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流星学園  作者: 森宮寺ゆう
一学期『願いを叶えに』
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第17話 姉と妹

 うりょむの体が消え、一息ついた転夜は戦いの疲れからか、その場に膝をつく。

「…お姉さんに何か、あった、の?」

 聞いて良いのか悪いのか分からないものの、気になってしまっていた転夜は歯切れの悪い質問を投げかける。

「いや、やっぱり大丈夫だよ!言いたくないなら気にしないで!」

 その後すぐに自身の失言に気づいた転夜は首をブンブンと横に振る。

「んーん…別に言ってもいいんだよ。話そうか?」

「え、なら…お願い、します」

「アタシのおねぇちゃんはね~。生まれつき体が弱かったんだよね」

 由佐は背後の大木に寄りかかり、昔の思い出を語り出す。

 ◇◇◇

 アタシは両手に大きな袋を持ちながら玄関の扉を開く。

「たっだいまー」

 おかーさんたちは共働きで帰って来るのはいつも夜遅くだったから、おねぇちゃんの面倒はアタシが見ることになっていた。

「ん、お帰りなさいね。由佐」

 おねぇちゃんはよく学校を休んでいて、行ったとしてもすぐ早退することが多かった。

 病院も色々行ったし、大量の漢方やサプリを投与したけど意味は無かった。

「ごめんなさいね。私のせいでせっかく時間を…」

「いいんだよっ!アタシがおねぇちゃんの役に立ちたいだけだし」

 おねぇちゃんはアタシが看病する度にいつも申し訳なさそうにして謝ってくる。でも、アタシはおねぇちゃんが大好きでおねぇちゃんのためなら何でもしてあげたかった。

 アタシが褒めて欲しい時は頭を撫でてくれたし、悲しい時は黙って手を握ってくれた。だからアタシもおねぇちゃんが困っているなら助けてあげたいと思った。

「はい、これ。食べ物とか取って来たよ。あ、あと本屋さんにこれ売ってたよ~」

 アタシは学校帰りで買った本を見せると、おねぇちゃんは目を輝かせてそれを手に取った。体を十分に動かせられないおねぇちゃんの数少ない娯楽。

 その本は、体の病弱な主人公がひょんなことから異能が覚醒して天使の翼を授かり、困っている人を助けるという話だった。

「やっぱり、この子のように元気になって空を飛んでみたいなぁ」

 おねぇちゃんは口癖のように本を読むときはそう言ってた。体が病弱、といった点からおねぇちゃんは主人公にすごく感情移入したんだと思う。

「それか、私も由佐のような身体強化系の異能が良かったな。そうしたらみんなみたいに走り回れたのに…ま、不可能なことって分かってるんだけどね」

 おねぇちゃんは本に目を落とし、ため息混じりに言う。少し走っただけで息が上がるほどで、そんなおねぇちゃんからしたらアタシの異能は欲しくてしょうがなかったんだろうね。

「…でも、アタシはおねぇちゃんのためにガンバルよ~!おねぇちゃんのサポートは任せてっ!」

「うん、ありがとね由佐。頼らせてもらうわ。でも、無理はしないでね。あなたも疲れたりしたら休んでいいのよ」

「うんっ。でも大丈夫だよ!」

 アタシがそう元気に返事をすると、おねぇちゃんは微笑みながら頭を撫でてくれた。

 アタシたちはそれからも平和で、代り映えのない生活をしてきた。ある日、アタシが学校から帰ってきて、いつも聞こえてくる「おかえり」の言葉がなかった。どれだけ家の中を探してもおねぇちゃんの姿は見当たらなかった。

「おねぇちゃん!ねぇ、どこ!?」

 必死で探していると、おねぇちゃんの部屋にある勉強机の上に一枚の紙切れのような手紙が置かれてあった。

 手紙には、おねぇちゃんは元気な体を手に入れるために流星学園へ行く、的なことが書いてあった。そして、帰ってきたら勝手なことをしたおねぇちゃんを叱って欲しいと、帰ってこないなら忘れて欲しいと書かかれてた。

 これを見た瞬間は、絶望して呆然として、後々になって悲しさが湧いてきた。呼吸の仕方すら分かんなくなるほど辛く、数ヵ月くらいは寝ることも、ご飯を食べることも出来なかった。

 おねぇちゃんから信頼されてなかったのかなって、アタシたち家族のサポートのどこかにダメなところがあったのかなって。

 こうなってしまえば帰りを祈るしかなかった。けどどれだけ祈ってもおねぇちゃんが帰って来ることはなかったんだ。

 おねぇちゃんが流星学園に行ってから三年して、アタシがおねぇちゃんの事を無理やり忘れようとしていた頃に、学園からの招待状が来た。

 その瞬間にアタシの中で燃え尽きかけていた炎が再び燃え上がってくるのを感じた。

 ◇◇◇

「おねぇちゃんが帰ってこないなら、生きてないならアタシが生き返らせ、絶対連れ戻す。そう決心してこの学園に入学したの」

 由佐は俯きながら小さく拳を握りしめ、姉の話を言い終える。

「…そうだったんだね」

 黙って聞いていた転夜が口を開いて、そんな言葉をつぶやく。

「おねぇちゃんは、何を思ってこんな学園に来たんだろうってのが、分かんないんだよね。運動だって出来ない体なのに、殺し合いだなんて…」

「そんなものじゃないかしら。私にも妹がいるんだよね。世界一大切で、世界一可愛い妹が。でも、本人からは訳も分からず嫌われちゃったんだ、私。でもいつかさ、分かり合える日が来ると思ってるんだ。同じ姉妹を持つ日弧さんにも分かるでしょ?」

「転夜ちゃんも姉妹がいたんだ…相手の気持ちなんて完全には分からないけど、話し合えば分かると思うよ。お互いさ、がんばろっ!」

 卒業できるのは一人、そんな事を分かりきっている二人は、あつい握手を交わし、心の底からお互いの願いの実現することを祈った。

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