第19話 頂上決戦
由佐たちを倒した郷火は次の獲物を探すために歩み出した時、世界が真っ黒に染まっていく。
「なんじゃ…?」
唐突に視界が闇に覆われたことに驚いていると、脳内に機械じみたアナウンスが流れだした。
「生存者数、四名。これよりフィールドの縮小を行います」
その直後に視界に光が戻る。目の前の景色が暗転する。正方形に切り取られたちような空間に郷火含める生存者が立っている。その空間は小さく、全速力で走れば十五分で端から端まで行けるくらいだった。
空間の中心には大きな塔がそびえ立っている。空間の四隅に塔ほどではないが大きなビルが建てられており、ビルの外側には宇宙の様な真っ黒の闇で染まっている。その五つの建造物以外は何も見当たらない。
(…生き残った者らが、集められたか。強そうな人間は…あやつしかおらぬな)
郷火は塔の足元に集められていた生存者たちを一人一人を品定めしていく。
生き残った生存者の中に、唐突に風景が変わったことに唖然としている天音琴葉。ついさっきも郷火から逃げていた丸眼鏡の女性。そして、目の前にそびえ立つ塔を無表情でジッと見つめている鳳凰寺つかさがいた。
そして、郷火は他の二人のなんて目もくれず、ゆっくりとつかさに近づいていく。郷火の足音が気づいたつかさは首だけを郷火に向ける。
「お主、鳳凰寺つかさじゃろ?数年前から、日本本土で、有名となった女、一度、殺してやりたいと、思っておったんじゃ」
どことなく興奮している様子の郷火はつかさに顔を近づけながら饒舌に話を続ける。
「日本の人間を、片っ端から殺し尽くし、日本を震撼させた特級死刑囚。お主は、わしと同じ、人殺しの目をしておる」
郷火の言葉を聞いたつかさは無表情のままだった。しかし声色からは明らかな怒りが見えていた。
「そのような言われ方をされるのは心外です。まるで無差別殺人を行っているような言い方を…私は罪を裁いているのです」
「罪を裁く?お主が殺した人間の中には、動けぬ老人も、十歳満たないようなガキも、いたと聞いておったのじゃが…そやつらも罪人と言うのじゃな?」
「もちろんです。老若男女、この世界に生まれ落ちた瞬間から人間は皆、罪を背負っています」
「…あぁ?何を言っておるのじゃ?」
郷火はなんとなくつかさから、話の通じ無さそうなオーラを感じ取りながらも問いかける。
「簡単な話です。この全世界の人間には皆何かしらの悪事を行います。殺人、強盗窃盗、詐欺、暴行、暴言虚言」
つかさは目を閉じ、さらに話を続ける。早く戦闘がしたい郷火は柄を人差し指でトントンと叩きながらも、律儀に話終わるのを待っている。
「全人類、皆平等に裁かれるべきなのです。しかし、今の私の力では世界から罪を取り除くことは不可能です。なので、せめて…日本にある罪だけでも取り除きたい。そう思い、裁きを行っていたところにこの、なんでも願いの叶うという学園からの招待状が届いたのです」
つかさは目を開いて、郷火の目をじっくりと覗き込み、静かに語り掛ける。
「私は感動しましたよ。神が私に、世界の秩序を正せと申すのですよ。神が!世界が!人類の滅亡を望んでいるのですよ!」
(こいつは、何を言っておるんじゃ?)
常に無表情だったつかさの顔から僅かな笑みがこぼれる。そして、郷火の肩を両手で掴んで首をゆっくりと傾ける。
「あなたからは罪人特有の気配を感じます。何十、何百もの人間を殺してきたのでしょう?」
つかさの肩を掴む力が強くなっていく。それを感じた郷火も刀を持ち直す。
「あなたはこの世で最も生かしておけない存在となるでしょう。この世で最もドス黒い心の持ち主です。即刻排除すべき人間です」
つかさは郷火持ち上げてぐるぐると回し、思いっきり鉄塔に向かって投げつける。
「クハハッ!なんじゃ、いきなりじゃのう!いや、やっと始めよったか!」
塔に体を叩きつけられた郷火は、刀を抜きながら、妙な気配を放ってくるつかさに向かってゆく。
(面白い。今までの、どいつとも比較できないような、女じゃ)
郷火は刀を軽く素振りしながら走っていき、つかさとの間で座り込んでおり、状況についていけていない様子の琴葉の首をついでではね飛ばす。
琴葉の体がプツリと消えた瞬間、空間中にあるビルの一つが音をたてて倒壊し出す。
「…ほう、なるほど。あれはわしらの命を表しておるのか」
郷火は唐突に倒壊したビルと琴葉の死が連動しているのではないかと予測をたてる。
「それと、鳳凰寺よ。わしは今まで、何千、何万の人間を殺してきた。何百なんぞという甘っちょろい数では無いのじゃ!」
郷火は首をコキコキとならしながら、訂正する必要があるか分からないところの訂正をする。
「おーとっとっと。始まっちゃいましたか。私は邪魔ですよね。消えまーす」
さっきまで空気を貫いていた丸眼鏡の女性は自分に殺気を放ってくる郷火の目を見た瞬間に、笑顔を作りながら猛スピードでどこかへと消えていった。
(追うか?いや、よいじゃろう。なにせ、もっと面白い奴が、目の前におるんじゃからの)
郷火の興奮は高まり、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべ刀を振るう。




