第34話 瞬間移動
「ほう、やりようがあるとな。まぁ、足掻くと良い」
雷蔵は鼻で笑ってショットガンを構える。一発放ち弾丸たちを転移させて、幽羅に向かっていた弾丸が弦に向かっていく。
「ったぁ!?」
雷蔵の背後を斬りかかろうとした弦は紙一重で攻撃を避け、雷蔵の異能の範囲外まで下がる。
「弦ちゃん!近づきすぎるとやられちゃうよ!」
由佐は両手を地面につけた状態で冷や汗をかいている弦の肩に手をのせる。
「のんびりしてる暇はねぇぞ」
雷蔵は瞬間移動して由佐と弦に近づき、銃口を二人の額につける。
(ヤバい!!)
由佐の肉体が一瞬にして膨張する。そしてもの凄いスピードで弦の腕を掴んで、窓を突き破る。
「あぁ!?てめ…なにを」
雷蔵が驚き固まっている隙に弦がくるりと雷蔵に向かって刀を投げつける。それもしっかりと頭を狙った攻撃である。
「カスが…最後っ屁をかましやがって」
弦たちはそのまま外へと消えていった。
ギリギリのところで頭を傾けて致命傷を避けた雷蔵は左頬に突き刺さった刀を引き抜いて一人残った幽羅を睨みつける。
「まぁ良い。この痛み、貴様で晴らさしてもらおう」
「と、とばっちりですよぉ!お願いしますぉ。もう貴方たちの秘密とか追わないんで!」
「あぁ?そこは問題じゃあねぇだろ。俺は、八つ当たりさせろって言ってんだ。確かに俺たちの事を嗅ぎまわるなと言ったが、それはもう、どうでもいい」
雷蔵は幽羅との距離を一瞬にして詰める。そして、至近距離まで近づいた雷蔵が放ったショットガンの弾が勢いよく幽羅に向かっていく。
「ひゃぃやぁ!?」
相変わらず情けない悲鳴を上げながらも、体を後ろに反らして避けた。しかし、雷蔵の範囲内に弾丸はまだ残っており、それを転移させて再度幽羅を殺しにかかる。
「その体勢からどう避けるのだ?」
雷蔵はニヤニヤと笑みを浮かべる。体をのけ反らせた状態の幽羅はもうこれ以上避けることは出来ないと、そう思っていた瞬間、幽羅の体が超高速で雷蔵から離れていく。
「な!?」
幽羅に大ダメージを与えられたと確信していた雷蔵は弾丸を全て交わしたことにひどく驚いていた。
「ふ、ふう。危なかったですよ。死んだと思いましたけど…フッ、私の反射神経も捨てたもんじゃありませんね」
何者かに背中を押されたかのような動きを見せた幽羅は少し自慢げに言いながら宙に浮いた。
(ッ!?空を、飛びやがった)
幽羅は異能である目を使って背中を押してもらい、体を持ち上げてもらったりしているのだ。
(驚いてますね~。ただこちらも有効打を与えることは出来ませんが…)
目に乗って空を飛びながら顎に手を置いて微妙な距離感で唐突に大声をあげた。
「…フフッ!残念ですが、貴方のようなボケ老人相手に私は負けませんよ」
ニヤリと笑う幽羅を見た雷蔵の顔に青筋が増えていき、体もプルプルと震え出した。
「…ボケ老人だぁ?気分悪いんだよ、その言葉も。そのイラっとくる笑みもよぉ!」
引き金を引いた雷蔵はその幽羅の行動によっぽどムカついたようで、確実に殺せる距離まで接近して発砲する。
「挑発に乗ってくれて良かったです。貴方が近づいてくれなければタイミングが合わないところでした」
(…タイミング?)
雷蔵が幽羅の意味深な発言に嫌な予感を覚えた時にはもう遅かった。
「出会って数分ですが怒りっぽい人だということは分かりました。扱いやすい人で嬉しいです」
雷蔵は発砲した。しかし、その弾丸は幽羅に当たりはしなかった。雷蔵の足元が崩れ落ち、照準がズレたためだ。
「貴方は観察眼を養ったほうがいいと思いますよ。夢蔵さんと日弧さんがここで誰かを置いていくような人ではないと、パッと見で分かりませんか?」
雷蔵の足元を壊したのは由佐と弦のようで、落ちていく雷蔵を弦が待ち構えていた。
「はっ!幽羅が異能で俺らを見てる読みの破壊だったが…上手くいったみてぇだな」
雷蔵は転移しようにも穴が大きすぎて転移した先でも落下していた。
「逃がさねぇぞ。ジイさん」
逃げようとする雷蔵の足を由佐が掴んで叩き落とす。そして、立ち上がったところを弦が刀で思いっきりぶった斬る。
「残念だが、お前を生かしておける余裕はない。死んでもらうぜ」
雷蔵が何か言おうとしたが、それを聞く前に刀を振りかぶり、雷蔵の体を真っ二つにする。
「ちゅ、躊躇ないですねぇ」
雷蔵を斬り殺した弦を見て幽羅が僅かに引いたような声を出す。
「仕方がない、殺さないと殺される。元々そのつもりでこの学園にやって来たんだ」




