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流星学園  作者: 森宮寺ゆう
一学期『願いを叶えに』
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第28話 生き物としての差

「星夜人、あやめ!投げるぞ!」

 いち早く動き出した弦は星夜人とあやめの手首を掴んで森の外へと投げ飛ばす。火事場の馬鹿力というのか、人間が投げたとは思えないほどの飛距離を飛んでいく。

「あら、あなただけが材料になってくれるの?ま、結局卒業生一人以外は私の子になるからいいけど」

 女は弦に向かって背中から生えた腕を伸ばす。常人よりも二倍ほど長いが、数十メートルも距離がある弦には届かない。

(大丈夫だ。あいつらを逃がす時間を稼ぐだけだ。一定の距離を取って戦えば安全だ)

 弦は後方で戸惑っている二人に向かって逃げろと手でサインを送る。それを見た二人は困惑しながらも弦から離れていく。

「よそ見、厳禁よ」

 振り返った時にはもう女の手がすぐそこまで来ていた。しかし、女自体は動いていなかった。六本の腕それぞれの手のひらが裂け、そこから新たな腕が生えてきていた。それが何度も何度も続き、複数の腕が連なって弦のもとに到達していた。

(ッ!?こいつ、手から手が出てきた!?どこまで化け物じみてんだよ)

 弦は女に首や肩を掴まれた状態のまま宙へと持ち上げられた。手や足をバタバタとさせて抗うが、新たに伸びてきた腕に四肢を掴まれてしまう。

「いいプレゼンね。瞬時に力の足りないお友達を逃がす判断力。そして、即動き出せれる行動力。自分は残り弱者を守ろうとする強者としての責任感。圧倒的不利状況から立ち向かい、助かる術を探す勇気、生存意欲!あの二人を捨ててもお釣りがくるほどの材料になりそうね」

 女は空中で弦を真上に投げ飛ばし、全ての腕を使ってパンチを叩きこむ。足場のない状況下で無数の拳を避けれるわけなく、弦は一瞬にして大量のアザを作り、体中から血液が噴き出した。

「がっ…!名刀…正宗(マサムネ)!」

 弦は落下する最中で手のひらを広げ、マサムネを呼び出す。

「武器を持ったところで圧倒的数の暴力には敵わないわ。一人には限界がある。言ったでしょう、あなたたちは生命として弱いのよ!」

 刀を構えて近くの腕を斬り落とす。しかし、女の腕は増えていく一方だった。

「ただ、武器を持っただけじゃねぇよ。俺の異能は刀を生み出すだけじゃない…生み出した刀には、それぞれ力があるんだよ」

 両手で刀を握り、頭の上まで持ち上げる。そして大きく、力強く叫んだ。

瞬撃百閃(ひゃくれんざん)!」

 弦が刀を振り下ろすと、かまいたちのような斬撃で襲いかかってくる腕を斬り落とす。百なんてとうに超えるほどの量の斬撃は腕を斬り落としながらどんどんと女本体に近づいていく。

「…なるほどね」

 女は避けることも防御をすることもなく、無数の斬撃を全身で受け止める。頭のてっぺんから足のつま先にまでまんべんなく斬撃を食らった女はドサリと倒れる。

 明らかに決着がついた。しかし、弦は刀を女に向けて構える。常人であれば死んでいる攻撃だが、目の前の女は弦の知っている常人からかけ離れている。

「カ…カッカッカッ、クックックック」

 予想通り女は生きていた。

 そして、倒れたままの状態で奇妙な音を喉から鳴らす。黙って見ていると、無数のカラスが弦と女の頭上を真っ黒に染める。

「ああ、私の愛しの子たちぃ。生命の糧となってちょうだい」

 女はボロボロの腕を伸ばすと、カラスたちが吸い込まれるようにして女に掴まれていく。掴まれたカラスたちは暴れることなく、静かに女の体内に取り込まれていった。

「…生き物を、吸収してる、だと?」

 数十ものカラスを取り込んだ女の傷はみるみる癒えていき、ものの数秒で立ち上がれるまでになっていた。残ったカラスたちは木の枝に留まり、弦たちをジッと見つめていた。

「おいおい、あんな傷を一瞬にして治したのかよ」

「ふふふ。すごいでしょ?生き物としての限界を超えたのよ。これが生命の神秘、あなたも理解してくれた?」

 女は腕を伸ばして弦を捕らえようとするが、さっきよりも本数が少なかったため軽く斬り落とすことができた。

「あらあら、さっきの技を使わないの?」

 女が指をパチンと鳴らすと待機していたカラスたちが動き出し、一斉に弦に向かって突進していく。弦は大群のカラスを向かって斬撃を放つ。

「私は五十匹のカラスに向かって命令を出した。私の腕よりも多いよ。さっきのを使わないとまずいよ?」

 しかし、弦は技を使うことなく、がむしゃらに刀を振るう。

「クールタイム的なのがあるのかな?死んじゃうよ」

 一本の刀で捌き切れる量には限界があり、どれだけ斬り伏せても残っているカラスたちに体をどんどん壊されていく。

(そろそろ、やべぇ、なんとかして…抜け出せねぇと)

 弦の頭がボーッとしてきた頃、学園の方角から大きな鐘の音が鳴る。その鐘の音は十二時を知らせるものだった。

「あちゃあ。十二時か、あの子たちがゴハンを欲しがる時間だね」

 女は指をパチンと鳴らす。カラスの軍勢は弦から引いていき、女のもとに近づいていく。

「じゃあね、刀の子。また今度」

 女が弦に向かって手を振ると数千ものカラスたちが木と木の間から現れて、女と弦の間に真っ黒の幕を作る。

(これだけの数を、この森に隠してたのか!?)

 真っ黒の幕が上がった頃には女もイノシシも消えていた。弦は一人しかいない森の中で、木にもたれかかりながら言った。

「なんなんだよ。この島」

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