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流星学園  作者: 森宮寺ゆう
一学期『願いを叶えに』
3/11

第2話 仲間であり標的

「引き出しの中にあったな…」

 弦は寮の位置がかかれた紙を見ながら廊下を進む。

「しっかし、まじで遠いな。どこだよ、ここ」

 寮は学園からかなり離れたところにあるらしく、あまりの遠さにため息をつく。

「まぁ、幸いここから一本道だから迷うことは無いだろうな」

 学園の外に出た弦は桜の花びらが散る道を歩いていく。

「…夢蔵さん?」

 ベンチに座っている長身で紫髪の女性が弦に話しかける。女性の顔はきれいな顔立ちをしているが、どこか怖さを感じる笑顔が不気味である。

「ん?だれだ?…って、つかさ!お前もこの学園に来てたのか!?てか、どうやって来たんだよ」

「はい…古川さんの目を盗んでここまで来ました」

「古川?あぁ、お前の担当の人か」

 弦は頷くと、周りをチラチラと確認する。

(周りの目が痛いが、それもそうか。)

 弦はそんなことを考えながらこの場を離れようとする。

「じゃあな、つかさ。俺はこの荷物を寮に運んでいくよ」

「そうですか…では、お気をつけて」

 弦は控えめに頭を下げるつかさに対し、弦は軽く会釈して歩み始める。

「こっちか」

 弦は分かれ道を曲がりそのまま坂道を上がってゆく。

「これ…学園との行き来がキツイな」

 重い荷物を持ったまま、坂を登り切った弦は肩で息をしながら、小さめの山の上に建っている一軒家の扉を開ける。

「あ、先客がいるのか」

 寮に入ると、玄関に置かれた三足の靴が目に入る。

(確か一つの寮には五人までって書かれてたな)

 弦は靴を脱ぎ、一軒家にしては広めの廊下を歩いていく。そして、廊下の奥にある扉を開くと、リビングに出る。

「お!遅いな、あんたが最後だぜ」

 ソファに腰を掛けている青髪で目つきの鋭い少年が手を振りながら笑う。

「おーい、みんな!ラストの一人が来たぞ!」

 少年は家中に響くくらいの大声で叫ぶ。

「わーい!」

 甲高い女性の声が頭に響く。そして、その瞬間、弦の視界が真っ暗になり、頭に柔らかい重みがのしかかる。

「うぉ!?なんだ!?」

 弦が頭に手を伸ばそうとすると、急に視界が晴れる。

「フフフン♪」

 弦の肩に乗った少女がニコニコと笑いながら、弦の顔を見つめる。少女は周りと比べて少し背丈の小さく、背中まで伸びた長い黒髪に宝石のように輝く青い目をしている。

「フフッ、驚いたぁ?」

 少女は笑いながらソファの上にダイブする。

「アレ?あんたもここの寮だったのね」

 リビングの向こうからコップを片手に持ったあやめが現れた。

「お、あやめもここの寮だったのか」

「えぇ、奇遇ね」

「なんだ?そこは知り合いだったのか」

 少年が二人の会話を聞いて驚きの声を漏らす。

「ついさっき会ったのよ。アレ?もう一人は?」

「外に行ったよぉ」

「そうだったわね。じゃあ、先にそこ三人で自己紹介でもしたらどう?」

 あやめは自身以外の三人を指さすと、ソファに座る。

「そうだな。俺はAクラスの夢蔵弦だ」

「わぁ、弦ちゃん!えへぇ、よろしくねぇ。アタシは日弧由佐(ひのこゆさ)。Bクラスだよ~」

 由佐は弦の手を両手で握ると、ブンブンと勢いよく振る。

「おいおい、やめてやれよ。あ、俺はDクラスの高原淳也(たかはらじゅんや)だ」

 淳也は弦に向かって手を伸ばす。その手を握り、握手を交わす。

「後は、愛ちゃんだね」

 由佐がソファの上でゴロゴロとしていると、玄関の方から扉の開閉音がする。

「噂をすればだな」

 淳也の言葉と同時にリビングに誰かが入って来た。フワフワの金髪をハーフアップにしていて肌白い少女だ。

「あれ?人が…増えてるぞ?」

 少女は弦の顔を見て首を傾げる。そんな少女に向かって弦は手を伸ばし、握手を求める。

「俺は夢蔵弦。Aクラスだ、よろしくな」

「…夢蔵?」

 少女は少し動揺しながらも弦と握手を交わし、自己紹介を始める。

「私は…時雨愛(しぐれあい)。同じAクラスだ」

「…ふーん」

 弦は愛の手を離し、床に置いておいたボストンバッグを持ち上げると、淳也に聞く。

「これって部屋はどうなってんだ?俺、荷物を片付けたいんだ」

「あー。多分、あそこの扉の先の右の手前から三番目の部屋が空いてるから、そこを夢蔵の部屋にすればいいぞ」

「ありがと。じゃあ、これを片付けてくるよ」

 弦はリビングの奥にある扉を開く。そして、廊下を進み、淳也に言われた部屋の中へと入る。

「あいつらすらも、殺さないといけないのか。どうせなら、不愛想に接してくれた方がやりやすいのにな」

 気が滅入ると思いつつも、弦の瞳の奥にある闘志は燃え続けていた。

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