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流星学園  作者: 森宮寺ゆう
一学期『願いを叶えに』
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第29話 全てを見る者

「ししょー!」

「弦!」

 女との戦闘から数十分後、痛む足を無理やり動かして森から出ようとしていた弦に、あやめと星夜人が駆け寄って来た。

「は…?な、なんで戻って来たんだ?」

 弦は逃げるように伝えた二人が帰って来たことに、とても驚き固まってしまっていた。

「あの後ね、助けてくれそうな人を探しに情報屋さんのところに行ったの。強い人いないの?って。そしたら、もう戦いは終わってるって言われたから来た」

「…そうか、良かった。気を抜いたら意識が飛びそうなくらいなんだよ」

 余裕そうに振舞っているが、限界である弦は疲れきった顔で星夜人から肩を借りる。そして、その横で話すあやめの話を聞いていた。

(あの幽羅とかいう女…何者だ?何故こっちの状況を把握してんだ?初めて会ったころから奇妙なやつだったが…)

「師匠、医務室まで運びますよー」

「あぁ、ありがとな」

 ◇◇◇

 島全体から明かりが消え人々が寝静まった頃、学園の一室で物音が聞こえてきた。

「んー、初日から大盛況ですね。生徒個人の情報以外を貰おうする人も少なからずいましたね。そんな中でも…」

 荷物を片付けながら独り言をブツブツと言いながら幽羅は窓の外の森を見つめていた。

「腕がいっぱいある女に仲間が襲われた、ですか。バカげたこと、と一蹴できたんですけどねぇ。実際、見たらやばかったですね~」

 幽羅は昼に見た女の事を思い出しながらつぶやく。

(あの方は…)

 幽羅が女のことについて考えを巡らそうと思っていると、教室の扉がガラリと開いた。

「よお、情報屋さんっ。こんな時間まで残ってるとは不用心だな」

 見るからにガラの悪そうな男が幽羅に唾を飛ばしながら近づく。

「おや、なんでしょう?秘密の取引ですか?」

「ちげぇよ。俺はてめぇを潰しに来たんだよ。もちろん殺しはしねぇ。少しの間眠ってもらうだけだから安心しろ」

 男はそれだけ言うと奇襲に近しい攻撃を幽羅に向かって放つ。一般的には早い部類に入るであろうパンチを幽羅はなんなく躱した。

「まったく、危ないですねぇ。目的はなんですか?」

「うるせぇ!てめぇの情報、どうゆうワケかデタラメじゃねぇようだな。どこから仕入れてきたんだぁ?」

「会話が成立しませんね。ま、簡単ですよ。摸擬戦の中で観察させてもらいました」

「へぇ~。これだけの量をか?」

 男は教室中に張り出されてある顔写真を見回した後に、幽羅の言葉を思いっきり笑い飛ばす。

「随分と舐めた嘘ついてくれたなぁ!」

 男は近くに設置されてある机を思いっきり蹴り上げる。机の角が天井に突き刺さり、上からパラパラと小さな破片が降ってくる。

「あーあ。明日も使うつもりだったんですけどねぇ」

「余裕ぶってんじゃねぇよ!!」

 困り顔で頭上を見上げる幽羅に向かってさっきよりも速いパンチを繰り出す。その直後、男は目を見開き驚いていた。

「あ…なん、だと?てめぇ、どうやって避けやがった?」

 パンチを放ったまま硬直をして幽羅を見つめる。幽羅は今もなお天井を見つめており、そのままの状態でパンチを避けたのだ。

「おや?随分な驚きようですね、何かありましたか?」

 幽羅は悪戯っぽそうに笑いながら男の顔を見つめる。

「なぜ私がこれだけの量の人数の情報を手に入れたのか、なぜ私がさっきの攻撃を避けれたのか。単純な話です、異能ですね」

 幽羅が指をパチンと鳴らすと、男と幽羅の周りを大量の眼球が取り囲む。直径が成人男性の身長くらいの大きさで、そんな眼球の群れが部屋中を埋め尽くしていた。

「キ…モッ」

「キモイですよね。私の目を可視化させました。普段であれば私以外の人間は見ることも、触れることもできません」

 幽羅がそう言うと一つの眼球が動き出し男の体、床を順に通り抜けて幽羅の足元まで移動する。

「じゃーん」

 眼球は幽羅を持ち上げる。幽羅が再度指を鳴らすと、眼球たちは消える。もちろん幽羅の足元の眼球も消えた。そのせいで幽羅が宙を浮いているようにしか見えない。

「…いや、つまりてめぇは戦闘力を持たねぇってことだろ!」

 男は矢継ぎ早に拳を繰り出す。しかし、幽羅はその全てを完璧に躱して笑う。

「まぁ、戦闘力はもちませんけど…助けて下さる人はいますよ?ね、お二人さん」

 幽羅は男の背後、開きっぱなしの扉に向かって言った。その数秒後、二人の男女が勢いよく飛び出してきて男に殴りかかる。

「ごへっ!」

 反応できなかった男は攻撃をモロに受けて気絶した。

「ありがとうございます。夢蔵さん、日弧さん」

 幽羅は手を軽く叩きながら教室に入ってきた弦と由佐を歓迎する。

「幽羅、情報が欲しいんだ」

「アタシもだよ~。情報屋ちゃんっ」

 幽羅はそういってくる弦と由佐に向けて満面の笑みを見せた。

「もちろんですとも~」

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