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流星学園  作者: 森宮寺ゆう
一学期『願いを叶えに』
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第27話 化け物

 あやめは顔が削れているイノシシから目を背けようとし、星夜人もあやめほどではないが、片目をつぶって極力イノシシを視界に入れないようにしていた。弦だけは、敵から目を離さないように集中していた。

(なんなんだよ、このイノシシは。顔面吹き飛んでるクセに生きてやがる)

 イノシシは無いに等しい顔を地面の土にめり込ませながら弦たちに近づく。

「ギフンギフンッ!」

 イノシシの口から発せられているとは思えない鳴き声を響かせながら顔を上げる。顔が吹き飛んだイノシシから鳴き声が聞こえたのだ。

「し、師匠!あのイノシシ…再生してますよ!?」

 星夜人の言葉の通り確かにイノシシの顔が徐々に徐々に治っていく。

「ンギィィィィィ!」

 顔を振ってついた土を散らしながらイノシシは弦に向かって走り出す。それもさっきの突進と比べて格段と速い。

(間に、合わねぇ!)

 弦はなんとか担いでいたあやめと星夜人を遠くに投げ飛ばす。そして、避け切れなかった弦とイノシシがぶつかる。

「クッソッ!」

 間一髪足を後ろに引くことで爆発での致命傷は避けれたが、弦の足には痛々しい傷ができていた。

「師匠!!」

「弦ーッ!」

 星夜人とあやめが弦に近づこうとするが、二人に向かって手を突き出し制止する。

「離れろ!このイノシシはあんなデケェ木も吹き飛ばすのを見ただろ!俺は大丈夫だ」

 弦の痛みに耐える顔を見て大丈夫でないことを理解しているが、自分たちではどうにも出来ないことを悟りゆっくりと後退りしていく。

「イィィィギュ!!」

 顔がえぐれたイノシシはまたもや地面に顔をこすりつけている。地面の土がイノシシに吸収されていく。

「不死身なのか、こいつ…」

 顔を地面にこすりつける度に再生していくイノシシを見て唖然と口を開いていた。そんな風に驚き気味悪がっている弦に向かってイノシシが突進してくる。

「チッ!来るんじゃ…ねぇ!」

 弦とイノシシの距離は数十メートルあり、どんなに目の前のイノシシが素早くても数秒はかかる。その数秒の間に弦は靴のかかと踏んで脱げやすいようにする。

(見た感じ土以外の物質に触れると爆散するっぽいな。なら…)

 弦は靴をイノシシに向かって投げ飛ばす。飛んでくる靴を避けることが出来なかったイノシシと靴がぶつかる。

「ギュギュブゥ!?」

「名刀・正宗(マサムネ)!」

 靴とイノシシの鼻が接触した瞬間、弦の数センチ先で大きな爆発が発生する。土煙がのぼると同時に弦は刀を異能で生み出し、イノシシに向かって斬撃を放つ。

「弦!!」

 少し離れた位置から見ていたあやめは弦とイノシシを包み込んだ土煙に向かって叫ぶ。

「言ったろ、大丈夫だって」

 土煙の中から飛び出した弦を見た星夜人とあやめは安堵して笑みをこぼした。

「あの奇妙なイノシシはどこにやったんですか?」

「そこだ、ぶっ倒れてるだろ?」

 弦が指をさした先には両足を切断して歩けずにジタバタとしているイノシシがいた。

「す、すげぇ。あの一瞬で…さすがですよ!」

 星夜人はもう動けず脅威ではないことを知ると、イノシシに近づいてまじまじと観察する。

「見た感じぃ…普通のイノシシだな。なんで再生したんだ?」

「な、なんであなたたちはそんなのを直視できるの?血がいっぱい出てて気持ち悪いんだけど」

 あやめは足が斬られ顔面が吹き飛んでもなお生きているイノシシを観察している二人を気味悪そうに見てつぶやく。

「それよりもだ。このイノシシは何なんだ。森の奥からやってきて、自爆特攻仕掛けて来やがったんだぞ」

 森の奥に何があるのか確認するべきだと思った弦はイノシシが向かってきた方向へと歩み始める。一歩一歩と慎重に歩いていると、頭上から声が聞こえてくる。

「おやおや〜。貴方たちなの?私の子を足止めしてくれたのは。逃げ出しちゃったのよ~」

(上!?)

 頭上からする声に驚きながら見上げると、太めの木の枝の上にのる女性がいた。

 まだ鮮やかな血が白衣に飛び散っており、数メートルはある木から元気よく飛び降りてきた。漆黒の髪色をしたロングヘアに、左右が微妙に違う目をしている。

「その子ぉ、私にちょうだい」

「…そいつはいいけどよ。こいつは何だ?」

 本来持つはずのない異能を二つ持つイノシシを指さして言う。明らかに踏み入れてはいけない領域だが、知っておかないと自分に害を及ぼしかねないと感じた弦は平然な顔をして踏み入る。

(なんて答える。はぐらかすか?問答無用で殴りかかってくるか?早く答えろよ。なに黙ってやがる!?)

 内心焦っていた弦はすぐに守れるようにあやめと星夜人に近づき、臨戦態勢に入る。

「この子はね。生命の神秘なのよ」

「…生命の神秘?」

「そうだよ。この子は元々島の養豚場で病気にかかって食べれなくなった子なの。いわば不良品。だけど、私の力で新たな生命として生まれ変わった。一体では本来不可能なこともあらゆる生物を混ぜ合わせることで、限界を超えれるわ!」

 突飛な回答にしか聞こえなかった弦は怪訝そうな表情で面持ちでいた。

 ポカンとする弦とは対照的に興奮した女は、白衣を突き破って背中から腕が生えてきた。六本の腕が蜘蛛のように伸びてくる。

「しかし、おかしいねぇ。三人の人間、二匹のイノシシを混ぜ合わせたこの子が、生命として弱い子たちに負けるなんて…」

 女は地面で暴れるイノシシを抱き抱える。女に捕まえられたイノシシは目から涙を流しながらより一層暴れ出す。

「改良余地がある。丁度、材料が三匹いるしね」

 女は背中から伸びた六本の腕をゆっくりと動かしながら弦に近づける。

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