男の拳が俺に当たった瞬間、俺の体は動いた。
「!!」
「消えた…」
「いや、避けたんだよ。」
俺が唯一覚えている自分の能力。『絶対回避』やはり強い。どんなに早くても、避けることができる。すなわち最強、ということ。
俺は背後に回り込み、撃ち抜こうとした。男に銃口を向け、引き金を引こうとした瞬間…
「遅い。こんなものか…」
「えっ…」
気づけば手持ち銃が壊されている。
「能力を使うまでもないな。」
やばい。今回はおそらく致命傷になっている。一刻も早く終わらせないと、負ける…
「じゃあな。」
男は俺に一撃を叩き込んだ。
「…さ、…さ」
声が聞こえる…俺は何を…
「!!」
「な、何でここにいる…早部!」
そこには俺が逃したはずの早部がいた。
「何でって、こっちが聞きたいですよ。少佐がこっちに飛んできたんじゃないですか。」
「あ、そうだったのか。」
俺は立ちあがろうとした。が、
「うっ、体が動かない…」
まずい…動かないと。早部がやられる!
だが、体はもう限界を超えており、もう動くことは出来ない。
(くそ、俺は…何も出来ない…)
早部は敵の接近に気付き、銃を構えた。
(頼む頼む頼む!誰でもいい。何でもいい。天使でも悪魔でもいい。俺にあいつを倒せる力を…)
体が限界を超え、意識を保てなくなった。そう、俺は意識を失いかけていた。
バサッ
「!!」
(何の音だろう…少佐かな…)
俺は少佐に何かあったのかなと思い振り返った。振り返った先には、地面に倒れ込む少佐がいた。
「少佐!」
俺は少佐の元に駆け寄った。
「少佐!少佐!少佐!少佐!」
すると、少佐は目を覚ました。
「少佐…」
「戦況は?」
「?」
「戦況はどうなっているのだと聞いている。早部隊員」
「!!」
目の前にいるのは、さっきまでの少佐ではない。今いるのは、日本軍を代表する少佐だ。雰囲気が違っていた。
「5人の敵と遭遇し、四名撃破。と同時に軽間隊員が負傷したため、二名で搬送しています。」
「分かった。下がってよし」
「さぁ、楽しい狩りの時間だ」
次回「緑色の」